1.過敏性腸症候群とは?
精神的なストレスや自律神経の調子がくずれることで便通に異常をきたす病気が、過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)です。
過敏性腸症候群では、腸に炎症や潰瘍など異常が見られないにも関わらず、日常的に便秘や下痢、腹痛などの症状が現れます。発症には、過敏になった腸の内臓神経が関わっていると考えられています。
過敏性症候群の症状が現れやすい状況は、次のようにストレスや不安、緊張などが関わっていることが多いといわれています。
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・転職や引越し、転校といった環境の変化
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・仕事がある日
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・電車などトイレに行けない状況
日本で過敏性腸症候群に悩む人は10~20%であるといわれ、思春期の女性や40代の男性に多く見られます。病気であると認識していない人も多く、症状に気付きながらも病院で受診しない人も少なくありません。
2.【症状別】過敏性腸症候群の3つのパターン
過敏性腸症候群は、大きく3つのタイプに分かれます。腸の不調が下痢、便秘もしくはその両方という形で現れます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1.下痢型
緊張や不安を感じたときに便意を催すことで起こる、突然の激しい下痢症状が特徴です。「神経性下痢」という別名もあります。以前は男性に多いタイプとされていましたが、近年では仕事のストレスなどの影響を受けて女性でも増えてきました。
2-2.便秘型
腹痛や腹部の不快感をともなう慢性的な便秘が特徴です。腸内で便が滞り、コロコロとした硬い便を排便します。便秘型は女性に多い傾向です。
2-3.混合型
腹痛や腹部の不快感と、下痢や便秘を数日おきに交互に繰り返します。排便時に便が出なかったり少なかったりすることもあります。別名「交代制便通異常」とも呼ばれます。
3.過敏性腸症候群が起こる原因
過敏性腸症候群の発症には、ストレスや環境の変化、生活習慣の乱れなどが関わっています。自分の生活で思い当たるところがないか、チェックしてみてください。
3-1.過労や過度なストレス
過敏性腸症候群は繊細な人が発症しやすく、人間関係のストレスや環境の変化などと関わっています。不安や緊張といったストレスで脳が興奮すると、神経を通じて腸の運動に異常が生じて便通異常につながります。
その他、内臓にある神経が過敏になって腹痛や膨満感を覚えます。これらの痛みや不快感が再び脳に伝わるという悪循環によって、過敏性腸症候群は発症・悪化していくといわれています。
3-2.不規則な生活
過敏性腸症候群は、生活習慣とも大きな関係があります。おもな原因は、栄養バランスの偏った食生活、喫煙、睡眠不足、運動不足などです。また、過労が発症の引き金となることもあります。
食生活で見てみると、下痢型の場合は、炭水化物や脂質中心の食事、コーヒーなどの刺激物で症状が誘発されます。一方で、便秘型では食物繊維・水分の不足が一因です。
4.過敏性腸症候群の改善が期待できる方法
過敏性腸症候群の原因は、ストレスや乱れた生活習慣です。ここでは、症状の改善が期待できる方法を3つ紹介します。ぜひ、自身の生活に取り入れてみましょう。
4-1.ストレスをうまく解消する
趣味に時間を費やしたり、悩みを周りの友人に相談したりするなど、自身に合ったストレス解消方法を見つけましょう。興味のあることに挑戦してみるのもよいでしょう。
創作活動や旅行など、自分が楽しいと感じることに取り組んで気持ちをリフレッシュさせましょう。そして、少しの時間でも構わないため、毎日のなかでほっと一息つける時間を作ることも大切です。
4-2.栄養バランスの取れた食事
おなかの調子を整えるためには、栄養バランスの取れた食事を一日3食とることも重要です。規則正しい食生活は、ストレスへの抵抗性も高めてくれます。食事の際は食べ過ぎたり、脂質を摂り過ぎたりしないように心がけてください。また、緑黄色野菜を食生活に積極的に摂り、香辛料を控えましょう。
4-3.適度な運動
適度な運動はストレス解消の効果が期待できるだけでなく、肥満の予防・改善にもつながります。そのため、運動習慣をぜひ取り入れましょう。忙しくてなかなか運動ができない人は、隙間時間を活用して「+10分の運動」に取り組むのがおすすめです。例えば、1駅前で電車を降りて10分歩くとおよそ1,000歩になります。
また、エレベーターやエスカレーターではなく、階段を使うのも良い運動です。上手に工夫して、生活のなかで運動量を増やしましょう。
過敏性腸症候群への対策を実践してみよう
ストレス社会と呼ばれる現代では、過敏性腸症候群に悩む人は少なくありません。おなかの不調は生活にも影響をおよぼすため、改善のための取り組みが大切です。
内臓神経の過敏を引き起こすのは、おもにストレスや不規則なライフスタイルです。症状の緩和のためにも、ストレスへの対策や食生活・生活習慣を見直しましょう。それでも症状が良くならない場合は、早めに専門医を受診しましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。