1.フルーツの栄養と摂取量の目安
フルーツにはビタミンやミネラルなどが含まれていますが、なかでも多く含まれているのがビタミンCとカリウムです。
ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれており、不足すると疲労感や気力低下などの症状につながる可能性があることで知られています。ビタミンCは軟骨などを構成するコラーゲンを作るときに必要で、血管の弾力性にも関与しているため、不足には要注意です。
ビタミンCは水溶性のため水に溶けやすく熱に弱いため、調理時に洗ったり加熱したりすることで働きが弱まってしまいます。カリウムは、浸透圧の調節などの作用があるミネラルの一種です。細胞内液の浸透圧を一定に保ったり、塩分濃度の調節を行なったりする働きもあります。
では、フルーツは一日にどれくらいの量を目安に摂取したらよいのでしょうか。厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランスガイド」では、一日に約200gを目安に食べるようにとされています。バナナなら2本、いちごなら12粒、なしなら1個が目安です。
2.代表的なフルーツに含まれる栄養素
では、代表的なフルーツに含まれている栄養素について見ていきましょう。
2-1.グレープフルーツの栄養素
グレープフルーツには、白肉種と紅肉種とがあります。それぞれに含まれる栄養素は、次のとおりです。
〈白肉種〉
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
140mg |
マグネシウム |
9mg |
ビタミンB1 |
0.07mg |
ビタミンB2 |
0.03mg |
ビタミンB6 |
0.04mg |
ビタミンC |
36mg |
ビタミンE |
0.3mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
〈紅肉種〉
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
140mg |
マグネシウム |
9mg |
ビタミンB1 |
0.07mg |
ビタミンB2 |
0.03mg |
ビタミンB6 |
0.04mg |
ビタミンC |
36mg |
ビタミンE |
0.3mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-2.キウイフルーツの栄養素
キウイフルーツには、緑肉種と黄肉種とがあります。それぞれに含まれる栄養素は、次のとおりです。緑肉種と黄肉種を比べると、黄肉種のほうがビタミンCの含有量が多いことがわかります。キウイフルーツは、フルーツのなかでもビタミンCを多く含んでいることが特徴です。
〈緑肉種〉
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
300mg |
マグネシウム |
14mg |
ビタミンB1 |
0.01mg |
ビタミンB2 |
0.02mg |
ビタミンB6 |
0.11mg |
ビタミンC |
71mg |
ビタミンE |
1.3mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
〈黄肉種〉
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
300mg |
マグネシウム |
12mg |
ビタミンB1 |
0.02mg |
ビタミンB2 |
0.02mg |
ビタミンB6 |
0.14mg |
ビタミンC |
140mg |
ビタミンE |
2.5mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-3.いちごの栄養素
いちごも、ビタミンCの含有量が多いフルーツです。いちごはフルーツの印象が強いかもしれませんが、実は園芸学では野菜に分類されています。しかし、実際は果物として食べられることが多いため、「果実的野菜」と呼ばれることが一般的です。
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
170mg |
マグネシウム |
13mg |
ビタミンB1 |
0.03mg |
ビタミンB2 |
0.02mg |
ビタミンB6 |
0.04mg |
ビタミンC |
62mg |
ビタミンE |
0.6mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-4.ぶどうの栄養素
ぶどうには、下記の栄養素のほかにポリフェノールの一種であるアントシアニンも豊富です。アントシアニンは、黒や赤い色をした皮のぶどうに多く含まれています。
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
220mg |
マグネシウム |
7mg |
ビタミンB1 |
0.05mg |
ビタミンB2 |
0.01mg |
ビタミンB6 |
0.05mg |
ビタミンC |
3mg |
ビタミンE |
0.6mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-5.みかんの栄養素
みかんには、下記の栄養素のほかにヘスペリジンも含まれています。ヘスペリジンはフラボノイドの一種で、血管をしなやかにする働きがあると注目されている成分です。また、オレンジ色の色素である「β-クリプトキサンチン」には、生活習慣に関わる病気のリスクを下げる働きがあるといわれています。
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
150mg |
マグネシウム |
11mg |
ビタミンB1 |
0.01mg |
ビタミンB2 |
0.03mg |
ビタミンB6 |
0.06mg |
ビタミンC |
32mg |
ビタミンE |
0.4mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-6.りんごの栄養素
りんごは、可食部100gあたり、84.1gは水分でできています。りんごにはナトリウムを体外に排出するカリウムや、体の酸化を防ぐビタミンCなど体に良い栄養素を豊富に含んでいます。日本では約2000種類のりんごが栽培されており、一年を通しておいしいりんごを味わうことができます。
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
120mg |
マグネシウム |
3mg |
ビタミンB1 |
0.02mg |
ビタミンB2 |
- |
ビタミンB6 |
0.04mg |
ビタミンC |
4mg |
ビタミンE |
0.1mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
2-7.バナナの栄養素
バナナは、数あるフルーツのなかでも特にカリウムの量が多いことが特徴です。塩分の摂りすぎや血圧が気になる方にぴったりのフルーツといえるでしょう。
栄養素 |
100gあたりの含有量 |
カリウム |
360mg |
マグネシウム |
32mg |
ビタミンB1 |
0.05mg |
ビタミンB2 |
0.04mg |
ビタミンB6 |
0.38mg |
ビタミンC |
16mg |
ビタミンE |
0.5mg |
参照:文部科学省「食品成分データベース」
3.フルーツを食べるときの注意点
フルーツはビタミンやミネラル、食物繊維などを豊富に含む食べ物ですが、食べる際にはいくつか注意点があります。
3-1.果糖の摂りすぎと食事のバランス
フルーツを食べ過ぎると、糖質の過剰摂取につながる恐れがあるので注意してください。果糖やブドウ糖が多く含まれていることから、肥満や中性脂肪の増加につながる可能性があります。
しかし、フルーツから摂る果糖の摂取量では問題がないとする説があるのも事実です。フルーツを200g食べても、果糖は10数gほどしか摂取できません。一日に50gを超えなければ影響は出にくいといわれているため、気にしすぎる必要はないでしょう。フルーツばかり食べず、バランス良く食事を摂るようにしてください。
3-2.ドライフルーツなどの加工品は糖分に注意
ドライフルーツやシロップ漬けのフルーツは糖分が多いため、摂りすぎないように注意しましょう。
例えば、パイナップルは、缶詰だと100gあたりのカロリーは76kcalで、単糖当量は19.7g含まれていますが、生の果実では54kcalで単糖当量は12.6gになります。加工されているものは、糖分が多くカロリーも増えてしまうため、フルーツだからといって摂りすぎないようにしましょう。
フルーツはビタミンやミネラルなどの栄養が豊富
フルーツには、ビタミンCやカリウムをはじめとしたビタミンやミネラルが豊富に含まれています。健康成人では一日に200gのフルーツを摂ることが推奨されているため、ぜひ食卓にフルーツを取り入れてみてください。
ビタミンCを摂りたい方にはキウイフルーツ、カリウムを摂りたい方にはバナナがおすすめです。フルーツの食べ過ぎは糖質の過剰摂取につながることもあるため、バランス良く食べるように心がけましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。