1.乾き目(ドライアイ)の症状とは?
ドライアイは、「目が乾く」という症状のほかにも「見えにくい」「目がかすむ」「目やにが出る」「目が痛い」「まぶしい」といった症状があります。ドライアイは失明するほどの病気ではありませんが、見え方や生活の質を低下させる大きな一因となるのです。
また、目の疲れや不調は心身の疲れにまで影響をおよぼします。目が疲れるということは、目からの情報を受け取っている脳も疲労を感じているといっても過言ではありません。その結果、注意力や集中力が散漫になったり、肩こりや頭痛が生じたりするなど、さまざまな不調が現れます。
特に最近増えている精神的な疲れの背景には、ドライアイや目の疲れがあることも多いといわれています。このようにドライアイは、心身の不調にまでつながっているため、早めに対策をしていきましょう。
2.おもな乾き目(ドライアイ)の原因
ドライアイは「涙の病気」ともいわれ、涙には目の表面を覆うことで乾燥を防ぎ、目の表面に栄養を与えるなどの役割を持っています。この涙の膜が不安定になることで、ドライアイの症状が現れるのです。
また、作業に集中するなど神経が緊張しているときには交感神経が活発になり、涙の分泌量が減ってしまいます。涙は、リラックスしているときなど副交感神経が優位な状態にあるときのほうが出やすいとされています。
2-1.まばたきの回数が少ない
スマートフォンやパソコン・タブレットなどを長時間使用していると、まばたきの回数が減って、目が乾きやすくなります。
景色を見るときのまばたきの回数は1分間に20~30回に対して、読書をするときは15回程度、パソコンなどを見るときは10回以下になるというデータもあるのです。
2-2.ストレス
一見、ドライアイとは無関係に思える「ストレス」ですが、実はドライアイの大敵といえます。ストレスにより涙の分泌が抑えられてしまうため、目が乾燥してしまうのです。
2-3.加齢によるもの
中高年では、目を潤す涙、涙を蒸発から守る油分の分泌量が少なくなるため、ドライアイになりやすいです。
また、加齢により“抗酸化力”(老化の原因となる活性酸素から身を守るための力)が低下し、目の細胞が傷みやすくなることもドライアイの一因となります。これは、紫外線などの刺激により目にダメージを受けやすくなるためです。ほかにも加齢により血管が老化することで、リスクが高まる目の病気もあります。具体的には、白内障、緑内障、加齢黄斑変性といった病気です。
目は毛細血管が無数に集まっている器官のため、血管老化によって影響を受けやすいので注意しましょう。
血糖値が高い人は、糖尿病性網膜症にも要注意です。厚生労働省によると、糖尿病性網膜症で重い視覚障害や失明に至る人が年間3,000人以上もいるとされています。
3.乾き目を改善するための対策ポイント
ドライアイは、生活環境からの影響が大きいことが報告されています。日常生活で気を付けるべきことを知り、上手に目を労わってあげましょう。
3-1.乾燥を防ぐ
過度なエアコンの使用は空気が乾燥し、涙が蒸発しやすくなってしまいます。エアコンなどの風が直接当たることを避ける、加湿器を使って湿度を40~60%に保つなど空気の乾燥を防ぐことが大切です。
3-2.目の血行を良くする
目の疲れを癒すには、ホットタオルなどで目を温めてあげることも効果的です。目の毛細血管の血行が良くなり、目がスッキリとします。
3-3.パソコンやスマートフォンを長時間見続けない
パソコンやスマートフォンの連続使用は1時間までにして、10~15分ほど休憩をとるようにしましょう。また、目の乾燥を防ぐために意識的にまばたきをすることも有効です。
3-4.目の健康をサポートする栄養成分を摂る
目の健康に役立つおもな栄養素を4つ紹介します。身近な食材に多く含まれているので、毎日の食事に取り入れてみましょう。
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アントシアニン
アントシアニンは、目からの情報を脳に伝える物質のサポートをする働きがあるとされています。黒大豆やブルーベリーに豊富です。
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ルテイン
ルテインは、紫外線から目の網膜を守るといわれています。ブロッコリーやほうれん草に豊富です。
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β-カロテン
β-カロテンは、網膜や角膜の働きをサポートするとされています。人参やかぼちゃなどの緑黄色野菜に豊富です。
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DHA・EPA
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、目の網膜や脳に多く存在していて、DHAやEPAを補うことで目の疲れが軽減するといわれています。イワシやサンマ、マグロなどの青魚に豊富です。
ドライアイの対策をして心と体の健康を守りましょう
目の不調は、心身の不調にもつながります。
現代の生活ではスマートフォンやパソコンなどを使う場面が増えているため、多くの人たちは目を酷使しています。
「脳の出張所」ともいわれるほど、目から脳に伝えられる情報量は多く、その割合は80%以上ともいわれています。この目の機能が低下すると、日常生活に大きな支障をおよぼしかねません。
目は一生付き合っていく感覚器なので、日頃から十分にケアしていくことが大切です。
今回紹介したドライアイの対策ポイントを生活に取り入れて、目や心身の健康を守りましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医