1.50代の特徴と体調変化とは
親の介護などをとおして、自分の老後に向けて健康を意識し始める50代の方は多いのではないでしょうか。そして、この時期に現れる体や心の不調の原因について不安を抱いている方もいるでしょう。
ここでは、50代の特徴と体調の変化についてお伝えします。
1-1.50代は高年期への準備期であり、身体機能が徐々に低下していく時期
50代は、高年期への準備期であり体の衰えが気になる時期です。
子育てが一段落して自分の趣味に時間を使う人が増える一方で、親の介護や自分の健康問題に直面することも多いでしょう。そういった生活のなかで、似たような境遇の方々とのネットワークが構築されることも多いようです。それらのネットワークのなかで情報を共有し、定年に向けて自分の健康や老後の生活について考えながら人生設計していく必要があるでしょう。
そして、スポーツ庁が行なった「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(2019年)では、50歳を過ぎると、二人に一人が健康のためにウォーキングを始めるという結果も出ており、健康意識の高まりが顕著に現れています。
1-2.50歳を過ぎたら性ホルモン減少による体調変化に注意
女性の場合は、50歳前後で閉経を迎えることにより女性ホルモンが急激に減少します。男性の場合は、20代をピークに男性ホルモンがゆっくりと減っていきますが、個人差が大きいので同じ年代の人でも症状はさまざまです。
男女ともに、性ホルモンの減少はあらゆる病気や不調の原因になります。
女性ホルモンの役割は、妊娠や出産への備えのほか、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やして血管を若々しく維持することなどです。女性が閉経を迎えるまで、脂質異常症や高血圧が少ないのは、おもに女性ホルモンがパワーを発揮しているのも一つの要因といえるでしょう。
男性ホルモンは、体内でエネルギーの消費を高めて体脂肪を減らす役割があります。
そのため、男性ホルモンが減るとエネルギーとして消費されなかったたんぱく質や糖分が脂肪として蓄えられるので、内臓脂肪型の肥満の一因となってしまうのです。
2.50代に起こりやすい更年期症状の特徴と改善方法
更年期障害は初期症状が、寝つきが悪い・疲れやすいなどの曖昧な症状(不定愁訴)であるため、発症に気付かないケースが多く見られます。その結果、長引く心や体の不調がストレスになり、症状を悪化させてしまうのです。まずは、更年期障害について正しい知識をつけて、早めの対処をすることが重要だといえます。
2-1.更年期障害の症状とは
男女ともに50代では、さまざまな体調不良や情緒不安定などの症状が現れ、このような症状をまとめて更年期障害と呼びます。
加齢にともない身体的な衰えが現れ、生まれ持った性格や育った環境による精神的・心理的な要因、この時期に抱える対人関係や家族の問題など多様な要因が影響し合うことで症状が現れるのです。
女性の場合は、自律神経のバランスが乱れることによる症状として、異常な発汗・ほてり・のぼせ・動悸・冷や汗などが現れます
精神的な症状としては、不眠・不安・気力減退・無気力・脱力感・集中力の欠如などが特徴的です。
また更年期の女性は、手のしびれや腱鞘炎・手指の痛みで悩んでいる人も少なくありません。比較的多く見られる症状は、ヘパーデン結節という手の指先の関節の痛みです。
初めは少し気になる程度の軽い痛みから始まり、進行すると変形してしまいます。人差し指から小指まですべての指に症状が現れる可能性があり、変形した関節の周りでは水ぶくれのようなものができることもあるのです。
男性の場合は、女性の更年期障害の症状に加えて、性欲低下・勃起障害などの性機能障害が現れますが、症状の割合として圧倒的にこの性機能障害が多くなっています。
2-2.50代の不調を改善するには
年齢にともなう性ホルモンの減少は、生理的な現象なので仕方がありません。
また性ホルモンの分泌には、加齢だけでなくストレスが大きく影響を与えており、不規則な生活習慣も性ホルモンの減少を加速させます。
しかし、毎日の生活習慣の工夫によって、閉経による性ホルモンの減少を遅らせることや分泌を活性化させることはできるといわれています。
現に、運動をすることで血管機能や脳の働きに関わる性ホルモンが増加することが明らかになっており、ウォーキングなどの脚の筋肉を使う強めの運動がよいでしょう。普通の散歩コースに階段や坂道を取り入れたり、速歩きにしたりなど強度を上げる工夫をするのがおすすめです。
食事面では、抗酸化成分を多く含む根菜類やねぎ類・大豆製品を積極的にとりましょう。
また、体を十分に休めるために、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かることや、質の良い睡眠を心がけることが大切です。寝る前にスマートフォンやテレビを見ると、脳を覚醒させてしまうため、質の良い眠りを得るには、なるべく見ないようにするとよいでしょう。
「自分」の健康を大切にしましょう
50代は子育てが落ち着いて、親の介護などに励む方も多いでしょう。
しかし、今一度「自分」の健康についてしっかりと見つめ直すべき時期でもあります。
50代は日頃から、ホルモンの分泌をサポートする食生活と、ストレスをためない工夫をしながら、積極的に体を動かす習慣をつけることが健康への近道です。
そして、調子が悪いと思ったら無理をせずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。更年期障害の治療には、食事療法など生活習慣の見直しだけでなく、漢方やホルモン剤など薬による治療などがあります。
加齢による体の変化についての正しい知識を持ち、老いのリスクをしっかりと受け止めたうえで、どのように対処していくかをきちんと考えて行動することが大切です。
ぜひ、この記事を参考にして、健康的な明日を目指しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。