1.男性にとって亜鉛が重要な理由
亜鉛は、男性が悩みがちな「男性機能」と「薄毛問題」に体の内側からアプローチする機能を持っています。
1-1.男性機能と関係が深い
微量元素(ミネラル)と呼ばれる栄養素の一つである亜鉛は、男性機能と関係が深い栄養素として知られています。
体内で亜鉛が不足すると、男性ホルモンである「テストステロン」の合成や分泌が低下します。それにともなって、男性ホルモンが影響するさまざまな男性機能に影響が出る可能性があります。特に、精子形成に大きく関与するとされています。
1-2.健康な髪を育てる
亜鉛は、男性機能の維持だけでなく、健康な髪を育てるためにも重要であることがわかってきています。
特に薄毛が気になる男性は不足しないようにしておきたい栄養素といえるでしょう。
2.亜鉛のおもな働き
「亜鉛」という言葉自体は皆さん聞いたことがあると思いますが、体内でどのような働きをする栄養素なのかは知らないという方もいらっしゃるかもしれません。
健康な毎日を過ごすためにも、亜鉛とは何かを知っておきましょう。
2-1.亜鉛とは
亜鉛は、古くから利用されてきた金属で、健康と栄養維持にも重要な必須微量元素の一つです。体内には合計2,000mgほど含まれており、たんぱく質などと結合した状態で「骨」「皮膚」「肝臓」「骨格筋」などのさまざまな臓器に存在しています。
2-2.亜鉛の働き
亜鉛には、以下のような働きがあります。
代表的なものとしては、味覚に関与することです。通常、人間は舌にある「味蕾(みらい)」によって味覚を感知します。その味蕾細胞を生成するには、亜鉛が欠かせません。
また、傷を負った個所の修復にも亜鉛が関与しています。傷口は古い細胞から新たな細胞へと移行することによって修復するものです。その新しい細胞への移行のためには、亜鉛が関わっているとされています。傷口が早期に修復するのは、亜鉛の働きも重要です。
さらに、亜鉛は免疫機能の働きにも一役買っています。免疫は、NK細胞とT細胞と呼ばれる免疫細胞がうまく働くことなどで機能しますが、これらの細胞が正常な作用をするためには亜鉛の存在が重要です。
3.亜鉛不足による体への悪影響
亜鉛が不足すると、体にどのような影響があるのでしょうか?
体内の亜鉛が不足すると、「皮膚炎」「味覚の異常」「下痢」などが起こるとされていますが、その詳しいメカニズムはわかっていません。
亜鉛が不足してしまう原因としては、「食べ物からの摂取不足」「亜鉛の過剰排泄」「薬の副作用」などが挙げられます。
4.亜鉛の摂取方法と注意点
亜鉛は体内のさまざまな反応に関わる大切なミネラル。不足しないように積極的に摂取していきたいところです。
ここからは、亜鉛摂取方法と亜鉛の過剰摂取の危険性について解説します。
4-1.亜鉛の摂取方法
亜鉛不足を避けるための摂取方法の代表例としては、食品から摂取する方法があります。
亜鉛が多く含まれる食品としては「赤身の牛肉」「鶏肉」「納豆」「鶏卵」「牡蠣」「うなぎ」などが挙げられます。亜鉛不足が気になるときには、積極的に摂取しましょう。
4-2.亜鉛の過剰摂取の危険性
日本人がどれくらいの量の亜鉛を食事から摂取する必要があるかを示した「食事摂取基準(2020年版)」は以下のとおりです。
性別 |
男性 |
女性 |
年齢 |
推奨量 (RDA) |
目安量 (AI) |
耐容 上限量 (UL) |
推奨量 (RDA) |
目安量 (AI) |
耐容 上限量 (UL) |
0~5 (月) |
- |
2 |
- |
- |
2 |
- |
6~11 (月) |
- |
3 |
- |
- |
3 |
- |
1~2 (歳) |
3 |
- |
- |
3 |
- |
- |
3~5 (歳) |
4 |
- |
- |
3 |
- |
- |
6~7 (歳) |
5 |
- |
- |
4 |
- |
- |
8~9 (歳) |
6 |
- |
- |
5 |
- |
- |
10~11 (歳) |
7 |
- |
- |
6 |
- |
- |
12~14 (歳) |
10 |
- |
- |
8 |
- |
- |
15~17 (歳) |
12 |
- |
- |
8 |
- |
- |
18~29 (歳) |
11 |
- |
40 |
8 |
- |
35 |
30~49 (歳) |
11 |
- |
45 |
8 |
- |
35 |
50~64 (歳) |
11 |
- |
45 |
8 |
- |
35 |
65~74 (歳) |
11 |
- |
40 |
8 |
- |
35 |
75以上 (歳) |
10 |
- |
40 |
8 |
- |
30 |
※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
亜鉛は毒性が低いとされていますが、過剰摂取すると体に悪影響をおよぼす恐れがあります。
一度に大量に摂取した場合、急性中毒として「吐き気」「胃障害」「めまい」などの症状があらわれます。また、継続的な過剰摂取は、銅や鉄の欠乏と、それにともなう「貧血」「免疫障害」「善玉コレステロールの低下」「下痢」などが懸念されます。
見逃しやすい亜鉛不足
亜鉛は体内のさまざまな反応に関わる大切なミネラルです。
-
• 男性機能に自信が持てない
-
• 抜け毛が気になる
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• なんだか味覚が変
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• 下痢することが多く、お腹の調子が悪い
こうした症状がある方は、もしかしたら亜鉛不足かもしれません。
「亜鉛」は男性にとって重要な栄養素です。適量をしっかり摂取し、健康的な毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。