1.関節痛のおもな原因とは?
関節痛の痛みは炎症をともなう場合と、ともなわない場合の2つがあります。
1-1.炎症をともなう関節痛
炎症による関節痛を関節炎と呼びます。痛みだけではなく、患部が腫れたり赤くなったりするもので、血液検査の結果にもその影響が表れます。炎症による痛みは関節の破壊をともなうことがあるため、早急に対応することが重要です。
1-2.炎症をともなわない関節痛
炎症をともなわない場合は患部が赤くなったり、血液検査の炎症反応も動いたりすることはあまりありません。炎症以外の痛みの原因としては神経や筋肉の痛みなどが代表的で、炎症をともなうもののように関節が壊れるケースは少ないと考えられています。
2.関節が痛いときに考えられる疾患【炎症をともなう場合】
ここでは、炎症をともなう関節の痛みが関与する代表的な疾患について解説します。
2-1.関節リウマチ
本来体を守る役割をもつ免疫が異常をきたし、関節に腫れや痛みをもたらす病気です。
症状が進行すると関節の変形や脱臼などが起こり、日常生活に影響をおよぼす場合もあることから、部位や進行具合によっては人工関節を用いた手術を行なうこともあります。
2-2.化膿性関節炎
化膿性関節炎は、皮膚にできた傷などから入った菌が関節にまで入り込むことで起こる病気です。痛みをともない、腫れたり、赤くなったりします。
原因は菌であるため治療には抗菌剤を使用しますが、長期間の投与が必要なケースも多いです。また人工関節が入っている方の場合、菌が人工関節に巣をつくる場合があり、入れ替え手術が必要になることもあるため、注意が必要です。
2-3.痛風
関節に溜まった尿酸の結晶に免疫反応が起こり、関節に激しい痛みの発作が生じる病気です。
尿酸はプリン体が代謝されることで作られますが、カロリーの高い食事などからもプリン体が体内に取り入れられます。過剰なプリン体が代謝され多くの尿酸が体内に発生すると、血液に溶けることができなかった尿酸が結晶になり、関節に溜まってしまいます。
痛風の恐ろしい点は痛みの発作だけではありません。血中の尿酸量が多い状態になる高尿酸血症によりさまざまな合併症を引き起こす可能性があることにも要注意です。高尿酸血症から、腎機能障害や尿路結石・糖尿病・脂質異常症・高血圧といった生活習慣病につながります。
痛風などの症状が現れるまで高尿酸血症だけでは自覚症状がないため、健診を受けて検尿酸値を確認することや、日頃の食生活で高カロリーなものを摂りすぎないことが大切です。
3.関節が痛いときに考えられる疾患【炎症をともなわない場合】
ここからは、炎症をともなわない関節の痛みが関与する代表的な疾患について解説します。
3-1.線維筋痛症
筋肉がこわばることにより、全身を針で刺されるような痛みが発生する病気で、中年以降の女性に多い病気です。
全身に筋肉痛がある病気は少なく、原因は精神的なストレス、肉体的なストレスによるものと考えられており、痛み以外に手足の痺れ・動悸・呼吸困難・不眠・疲労感・下痢・便秘などの自律神経に関係する症状が現れます。
治療には内服薬が使われますが、症状そのものではなく、ストレスの原因に対処する方法が選択されることもあります。
3-2.変形性関節症
変形性関節症は加齢や肥満などにより生じる病気です。長年、関節が使用され続けることにより骨の先端にある軟骨が摩耗し、痛みが発生すると考えられています。痛みは手指・股関節・背骨に発生しますが、なかでも膝に発生する頻度が高い疾患です。
関節がどれくらい変形しているかによって行なわれる治療が異なります。軽度であれば投薬や関節への注射などを行ない、重度であれば人工関節を用いた手術などが考慮されるでしょう。
関節痛の原因はどれも無視できないもの
関節が痛くなる原因と、考えうる疾患について説明しました。
炎症をともなう関節リウマチの場合は進行すると関節が変形し曲がったままになってしまうことがあり、痛風の場合は進行すると重大な病気につながるものも少なくありません。
炎症をともなわなくとも、線維筋痛症や変形性関節症などストレスや加齢によって起こるとする痛みもあります。
いずれも、治療を行なうことで痛みの改善が期待できるため、関節の痛みが少しでも気になる場合は、病院で診察を受けるようにしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。