筋力低下による疲れやすさの原因とは?
筋力低下の予防方法について紹介

「年齢を重ねるにつれて疲れやすくなった」「日常の動作が億劫になってきた」など、加齢によって筋力の低下を感じている方は多いのではないでしょうか。

筋力低下による疲れやすさは、サルコペニアによる老化現象かもしれません。

今回は筋力低下による疲れやすさの原因や予防方法を紹介します。

1.筋力低下による疲れやすさは「サルコペニア」が原因かも?

筋力低下による疲れやすさは、サルコペニアによる老化現象が考えられます。

サルコペニアという言葉に馴染みがない方のために、まずはサルコペニアの症状や原因を解説します。

1-1.サルコペニアについて

サルコペニアとは、年齢を重ねるにつれて筋肉量が減ってしまう老化現象のことです。

高齢になると、広背筋や腹筋、臀筋群など姿勢を保つために必要な抗重力筋が衰えるため、立ち上がったり歩いたりといった日常生活に必要な動作が難しくなります。

高齢者が転倒すると、骨折する可能性があります。太ももの付け根を骨折すると高齢者の7人に1人の割合で寝たきりになってしまうこともあるため、軽視はできません。

以下の項目で2つ以上該当する場合、サルコペニアの可能性があります。

  • ・同年代の同性よりも筋力が弱い

  • ・片足で15秒以上立つとふらついてしまう

  • ・普段から重い荷物を運ばない

  • ・膝や腰が痛い

  • ・過去一年以内に転倒したことがある

1-2.サルコペニアの原因

サルコペニアは体を動かさないことによって起こると考えられていますが、明確なメカニズムについてはわかっていません。

運動以外の要因としては、ホルモン量の変化や栄養不良、酸化ストレス、神経系の問題、慢性的な炎症など、加齢によるさまざまな変化によって起こりうるとされています。

サルコペニアの大事なポイントは、普段通りの生活をしていても筋肉が減りやすいという点です。

若いうちは筋肉が減ることは基本的にありませんが、高齢になると徐々に減少します。そして、若い頃と同じような生活をしていると、筋肉量が減ったせいで基礎代謝が落ちてしまいます。

そのため、運動を意識的に取り入れ、食事で充分なタンパク質の摂取を心がけましょう。

2.筋力が低下する「サルコペニア」の予防方法

ここでは、サルコペニア予防における食事と運動の重要性を説明します。

2-1.食事について

サルコペニア予防には、筋肉を作るうえで必要となるタンパク質を摂取することが大切です。

2017年版のサルコペニア診療ガイドラインでは、サルコペニアの予防や治療として、タンパク質(アミノ酸)を摂取することを薦められています。体重1kgあたり1.2~1.5gのタンパク質が一日の摂取量の目安です。例えば、体重60kgであれば、一日あたり72~90gのタンパク質を摂取する必要があります。

タンパク質が多く含まれる食品は、肉類・魚類・大豆・乳製品・卵などです。肉や魚に含まれる動物性タンパク質のほうが、大豆などの植物性タンパク質よりも筋肉を作るうえでは効果があります。

タンパク質は朝食や昼食時に摂取量が不足しがちなため、一日3食ともなるべく同じくらいの量を摂れるように意識しましょう。

タンパク質以外では、筋肉を動かす役割を持つビタミンDの摂取も有効です。

ビタミンDはまぐろ、さば、さけ、チーズ、キノコ類、オレンジジュース、ヨーグルトなどに含まれています。

2-2.運動について

サルコペニアの予防には、食事と同様に運動習慣を継続させることも大切です。

具体的には、運動習慣がない方はウォーキングや体操などの負荷の軽い運動から始めてみましょう。

筋肉を鍛えるという観点からは、スクワットや腕立て伏せのような負荷の高いレジスタンス運動も有効ですが、運動習慣がない方にとっては難易度が高い可能性があります。

軽い運動に慣れてきたら、抗重力筋と呼ばれる体幹・脚・太もも・お尻の筋肉などの筋力を鍛えられるサルコペニア対策の運動を行なうとよいでしょう。

筋力低下による疲れにはタンパク質の摂取と運動で予防しましょう

サルコペニアは、筋肉が減ってしまう老化現象です。日常生活に必要な抗重力筋が減りやすく、高齢者は転倒による骨折などにもつながるため、注意が必要です。

おもな原因は運動不足のほか、加齢による体調の変化が考えられています。

日頃からタンパク質の摂取と運動習慣の継続を行ない、サルコペニアを予防しましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。