1.食べ物から栄養を取り込むまでの流れ
食べたものを体内に取り入れるためには、消化器官で消化・吸収されなければいけません。
まず、食べ物を口のなかで咀嚼する(噛み砕く)と、糖質を分解する酵素を含む唾液と混ざり合います。
次に、唾液と混ざった食べ物は、胃に運ばれると消化液で分解され、栄養素を吸収しやすい状態になります。そして、十二指腸で膵液・胆汁によって糖質・タンパク質・脂質が分解され、小腸では栄養素のほとんどが腸液により分解・吸収されるのです。
その後、腸の毛細血管とリンパ管を経由して、栄養が全身に運ばれていきます。各経路で運ばれる成分は、次のとおりです。
消化されなかった食物繊維などは、大腸で発酵・分解されたのちに便となり、体の外に排出されます。
なお、食べ物が口から入って排泄されるまでにかかる時間は、2~3日ほどとされています。
2.栄養吸収率を上げるためにすべき3つのこと
食べ物の栄養を効率良く吸収するためには、食べ方や食べるタイミングを意識しましょう。ここでは、食事の際に注意したい3つのポイントをお伝えします。
2-1.しっかりと咀嚼する
栄養の吸収率を高めるには、食事の際によく噛むことが大切です(理想は一口30回以上)。咀嚼で食べ物が細かく砕かれると、消化酵素を含む唾液の分泌が促進され、消化酵素の作用で栄養の消化・吸収が促されます。
食べ物に含まれる栄養素をしっかりと取り込むためにも、食事の際はしっかりと噛んで食べましょう。
2-2.決まった時間に食事をとる
毎日決まった時間に食事を続けていると体が食事の時間を覚え、食事の時間が近づくと胃腸が消化吸収する準備を始めるようになります。
反対に、食事をとるタイミングが毎日バラバラだと食べ物の消化に影響が現れ、胃もたれなどを起こしやすくなってしまうのです。
胃腸の整った状態で食事をするためにも、なるべく日々の食事時間を一定にするように心がけましょう。
2-3.水分もしっかりとる
水分には、栄養を運搬するという大切な役目があります。栄養素は水に溶けた状態で消化吸収され、最後は代謝されて外に排出されます。
摂取する水分が少ないと血流も悪くなり栄養が体のすみずみまで行き渡らなくなるため、栄養吸収率を上げるには水分をしっかりと補給しましょう。水分の一部は食事からも摂取できますが、それとは別に、飲用として一日1.2~1.5Lほど摂るのがおすすめです。
3.【栄養素別】栄養の組み合わせで吸収率を上げる方法
栄養素同士を組み合わせると、吸収を高めるほか、体内での代謝の促進を期待できます。
ここでは、相性の良い栄養素の組み合わせを紹介するので、食材選びの参考にしてください。
3-1.タンパク質にはビタミンB6
タンパク質はアミノ酸で構成され、筋肉や皮膚、毛髪といった体組織を構成する主成分です。タンパク質の摂取量が少ないと、体力や免疫力の低下などの悪影響をおよぼすおそれがあります。
タンパク質と一緒に摂りたい栄養素はビタミンB6です。ビタミンB6を一緒に摂ることで、タンパク質の代謝促進につながります。
栄養素 |
おもな食品 |
タンパク質 |
肉・魚・大豆製品・乳製品 |
ビタミンB6 |
鶏ササミ・マグロ・鮭・玄米・にんにく・赤パプリカ |
3-2.ビタミンA・C・Eを一緒にとる
ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEを一緒に摂ると、相乗効果があると期待されています。
ビタミンAは目の網膜・皮膚・粘膜の保護に役立ち、ビタミンEは細胞膜の酸化や過剰な活性酸素を抑える栄養素です。ビタミンCはコラーゲンの生成に必要な栄養素で、毛細血管や筋肉、骨を丈夫にするのを助けます。また、過剰な活性酸素やメラニン色素生成の抑制、免疫力の向上にも役立つとされています。
それぞれのビタミンを豊富に含む食品は、次のとおりです。何を食べるべきか悩んだときは、料理がカラフルになるように組み合わせるとよいでしょう。
栄養素 |
おもな食品 |
ビタミンA |
うなぎ、しらす干し、人参、モロヘイヤ、ほうれん草 |
ビタミンC |
赤ピーマン、ブロッコリー、トマト、キウイフルーツ、いちご |
ビタミンE |
かぼちゃ、オリーブ、アーモンド |
3-3.ビタミンB1にはアリシン
ビタミンB1は、体内に取り込まれた糖質からエネルギーを作り出すほか、疲労回復や精神安定作用などの働きを持ちます。
ビタミンB1の吸収を高めるには、アリシンと一緒に摂るのがおすすめです。アリシンはにんにくなどの匂いのもとになる成分で、小さく刻んで調理に利用するのが効果的です。また、ビタミンB1を効率良く摂取するためには、野菜をぬか漬けにしたり、主食に玄米を取り入れたりするのもよいでしょう。
栄養素 |
おもな食品 |
ビタミンB1 |
豚肉、うなぎ、玄米、大豆 |
アリシン |
にんにく、たまねぎ、にら、ねぎ |
3-4.カルシウムにはビタミンD
カルシウムは歯や骨を作るだけでなく、体の機能維持や調節にも欠かせない栄養素です。
カルシウムを効率良く利用するには、ビタミンDと一緒に摂るのがおすすめです。
ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びると体内でも合成されます。ビタミンD合成のためには、日光を浴びる習慣が大切ですが、美容のために紫外線を避けている方や紫外線量の少ない冬場は、ビタミンDを豊富に含む食材を積極的に活用するとよいでしょう。
栄養素 |
おもな食品 |
カルシウム |
さくらえび・小松菜・ひじき・豆腐・牛乳・チーズ |
ビタミンD |
鮭・いわし・しいたけ・きくらげ |
3-5.鉄分にはビタミンC
ビタミンCには、鉄分の吸収を促す働きがあります。鉄には、動物性食品に多いヘム鉄と植物性食品に多い非ヘム鉄があり、より吸収率が高いのはヘム鉄です。
ヘム鉄を摂る場合には、ビタミンCを多く含む緑黄色野菜や果物と組み合わせるとよいでしょう。
栄養素 |
おもな食品 |
ヘム鉄 |
カツオ・マグロ・めざし |
ビタミンC |
赤ピーマン、ブロッコリー、トマト、キウイフルーツ、いちご |
栄養吸収率を上げるには食材の組み合わせや食事のとり方が大事
健やかな体は、毎日の食事で作られます。健康な生活のためには、栄養バランスの良い食生活が大切ですが、吸収率が悪いとせっかくの栄養が無駄になりかねません。その場合には、食べ方やタイミング、食材の組み合わせに気を付けると、栄養吸収率をさらに高められます。
食事は毎日同じくらいの時間にとり、よく噛んで、水分もしっかり摂るように心がけましょう。そして、相性の良い栄養素の組み合わせになるよう、食材選びへの意識も大切です。
自分の食生活を見直して、改善ポイントがある場合は食事のとり方を変えてみましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。