1.インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原とする感染症の一つで、その抗原性の違いによって、A型、B型、C型の3つに大きく分類されます。このなかで、特に流行をもたらすのはA型とB型のウイルスです。
A型とB型とでは、B型よりもA型のほうで抗原性に変異が生じる傾向があります。
季節性インフルエンザは、その抗原性が小さな変異を遂げながら世界的に流行するものです。
一方、新型インフルエンザは、これまで確認されている抗原性から突発的に大きく変異したインフルエンザウイルスを指します。多くの人はこの変異したインフルエンザウイルスに対して免疫を獲得していないことから、国内、時には世界的な大流行となることがあります。
季節性インフルエンザは毎年予測を立ててワクチンの準備などを行ないますが、新型インフルエンザウイルスの発生は予測することが困難です。発生によって人々の生命や医療体制、ひいては経済全体にも大きな影響を与えることになります。
1-1.日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染
インフルエンザの感染力は他のウイルスと比較しても非常に強いもので、毎年日本国内では約1千万人、およそ10人に1人が感染することになります。
インフルエンザウイルスの感染経路はおもに飛沫感染と接触感染です。感染している人のくしゃみや咳から出る飛沫を吸い込んだり、飛沫に振れた手で口や鼻を触ったりすることで、感染に至るとされています。
1-2.重症化する危険が高い人は
インフルエンザで重症化するリスクが高いのは、次の項目に該当する人たちです。
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高齢者
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幼児
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妊娠中の女性
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持病のある人(喘息、慢性呼吸器疾患、糖尿病など)
幼児の場合は、中耳炎の発生や熱性けいれんを誘発するほか、急性脳症を発症し重症化する危険性があります。
また、高齢者や持病のある人では、原疾患の悪化や呼吸器に感染症を起こしやすくなることなどが知られていて、入院や死亡のリスクが高くなります。
2.インフルエンザのおもな症状
A型またはB型のインフルエンザは、ウイルスの感染を受けてから1~3日間の潜伏期間を経て症状が現れます。おもな症状は38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状です。続いて咳、鼻水などの症状も見られ、約1週間で症状が落ち着いていくとされています。
2-1.インフルエンザと風邪との違い
風邪もウイルスの感染により起こるという点では、インフルエンザと変わりありません。しかし、その症状には明確な違いが2つあります。全身症状の有無と、重症化リスクです。
風邪の多くはくしゃみや咳、のどの痛み、鼻水などの症状が多く、全身症状はほとんど見られません。また、重症化することも少なく、インフルエンザより症状が比較的軽微であるといえます。
インフルエンザと風邪の特徴は以下のとおりです。
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インフルエンザ |
風邪 |
症状 |
38度以上の発熱 |
発熱 |
全身症状(頭痛、関節痛、筋肉痛など) |
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局所症状(のどの痛み、鼻水、くしゃみ、咳など) |
局所症状(のどの痛み、鼻水、くしゃみ、咳など) |
急激に発症 |
比較的ゆっくり発症 |
流行の時期 |
1~2月がピーク |
年間を通じて。特に季節の変わり目や疲れている時など |
出典:首相官邸「インフルエンザ(季節性)とはどのような病気ですか?」
3.インフルエンザの予防法
インフルエンザにかからないためには、日々の生活のなかで以下のことに気をつける必要があります。
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1.人混みを避けて行動する
流行期には、人混みや繁華街を避けて行動することで感染のリスクは低くなります。どうしても外出が避けられない場合は、不織布マスクを着用しての外出が推奨されます。不織布マスクによって飛沫感染などのリスクが抑えられると考えられているためです。
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2.外出後の手洗い
外出後や食事前など、こまめな手洗いを行なうことでインフルエンザウイルスを物理的に除去することが可能とされています。これはインフルエンザに限らず飛沫、接触によって感染する感染症予防の観点からも基本となる行動です。
また、アルコールを含む消毒液での手指消毒も効果的です。
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3.湿度を適度に保つ
適度に加湿をすることで、気道粘膜の防御機能が損なわれないことから、インフルエンザにかかりにくくなるとされています。特に冬場の室内は乾燥しやすいため、加湿器などを使い50%~60%の湿度を保つようにしましょう。
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4.十分な休養とバランスの良い食事
免疫力が低下していると、ウイルスにも感染しやすくなってしまいます。日常的に睡眠を十分に摂り、バランスの良い食事を心がけることで、免疫力をアップさせましょう。
このほか、予防接種を受けることで、インフルエンザの予防につなげることも可能です。
3-1.インフルエンザの予防接種(ワクチン)について
日常生活での予防以外で有効な方法として、予防接種があります。
ワクチンの予防効果が期待できるのは接種後2週間から5ヵ月程度とされ、効果が現れるまでには時間を要します。流行シーズンに入る前に接種を終えるようにするのがおすすめです。
なお、13歳以上は1回(場合によっては2回)、12歳以下は2回接種する必要があります。
現行のインフルエンザのワクチンは、ウイルスが体内に入り増殖する「感染」を抑えることはできません。感染後、潜伏期間を経て発熱やのどの痛みといった症状が発症します。この「発病」の抑制に関しては一定の効果が認められていますが、これに関しても高い予防効果を見込めるものではありません。
インフルエンザワクチンの最も大きな効果は「重症化」の予防です。特に高齢者や基礎疾患を持つ人がインフルエンザの症状を発症すると、場合によっては肺炎や脳症などの重い合併症が現れ、重症化の経過をたどる可能性が高まります。ワクチンの接種は、この重症化を大幅に減らすことができるといわれているのです。
例として、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者を対象に、インフルエンザワクチンを行なった国の研究では、34~55%の発病を未然に防ぎ、82%の死亡を阻止する効果があったといわれています。
※平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」
3-2.予防接種による副反応
ワクチン接種は免疫をつけるために行なわれますが、免疫獲得という期待している以外の反応が出てしまうこともあります。これは副反応と呼ばれ、インフルエンザワクチンを接種した人の10~20%には接種した部位に対し、以下の症状などが見られます。
これらの症状は通常2~3日で治まるため、副反応が出てもあわてず、症状がなかなか消失しない場合や重篤な副反応が発現した場合には病院に相談するようにしましょう。
また、稀にショックや蕁麻疹、呼吸困難などが起こるアナフィラキシーのような症状が起こることもあります。他の副反応に比べると可能性は低いですが、これらの反応は接種後すぐに発現することがほとんどであるため、接種後30分は医療機関内で安静にしておくと安心です。
日常生活でもできるインフルエンザ予防をしっかりと
インフルエンザは毎年流行するため、正しい知識を持って流行が始まる前から対策を行なうことが大切です。
予防策の一つとしてワクチン接種がありますが、日常生活のなかでできる手洗いや適度な湿度を保つことで、インフルエンザの予防が期待できます。
また、日頃から十分な睡眠と栄養を摂り、根本的に身体を強くすることも大切です。できることから意識して、インフルエンザへの備えを始めていきましょう。
監修者情報
氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。