1.なぜ歯科検診が必要?
歯科検診は、なぜ必要なのでしょうか。ここでは、歯科検診の重要性と歯科医療に対する意識について紹介します。
1-1.歯科検診の重要性について
口は、会話をするだけではなく、食事や容姿など、さまざまな面で非常に重要な働きをしています。口腔内の機能が低下すると、食べられる食品や食事量が減ることで、栄養バランスが崩れ、健康を損なう可能性があります。その結果、筋力が落ちると体の機能も衰えるため、免疫や代謝などが低下します。
免疫機能が低下すると、病気にかかりやすくなります。高齢者で多いのは、肺炎を繰り返した結果寝たきりになってしまうことです。
また、歯周病によって歯を失うと、口の中だけではなく、全身の健康に影響をおよぼします。
その他、口腔機能の低下が原因で、会話や食事がスムーズにできないと、社会に参加する機会を避けるようになります。他者と関わる機会が減少するため、意欲や体力が低下してうつ傾向になったりすることもあるでしょう。
話すことや食べることは、毎日行なっているため、徐々に機能が低下しても本人はなかなか気付けません。他の人と交流するなかで、自分や相手が気付くものです。いつまでも健康的に過ごすためには、口腔機能を維持することが必要です。
1-2.歯科医療に関する意識
ここでは、歯科医療に対する意識調査の結果について解説しましょう。
日本歯科医師会では、2022年度に15~79歳の男女1万人を対象として、歯科医療に関する意識調査を実施しました。調査の結果、職場や自治体が実施する歯科健診受診率は13%で、健康診断・人間ドック受診率の51%よりも大幅に下回っています。
歯の治療状況については、32.8%が「定期チェックを受けている」と回答、治療も定期チェックも受けていないと回答したのは35.9%でした。また、10~20代の6割以上が「歯の定期チェック受診をしていない」と回答しています。
さらに10代の61.2%、20代の56.6%が「歯を失う」こと自体を想像したこともないと回答しており、口腔意識の低さが目立っています。
しかし、この1年間で歯の痛みを感じた方の約8割が、もっと早く治療を受ければよかったと後悔していると回答します。
2.歯科検診のおもな内容について
口腔内の健康を保つためには、歯科検診を定期的に受けることが推奨されています。ここでは、歯科検診のおもな内容を解説しましょう。
歯科検診では、次のようなことをしてもらえます。
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むし歯の確認
歯と歯の間などの自分では気付きにくい場所を見てくれるのが特徴です。
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歯茎に異常がないかの確認
歯と歯茎の周りの歯周ポケットは深いと歯周病の原因となるため、深さもチェックしてもらえます。
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ブラッシング指導
一人ひとりの歯に合った、正しい歯磨きも指導してくれます。さらに歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどアイテムごとにきちんと教えてもらえるのがメリットです。
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歯垢(プラーク)の染め出しの確認
むし歯や歯周病の原因であるプラークの染め出しをしてもらい、どこを重点的に注意すべきなのかチェックします。
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歯垢(プラーク)の除去
磨き残しのプラークがあれば、除去も可能です。
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歯石の除去
自分では除去できない歯石は、歯科医院で取ってもらえます。歯石も歯周病の原因となるため、定期的に確認してもらいましょう。
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歯科に関する相談
口の中のさまざまな悩みを相談できるのも歯科検診のメリットです。気になることがあれば、聞いてみてください。
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口腔内の粘膜の病気チェック
口の中の病気や異常などを見てもらい、異常を早期発見できるのも歯科検診のうれしいポイントです。
3.歯科検診を実施している場所
歯科検診を受けられる場所は、歯科医院だけではありません。例えば、1歳6カ月と3歳の乳幼児に対しては市町村の保健センター、その他(幼児や児童・生徒)は年齢に合わせて保育所・幼稚園や学校などで実施されています。成人に対しては、市町村の事業の一環として歯科医療機関で実施していますが、受診率は低い傾向です。
定期的に歯科検診を受けて健康を守ろう
口腔内の健康を保つためには、歯科検診を定期的に受けることが推奨されています。
子どもは、保育所・幼稚園や学校などで歯科検診をしているため、ほとんどの方が定期的に口腔内をチェックする機会があります。しかし、成人の場合は市町村が実施しているものの、受診率は低めです。
口腔内の健康は、全身の健康に関連するため、定期的に歯科検診を受けて健康的な歯を守りましょう。
監修者情報
氏名:福田尚美(ふくだ・なおみ)
歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院に勤務。現在は一般歯科・小児歯科非常勤勤務のかたわら歯科医師としての知識と経験を生かし、歯科医師webライター、歯科企業やオンラインセミナーのサポートなども行なっている。