1.塩に含まれる成分と働き
塩と一口にいっても、含まれている成分は1種類ではなく、働きもさまざまです。ここでは、塩に含まれる成分と働きを解説します。
1-1.塩に含まれる成分
「塩」は、塩化ナトリウム(NaCl)が多く含まれています。
市販の塩には、塩化ナトリウムが90%以上含まれているものが多く、カルシウム・マグネシウム・カリウムなどは少ないのが特徴です。一方で、精製度が低いタイプの塩も市販されていて、こちらにはカルシウム・マグネシウム・カリウムが多く含まれています。
減塩タイプの塩は、塩化ナトリウムの含有割合が50%以下です。塩化ナトリウムを少なくした分、カリウムの含有割合を高くしているものがあります。
カリウムの摂取を制限する必要のある方は、カリウムの過剰摂取にならないように注意しましょう。
1-2.塩の働き
塩に含まれているナトリウムは細胞の外側の液体である細胞外液に多く含まれている、体にとって重要な必須ミネラルです。
細胞の浸透圧調整のほか、神経伝達や心臓の筋肉である心筋の収縮に関係しています。
また、ナトリウムは胆汁・膵液・腸液などの材料にもなります。胃液として食物の消化を助ける働きがあるなど、健康的な体を維持するために重要な役割を果たしています。
2.塩と健康の関係について
塩は、健康にさまざまな影響をおよぼします。ここでは、塩分の過剰摂取と塩分不足がもたらす健康への影響を解説します。
2-1.過剰摂取が健康におよぼす影響
塩分の過剰摂取が体に与えるおもな影響には、喉の渇きやむくみがあります。
むくみの原因は、細胞周辺の細胞外液の増加が原因です。細胞周辺の外液には、ナトリウムが多く含まれており、塩分の過剰摂取で外液が増加するため、むくみが生じます。塩分を過剰摂取すると、血圧の上昇や生活習慣病などのリスクも高まるため、注意が必要です。
2-2.塩分不足が健康におよぼす影響
塩分が不足すると、疲労感や食欲不振、血液がドロドロになるなどの影響を引き起こします。
通常の食生活をしていれば、塩分が不足することはありません。しかし、汗をたくさんかいたり激しい下痢をしたりした場合は、塩分不足になる可能性があります。また、熱中症対策としても水分だけでなく、塩分の適度な摂取が大切です。
3.一日あたりの塩分の摂取目安量
塩分は、摂り過ぎても不足しても体へ悪影響を与えるため、適度な量を知り摂取することが大切です。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、日本人の成人の一日あたりの平均的な食塩摂取量は、男性が約11g、女性が約9gです。
しかし、世界基準と比較すると、これらの目安摂取量は高いため、さらに低い数値が求められています。
食塩相当量として定められている一日あたりの目標摂取量は、成人の場合、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です。
ただし、高血圧や腎臓障害などを抱えている方は、男女とも一日あたり6g未満と設定されています。
塩分の過剰摂取が気になる場合は、カリウムを多量に含む食べ物を摂取することがおすすめです。カリウムには、ナトリウムの排出を促す効果があるため、摂り過ぎた塩分を排出できます。
適切な塩分量を知り健康的な毎日を過ごそう
塩分の摂り過ぎや不足は、どちらも健康に悪い影響をおよぼします。そのため、一日あたりの摂取目安量を知り、適量を摂ることが大切です。
塩分の多い食事を好む方は、減塩調味料やナトリウムの排出を促すカリウムを多く含む食物を食べるのもよいでしょう。
しかし、持病やカリウムの摂取制限など、すでに健康リスクのある方は注意が必要です。
自分の状態をしっかり把握し、適度に塩分を摂取して健康的な毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。