ミトコンドリアとは?
体内での働きや増やすためにできることを解説

近年、健康志向の人たちを中心に「ミトコンドリア」に注目が集まっていることをご存じですか?

ミトコンドリアは、私たちの細胞のなかにある物質の一つであり、私たちの美と健康を守るうえで重要な働きをしていることが明らかになったのです。

今回は、ミトコンドリアの働きや機能を向上させる方法を解説します。あなたの体を作っている約60兆個の細胞すべてに含まれているミトコンドリアを元気にして、いつまでもイキイキと過ごしましょう。

1.ミトコンドリアとは

ミトコンドリアとは、一つひとつの細胞のなかに存在する小さな器官のことです。1つの細胞につき100~2,000個ほど存在するといわれています。

なお、生物は細胞内に核を持つ「真核生物」と核を持たない「原核生物」の2つに大別されます。核を持たない原核生物は、DNAがある程度まとまった形で細胞内に存在しています。

ミトコンドリアは、原核生物が真核生物の細胞に取り込まれてできたものと考えられています。

2.ミトコンドリアの働き・役割

続いて、ミトコンドリアの働きや役割を見ていきましょう。

2-1.エネルギー産生

筋肉を収縮させるためのエネルギーの大部分がミトコンドリア内で作られ、私たちが運動するために欠かせない役割を担っています。

エネルギーを作り出す経路は、大きく分けて「無酸素系エネルギー代謝」と「有酸素系エネルギー代謝」の2つありますが、ミトコンドリア内では、酸素を必要とする「有酸素系エネルギー代謝」が行なわれています。

2-2.脂肪の燃焼・糖の代謝を活発にする

ミトコンドリアは、エネルギーを作り出すために脂肪を燃焼し、糖の代謝を活発にします。

2-3.アポトーシス

アポトーシスとは、“細胞の死に方”の一種です。傷が付いた細胞や不要になった細胞が進んで自滅することで、自分の体を健全に保ちます。

ストレスなどの刺激により細胞が傷付くと、ミトコンドリア内にカルシウムイオン(Ca2+)が流入し、細胞のアポトーシスが誘導されるのです。

2-4.免疫・活性酸素などにも関係している

細胞内のミトコンドリアが、酸素を使って栄養素をエネルギーに変換する過程で、活性酸素が発生します。活性酸素は、体内に侵入してきた細菌・ウイルスなどの外敵をやっつける働きがある一方、大量に発生すると細胞そのものを傷付けて、病気や老化の原因となります。

体内には、酵素や抗酸化物質により過剰な活性酸素の産出抑制・除去を行なう仕組みが備わっているため、通常であれば活性酸素が過剰になることはありません。しかし、生活習慣の乱れなどで活性酸素の除去が間に合わなくなると、活性酸素が過剰になり体に悪影響をおよぼすのです。

また、ミトコンドリア遺伝子に異常が起こると「ミトコンドリア病」を発症します。おもに心臓・腎臓・耳・目・膵臓・消化管などあらゆる箇所に症状が現れ、特にエネルギーを必要とする脳や筋肉への影響を受けやすいのが特徴です。

3.ミトコンドリアの機能を向上するためにできること

私たちの体は、およそ60兆個もの細胞が集まってできているため、細胞内に存在するミトコンドリアの機能を正常に保つことが、健康維持には大切です。そこで注目を集めているのが、異常なミトコンドリアの除去方法や健全なミトコンドリアの割合を増加させる方法です。

ミトコンドリアは、細胞分裂の有無に関わらず、細胞が必要だと判断した状況では、どんどん分裂して増える性質があります。それは例えば「継続的な運動」によってもたらされ、動物実験ではマラソンのような長時間の運動に適した筋肉を鍛えることで、ミトコンドリアの機能が増幅することがわかっています。

「継続的な運動」でミトコンドリアの機能を向上させましょう

私たちの体はおよそ60兆個もの細胞一つひとつが合わさることで作られており、そのすべての細胞に「ミトコンドリア」は存在しています。

ミトコンドリアは、酸素を使って糖や脂質をエネルギーに変換するといった働きなどがあります。つまり、ミトコンドリアは代謝の要なのです。

正常なミトコンドリアの割合を増やすことは、イキイキと生活するためのカギの一つです。ミトコンドリアの機能を向上させるために有効なのが、マラソンのような「継続的な運動」をすることです。ぜひ、ご自分に合った運動習慣を作って、健康的な毎日を送りましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。