1.朝起きられない原因がストレスの場合
大きなストレスがかかることにより、睡眠の質が落ちて、朝すっきりと起きられなくなる場合があります。
ここでは、ストレスにより目覚めが悪くなる3つのケースについてお伝えします。
1-1.自律神経の不調
自律神経の不調は、「睡眠の質」を悪くして、「朝なかなか起きられない」という事態を招きます。
自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、この2つがバランスよく機能することで私たちの睡眠と覚醒のリズムは正常に保たれているのです。
「交感神経」が優位に働くと、血管が収縮して血圧や心拍数が上がり、気分は高揚して活発な状態になります。
一方「副交感神経」が優位に働くと、血管は広がり血圧や心拍数は低下して、リラックスした状態になるのです。
この2つの機能がバランスよく働いていれば、夜は自然と眠くなり、昼間は活動的に行動することができます。しかし、ストレスにより自律神経が正常に機能しなくなると、朝になってもスイッチが入らずにどうしても起きることができない事態を招くのです。
1-2.起立性調節障害
起立性調節障害とは、体質により症状が現れやすい人もいますが、特に思春期に目立つ障害です。
朝起きられないといった症状のほかにも、だるい・息切れ・動悸・めまい・立ちくらみ・お風呂でののぼせ・食欲不振・頭痛・腰痛・車酔いなどもともと自律神経の機能が弱い体質の人は、起立性障害を発症しやすい傾向があるようです。
また、思春期にはホルモンバランスが変化することや、心の問題・社会的な問題が混ざり合い、自律神経のバランスが乱れて症状が目立つようになってきます。
2.良い睡眠をとるために
快眠のためには規則正しい生活を送ることが大切です。生活習慣を見直すことで自律神経のバランスが整い、質の良い睡眠を得ることができるでしょう。また、自律神経を整えることはストレスに強い体をつくることにもつながります。ここからは、快眠を得る方法についてお伝えします。
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毎日同じ時間に寝る
良い睡眠をとるためには、毎日同じ時間に布団に入ることが大切です。
どんなに栄養バランスが整った食事をとったり、運動をしたりして健康に気を遣っていても、寝る時間が毎日バラバラであれば、快眠にはつながりません。
なぜなら、私たちの体のなかには「体内時計」があるからです。体内時計は、寝るタイミングを決めるだけでなく、睡眠時間に合わせて生理的な活動やホルモンの分泌を調節するなど、寝るための体の準備をしてくれます。
毎日同じ時間に寝ることで、体内時計にあなたの睡眠時間がプログラミングされて、質の良い睡眠をとることできるのです。
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運動習慣をつくる
数多くの研究結果により「運動習慣がある人は不眠が少ない」ということが明らかになっています。運動習慣により、寝つきが良くなり、ぐっすりと深い睡眠を得られるようになるのです。これは一回だけの運動では効果は弱く、毎日運動することでより効果を発揮します。
運動のタイミングとしては、夕方から寝る3時間ほど前までの時間帯がおすすめです。
なお、人は脳の温度が下がるときに「眠たい」と感じやすい性質があります。快眠のためには、寝る数時間前に運動をすることによって、脳の温度を一時的に上昇させることがポイントです。こうすることで、運動しないときと比べて、布団に入るときの脳の温度の低下幅が大きくなるので、快眠へとつながりやすくなります。
ただし、寝る直前の運動は、体を活動的にしてしまうので禁物です。
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寝る前に入浴する
寝る前にお風呂に入って体を温めることで快眠効果が期待できます。これは、運動と同様で寝る前に体温を一時的に上昇させることがポイントです。
なお、入浴するタイミングによって期待できる効果が違ってきます。
深い睡眠を得たい場合は、寝る直前の入浴が良いとされていますが、寝つきを悪くしてしまうおそれがあります。寝つきを良くしたい場合は、寝る2~3時間前の入浴がおすすめです。寝る前にお風呂に入って、39~41度ほどの湯船に浸かることで、質の良い睡眠につながります。38度ほどのぬるめの湯で25~30分、42度ほどの熱めの湯なら5分程度の入浴で寝つきが良くなることが実証されているのです。
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朝起きたら朝日を浴びる
朝日を浴びることは、夜の快眠につながります。私たちの体内時計は、24時間よりも長めの周期になっていて、毎日24時間に調整してあげないと、どんどんと生活時間が遅れていってしまうのです。朝起きてすぐの光が最も効果的なので、朝日を浴びる習慣をつけましょう。
ストレスで朝起きられない場合は早めの対策が重要
「朝起きられない」のは誰にでも起こりうる症状なので、軽視してしまいがちです。しかし、それは過剰なストレスに対する体のSOSかもしれません。
必要以上に“朝起きられない自分”に落ち込んだり、責めたりする必要はありません。体のSOSに耳を傾けて、不調の原因と適切な対処方法を知り、早めに実践してみてください。その一歩が、目覚めの良い朝への近道になるでしょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医