1.眼振とは?
眼振とは、自分の意志と関係なく眼球が痙攣するように動いたり、細かく揺れたりする律動的な眼球の運動のことです。眼振は、眼球の動きによって「衝動性眼振」「振子様眼振」の2種類に分類されます。
衝動性眼振とは、速い動き(急速相)と遅い動き(緩徐相)を反復する眼球運動です。急速相の動き方の違いから、「水平性」「垂直性」「回旋性」に細かく分類されます。
一方、振子様眼振は急速相・緩徐相における差異が、はっきりわからない眼球運動です。
また、以下のような刺激によって起こる「誘発眼振」もあります。それぞれ現象のメカニズムが異なるので、一緒に理解しておきましょう。
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・注視方向性眼振:一定の方向を注視した際に発生
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・頭位眼振:頭の位置を変えた際に発生
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・体位変換眼振:体位を変えた際に発生
なお、眼振がみられる場合でも、必ずしも病気というわけではありません。例えば、車の窓から外を見ていると、無意識に眼球が震えるように動くこともありますが、これは「視運動眼振」と呼ばれる生理現象です。
2.眼振の原因について
眼振の原因は大きく分けると、先天性と後天性の2種類があります。
2-1.先天的な場合
先天的な眼振は、おもに「弱視」や「斜視」とセットで発生します。自覚がないケースも多いため、なかなか気付かないかもしれません。
弱視とは、視力が正常に発達しなくなることです。視力の発達時期は生後1カ月~8歳頃ですが、ここで片目あるいは両目がきちんと視覚刺激を受け取れなかった場合、発達の遅れや停滞が起こります。
一方、斜視は眼球がそれぞれ異なる方向を向いて、左右の視線が合わなくなることです。ものが二重に見える、ぼやけて見えるといった現象のほか、弱視につながる可能性もあります。
2-2.後天的な場合
後天的な眼振を引き起こす原因としては、以下のような病気・問題が挙げられます。
めまいの原因はさまざまですが、はがれ落ちた耳石が半規管に入り込んだ場合、眼振を併発することがあります。また、小脳で血管が詰まったり、腫瘍ができたりした際も眼振は発生し、そのまま放置すると命に関わるため、すぐにでも検査・治療を受けるべきです。
また、抗けいれん薬を服用すると、その副作用で眼振が起こるケースもあります。気になる場合は早めに医師へ相談しましょう。
3.眼振がみられる場合はどうしたらいい?
前述のとおり、眼振は何らかの病気にかかっている可能性があります。日常生活に影響がないからといって放置すると、病気の進行が進んで治療困難になったり、命に関わるほど悪化したりするため、安易に考えるべきではありません。
もし眼振がみられる場合は、すぐ眼科をはじめとする医療機関に相談しましょう。眼科以外で検査・治療を行なうケースもあるので、医師の指示を仰ぐようにしてください。
眼振は正しい知識を身につけて対処しよう
眼振は自分の意志とは無関係に起こる眼球運動であり、眼球の動き方や現象のメカニズムによってさまざまな種類に分類されます。眼振=病気とは限りませんが、他の病気にかかって起こるケースも少なくないため、あらかじめ注意が必要です。
眼振に関する正しい知識を身につけて、適切な対処法を講じましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。