糖代謝とは?糖代謝の調べ方と
改善するために心がけることを紹介

食べたものから作ったエネルギーを使ったり、余分なエネルギーを備蓄したりするために重要なのが糖代謝です。また、糖代謝は、私たちが意識せずとも行なわれているものです。

今回は糖代謝とはそもそもどのようなものなのか、何か異常がある場合はどのようにしてわかるのかなどについて説明します。糖代謝異常を改善する方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

1.糖代謝とは

糖代謝とは、食事から摂取したエネルギーを使って体を動かし、余ったエネルギーはエネルギー不足のときに使えるよう備えて蓄える一連の流れのことです。

糖は、私たちの体を動かすエネルギーを作るために欠かすことができません。体を動かすためだけではなく、脳や筋肉でも糖は日々利用されていますが、寝ている間など私たちが意識していない間でも体内で糖が利用されていることが特徴です。

糖代謝が行なわれていくうえで大切なのが、ホルモンです。食事を摂ると、血液中にある糖の量が増えます。血糖値が上がったのを感知すると、膵臓からインスリンが分泌されて血液中の糖を細胞に取り込むことで、血糖値を下げるのです。

細胞に取り込まれた糖は、エネルギー源として利用されます。エネルギーとして利用されなかった糖は、グリコーゲンや中性脂肪などになるため、糖の摂りすぎは要注意です。

血液中の糖が足りない場合は、インスリンではなくグルカゴンというホルモンが働きます。グルカゴンは細胞に蓄えられた糖を血液中に放出することで、血糖値を上げるホルモンです。このように、インスリンとグルカゴンがうまくバランスを取って働くことで血糖値の調整が行なわれています。

2.糖代謝の異常は何からわかるのか

糖代謝になんらかの異常がある場合、血糖値が高くなりすぎる可能性があります。血糖値が高い状態が続くと血管の弾力性が失われたり、網膜や末梢神経に悪影響をおよぼしたりするため、注意が必要です。

2-1.血糖値の測定

糖代謝が正常に行なわれているかどうかを調べるためには、まず血糖値を測定してみましょう。血糖値とは、血液中にある糖の濃度のことで、ブドウ糖が血中にどれくらいあるかを示しています。

健康な方でも血糖値は食事の影響を受けて変動します。そのため、食前と食後でそれぞれ違う基準値を用います。食前の血糖値(空腹時血糖)が70~100mg/dl程度であれば、正常といえるでしょう。

空腹時血糖値が126mg/dl以上になったり、食後の血糖値が200mg/dl以上になったりした場合は、糖代謝に異常がある可能性があります。

2-2.HbA1c

HbA1cとは、ブドウ糖とヘモグロビンが結合したものです。血糖値とは違い、HbA1cは過去1~2カ月の血糖値がどれくらいだったかを示す指標となります。食事の影響を受けにくいため、糖代謝の異常があるかどうかを調べる際によく用いられる指標の一つです。

ブドウ糖と結合しているヘモグロビンの数が多くなるほど、HbA1cも高くなります。HbA1cが6.5以上の場合は糖代謝の異常がある可能性が高いため注意しましょう。

2-3.尿糖

尿糖とは、尿中に出される糖のことです。健康な方であれば、血液中にある糖は腎臓でろ過される際に再吸収されるため、尿中に糖が出てくることはありません。

しかし、血糖値が高い状態が続いていると、腎臓の働きが追いつかずに尿糖が出ることがあります。尿糖が出ている場合は、糖代謝の異常の可能性があるか腎臓の再吸収がうまくいっていない可能性があるのでしっかり検査してもらいましょう。

3.糖代謝異常を改善するために心がけること

糖代謝を改善するために大切なのは、次の2つです。

  • ・運動を行なう

  • ・食事に気をつける

運動は糖の利用を促進させるため、血糖値をコントロールするのに役立ちます。定期的な運動は、糖を利用するだけでなく内臓脂肪を減らしてインスリンの働きを高めることができるのも特徴です。

糖代謝を改善するためには、有酸素運動とレジスタンス運動を行なうことが推奨されています。「ややきつい」と感じる中等度の運動を、週に150分・3回以上行なうようにしましょう。レジスタンス運動は、週2~3回行なうのが効果的です。

食事は、バランスを意識して自分の活動量に合わせたエネルギー摂取量を目指すようにしましょう。食べ過ぎは血糖値の上昇を招くため、油ものを減らして野菜を多く摂り、腹八分目に抑えることが大切です。

糖代謝異常の改善を意識して過ごしましょう

糖代謝とは、食事から摂取したエネルギーを使ったり備蓄したりする流れのことです。健康な方であれば、血糖値を上げたり下げたりするためのホルモンがうまく働いているため、血糖値が上がりすぎてしまうことはありません。

しかし、なんらかの原因によって血液中のブドウ糖が増えたりHbA1cの値が高くなっていたり、尿糖が出ていたりする場合は糖代謝がうまくいっていない可能性があります。

何か異常がある場合は、早めに医療機関で調べてもらうようにしましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。