1.20代・30代女性のコレステロール値が高いおもな原因
悪玉コレステロールとも呼ばれる「LDLコレステロール」には、肝臓で生成されたコレステロールを全身に運ぶ役割があります。
血液中に存在するLDLコレステロールが増え、活性酸素の影響で酸化した「過酸化脂質」として蓄積すると、プラークが形成され血液の流れが滞り血管が硬くなってしまうことがあります。血管が硬くなったままの状態が進行すると、血管に血栓が詰まりやすくなり、様々な病気のリスクが高まります。
このように、増えすぎると厄介な存在となるLDLコレステロールですが、20代・30代とまだ若いにもかかわらず、増えてしまうケースがあることを理解しておきましょう。
LDLコレステロール値を高める原因の一つは、脂質に偏った食事です。コレステロールは、7~8割が肝臓で脂肪や糖を使って作られますが、2~3割は食事で取り入れます。
お菓子やマーガリンなどに使用されることが多いショートニングにはトランス脂肪酸、肉の脂身やバターには飽和脂肪酸が含まれていることはよく知られているでしょう。これらを必要以上に摂ると、LDLコレステロールが過剰な状態になってしまいます。
また、偏った食生活だけでなく、ストレスもLDLコレステロールの増加につながるでしょう。ストレスを感じるとストレスホルモンが分泌され、その影響で血管や血液がダメージを受けたり、コレステロール値が上昇したりします。
加えて、ストレスは血液中のLDLコレステロールを酸化させる活性酸素の発生も促進させるため、2つの面で悪影響をおよぼすと考えられるでしょう。
ストレスや食事などの生活習慣以外にも、持って生まれた遺伝子や体質によってLDLコレステロールが増えてしまうこともあります。この場合であれば、生活習慣や年齢は関係ないケースがほとんどです。
2.痩せていてもLDLコレステロール値が高くなるケースとは?
コレステロールは太っていると高くなりやすいイメージがあるかもしれませんが、「痩せているから大丈夫」とは限りません。実際、日本でコレステロールが高い方の割合を「痩せ・標準・肥満」に分けて比較すると、差が少なくなっているとの報告があります。
では、痩せているにもかかわらずLDLコレステロール値が高くなってしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
2-1.動物性脂肪の摂りすぎ
痩せているのにLDLコレステロール値が上昇する原因の一つは、食事で過剰に飽和脂肪酸を摂っていることです。肉の脂身やバターといった動物性脂肪には、飽和脂肪酸が多く含まれています。
特に、美容や健康のために糖質を制限して動物性脂肪を多く摂っている方は注意が必要です。知らないうちにLDLコレステロール値が高くならないよう、自分の健康状態を把握しておきましょう。
2-2.家族性高コレステロール血症
遺伝的な要因によってLDLコレステロール値が高くなる「家族性高コレステロール血症」と呼ばれる疾患もあります。家族性高コレステロール血症の発症には、生活習慣が関与しないのが特徴です。
この疾患では遺伝子の異常により、肝臓から全身に届けられるはずのLDLコレステロールを細胞内に取り込むことができません。そのため、血液中にLDLコレステロールが増え、それが酸化して血管壁に入り込み血管が硬くなる状態を引き起こします。しかし、ほとんどの方が無症状で経過するため発症に気付きません。
家族性高コレステロール血症の方は、胎児のときからLDLコレステロールが多い状態にあることで、20代・30代にもかかわらず血管が硬くなった状態が進行している可能性があります。
3.LDLコレステロール値を下げるためにできること
20代・30代でLDLコレステロール値が高くなってしまったとき、数値を下げるために自分でできる対策として、まずは日々の食事を見直すことが重要です。
豆腐や納豆から摂れる大豆たんぱくは、コレステロールが体内に吸収されるのを抑えます。
また、オレイン酸やドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの不飽和脂肪酸、食物繊維にもコレステロールを減少させる働きが期待できるでしょう。
オレイン酸はオリーブオイル、DHA・EPAはサンマやアジなどの青魚、食物繊維は海藻やキノコ類などに豊富に含まれています。
加えて、LDLコレステロールの酸化を防ぐため、抗酸化作用の強いビタミンC・E、β-カロテン、ポリフェノールなどの栄養素を積極的に摂るのもよいでしょう。
読書や映画鑑賞、アロマテラピーなど、好みの方法で心身ともにリラックスしてストレスを解消し、十分な睡眠を取ることも大切です。ストレスを受けた体は通常よりも多くのビタミンを必要とするため、食品やサプリメントでしっかり補いましょう。
また、喫煙習慣のある方は喫煙を控え、運動不足の方は適度な運動を心がけるのも効果的です。
コレステロール値が高い30代女性の方は油断せずに適切な対応をしましょう
20代・30代女性でコレステロールが高い場合、生活習慣の改善やストレスの解消などを心がけることが重要です。ただし、家族性高コレステロール血症は生活習慣に起因しないため、医療機関での治療が必要になることもあります。
若くても、痩せていても、コレステロール値が低いとは限りません。油断せずに適切に対処し、健康な毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。