椎間板ヘルニアとは?
発症する原因やおもな症状、手術の有無について解説

腰痛や足の痛みが続いている場合、その原因として「椎間板ヘルニア」が考えられます。症状の程度や経過によっては手術も検討しなければならないため、甘く見てはいけない病気です。

しかし、椎間板ヘルニアがどういった病気かよく知らない、できれば手術は受けたくないという方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、椎間板ヘルニアの基礎知識、発症する原因やおもな症状、手術の必要性について解説します。

1.椎間板ヘルニアとは?

椎間板ヘルニアとは、椎間板の内部にあるゼリー状の組織「髄核」が外部へと一部飛び出し、神経を圧迫してしまっている状態のことです。

人間の背骨は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎によって成り立っており、これらの骨と骨の間に椎間板があります。椎間板は背骨への負担を和らげるクッションの役割を担っていますが、運動や運搬作業によって強い衝撃を受けると、髄核が椎間板を飛び出してしまうこともあるのです。

椎間板ヘルニアは頸部から腰部にかけて起こりますが、特に腰部での発症例が多く見受けられます。最初は足腰に痛みやしびれが生じる程度ですが、重症化すると膀胱・直腸の神経が圧迫されて、排尿・排便障害が起こることもあるため、日常生活にも支障をきたしかねません。

2.椎間板ヘルニアを発症する原因

椎間板ヘルニアは発症部位が幅広いこともあり、原因を一つに特定することが難しい病気です。ただし、臨床現場から上がってきた報告では、下記のような原因で発症するケースが多い傾向にあると指摘されています。

  • • 椎間板の老化

  • • 重量物の運搬作業

  • • 長時間のデスクワーク

  • • 遺伝

  • • 車の運転

  • • 喫煙

また、椎間板ヘルニアは複数の原因が絡み合って発症するケースも多いため、それを踏まえて原因を見極める必要があります。

3.椎間板ヘルニアのおもな症状

椎間板ヘルニアが引き起こす症状はさまざまですが、症状としては下記のようなものが挙げられます。

  • • 腰痛

  • • 腰を曲げにくい

  • • 腰や背中が凝る

  • • お尻から太もも、足首にかけて痛みやしびれが出る

  • • 下肢の筋力低下

  • • 歩行困難

  • • 尿が出にくい(排尿障害)

  • • 便秘がちになる(排便障害)

また、椎間板ヘルニアの発症部位によっては、首・肩の痛みや手指の機能低下といった症状が出ることもあります。

これらの症状が出ている場合、整形外科で一度診てもらったほうがよいでしょう。特に排尿・排便障害が出ている方は、すでに重症化している可能性も高いため、早急に受診すべきです。

4.椎間板ヘルニアは手術が必要?

椎間板ヘルニアの治療で手術が必要になるかどうかは、症状の程度や経過によって決まりますが、50~80%は手術なしで改善すると報告されています。実際、服薬治療やブロック注射など、手術以外のアプローチが治療効果を発揮した例も少なくありません。

また、6カ月前後で、神経を圧迫していたものが自然消失するケースも多く見受けられます。

ただし、消失しやすいヘルニアは、髄核が椎間板と神経の間に存在する「後縦じん帯」を突き破っているタイプです。すべての椎間板ヘルニアが自然に消えるわけではなく、適切な治療を行なわないと重症化するタイプもあるので、注意しましょう。

椎間板ヘルニアはさまざまな症状を引き起こす病気です

椎間板ヘルニアは腰部で起こりやすいため、腰の病気というイメージがあるかもしれません。しかし、実際は腰以外の部位で痛みやしびれが生じたり、膀胱や直腸の機能を下げたりするなど、さまざまな症状を引き起こす病気です。

歩行困難や排尿・排便障害まで発症すると、日常生活を送ることもままならなくなるので、原因や症状に心あたりがあるなら、整形外科で検査を受けることをおすすめします。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医