難聴の原因を分類別に紹介
難聴の概要についても解説

「最近、耳が聞こえにくい」「人と話していても何をいっているのかよくわからない」といった方は、難聴が生じているのかもしれません。

耳が悪くなるのは加齢によるものと思われがちですが、若い世代でも起こる可能性があります。難聴の治療が遅れると、その後の聴力に影響をおよぼすこともあるため、早めの対策が大切です。

今回の記事では、音が聞こえるメカニズムを解説するとともに、難聴の特徴と原因を分類別に紹介します。

1.難聴とは?

難聴とは、音が聞こえにくいと感じたり、音がまったく聞こえなくなったりする状態のことです。周りで生じている音が聞こえにくい、人と話しているときに言葉が聞き取りにくいなどの不都合を生じます。

WHOの発表では、65歳以上のおよそ3人に1人が難聴といわれており、多くの人が悩まされている現象です。

耳は、3つの部位に分かれています。耳の入り口から鼓膜までを指す外耳、鼓膜・耳小骨・鼓室・乳突蜂巣からなる中耳、そして中耳の奥にある内耳です。

外耳と中耳の働きは外からの音を内側へ伝えること、内耳の働きは聴神経を通して音を脳に伝えることです。一連の流れのいずれか、もしくは大脳にある聴覚中枢に問題が生じると、難聴が生じます。なかには、複数の原因が重なった混合難聴もあります。

難聴の診断をする際は、耳鼻科などで行なわれる画像検査や聴覚検査をもとに原因を特定します。

2.難聴の分類と原因

難聴には大きく分けて、伝音難聴と感音難聴の2つがあります。それぞれの特徴や原因について見ていきましょう。

2-1.伝音難聴

伝音難聴とは、外耳から中耳にいたるまでの経路で起こる障害です。伝音難聴の原因には、以下のことが挙げられます。

  • ・鼓膜に穴が開く:鼓膜が破れると、音を内耳まで伝えられなくなります。

  • ・耳あかが詰まる:耳あかが外耳を塞いでしまうことで生じる難聴は、高齢者で多く見られる難聴の一種です。

  • ・液体が中耳に溜まる:中耳では分泌液が溜まってしまい、鼓膜が動きづらくなるため、音が聴こえにくくなります。

また、このような外耳と中耳の不具合が、伝音難聴を引き起こす原因です。

2-2.感音難聴

外耳・中耳から伝わった振動は内耳の感覚細胞で音として感じられ、聴神経を通って大脳の感覚中枢へ伝わり、処理されることで音や言葉として認識されます。

この内耳から聴覚中枢までの経路に生じる障害が、感音難聴です。

感音難聴の種類には、次のようなものがあります。

  • ・加齢性難聴(老人性難聴):加齢性難聴は、通常両方の耳に発生し、高音域が聞こえにくくなるのが特徴です。とりわけ、か行・さ行・は行の違いを認識しづらくなります。加齢性難聴の発生には、遺伝や持病、ライフスタイル(食事・運動・喫煙習慣など)が関わっています。

  • ・音響性難聴:コンサートやライブ会場などで大音響にさらされることによって起こります。音響性難聴の原因の一つとして、イヤホンやヘッドホンで大きな音を聞き続けると徐々に悪化するヘッドホン難聴があります。若くても発症するリスクがあるため、近年問題視されています。

  • ・騒音性難聴:工事現場などで大きな機械音を聞く機会が多い人に起こります。

  • ・突発性難聴:ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる突発性難聴は過労やストレスが原因とされ、働き盛りの世代に多く見られます。

  • ・低音障害型感音難聴:20~40代の女性に発症しやすく、耳づまり感や音のゆがみ、耳鳴りなどが起こります。

いずれも、聴力を取り戻すためには、早めに治療を始めることが大切です。

難聴に気付いたら早めに耳鼻科を受診しよう

難聴は高齢者の病気と思われるかもしれませんが、なかには若者世代に起こりやすいものもあります。

聞こえが悪くなると、周囲の変化に気付きにくくなるだけでなく、人とのコミュニケーションに支障をきたすことも少なくありません。

難聴のなかには、早めに対策することで進行を抑え、聴力を回復できるものもあります。耳が聞こえにくい、聞こえ方に違和感があると気付いたときは、早めに専門医を受診しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。