1.じゃがいもの基礎知識と種類
まず、じゃがいもの基礎知識と、代表的な種類を解説しましょう。
1-1.基礎知識
じゃがいもは南米アンデス原産のナス科の作物で、起源500年頃から標高3000〜4000mの高地で栽培され、重要な食用作物となっていました。
日本への伝来は、1600年前後に東洋貿易の拠点となっていたジャワ島のジャカルタから、オランダ人が持ち込んだといわれています。当時ジャカルタは「ジャガトラ」と呼ばれていたことから、「ジャガトライモ」から「じゃがいも」と呼ばれるようになったとされているのです。
日本では収穫量の85%(平成27年度)を北海道が占めており、続いて長崎県、鹿児島県でも生産されています。なお、世界的には、中国での生産量が最も多くなっています。
1-2.おもな種類
じゃがいもは品種改良されて、男爵やメークイン、キタアカリなど多くの品種が出ています。料理に応じて使い分ける方もいらっしゃるでしょう。ここではおもな品種を紹介します。
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男爵
ホクホクとした粉質で食味が良く、じゃがいもの代表的な品種です。コロッケや粉ふきいもなど、肉質を活かした料理に向いています。
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メークイン
長卵型で粘質な食感を持つ品種で、男爵とともに国内2大品種となっています。煮崩れしにくいため、カレーライスやシチューなどの煮込み料理に向いています。
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キタアカリ
肉質が黄色いのが特徴で、ビタミンCが多い品種です。火の通りが早いため、皮つきでの調理や、電子レンジでの調理などに重宝します。
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ベニアカリ
紅色の皮を持ち、でんぷん質の多い白い肉質をしています。粉っぽい食感のため、コロッケなどに向きます。
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ホッカイコガネ
大粒でくぼみが少なく、皮がむきやすい品種です。サイズ感を活かしてフライドポテトに使われます。煮崩れしにくいので、煮物にも向いています。
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マチルダ
でんぷんが多く小粒のため、業務用のベイクドポテトに利用されています。疫病にかかりにくい特徴もあります。
2.じゃがいもに含まれる栄養素
じゃがいもにはビタミンが豊富で、特にビタミンCやビタミンB1、カリウムなどが多く含まれています。
2-1.ビタミンC
じゃがいもは、フランスで「大地のりんご」というくらいビタミンが豊富です。特にビタミンCはリンゴの10倍含まれており、加熱や長期保存でも損失が少ない特徴があります。
ビタミンCはコラーゲンの生成に必須の化合物で、骨や腱、血管を強化し、老化を予防する働きがあります。また、メラニンの生成を抑えてしみ・そばかす、肌のはり・つやを改善する美肌効果も期待できます。
さらに免疫力を高める働きから、風邪などの予防にも役立つと考えられています。
2-2.ビタミンB1
ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。特に糖質を多く摂取する人や、よく運動する人はエネルギー産出量が多いため、より多くのビタミンB1が必要です。
ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖から十分なエネルギーを生産できなくなり、疲労やだるさ、食欲不振といった症状が現れます。いわゆる脚気(かっけ)は、ビタミンB1の不足が原因です。
2-3.カリウム
じゃがいもに豊富に含まれるカリウムは、体内のナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防ぎ、ナトリウムの排出を促進し、血圧を下げる作用があります。水溶性で煮ると水中に溶けだすため、みそ汁の具にカリウムを含む野菜などを使うと、みその塩分を排泄してくれます。
カリウムはさまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしていれば欠乏症になることはありません。ただし、疾患や服薬が原因でカリウム不足になった場合は、脱力感や筋力低下、食欲不振などがみられます。
3.栄養豊富なじゃがいもを使ったレシピ
ここからは、ビタミンなどの栄養が豊富なじゃがいもを使った、おすすめのレシピを紹介します。
3-1.おからとひき肉のポテトサラダ
じゃがいものビタミンCは、加熱しても壊れにくいので、やわらかくゆでたポテトサラダで、栄養を余すところなくいただきましょう。生おからを加えることで良質なタンパク質も一緒に摂取できるほか、糖質オフにも役立ちます。
【材料】4人分
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• じゃがいも 2個
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• 玉ねぎ 1/4個
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• 合いびき肉 100g
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• 生おから 50g
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• サラダ油 小さじ2
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• 塩 小さじ1/4
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• こしょう 適量
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• ナツメグ 適量
【A】
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• マヨネーズ 大さじ1.5
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• 粒マスタード 小さじ1~2
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• パセリ(みじん切り) 適量
【作り方】
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1. じゃがいもはよく洗い、水からゆでましょう。竹串を通してすっと通るやわらかさになったらじゃがいもを取り出します。熱いうちに皮をむき、マッシャーなどで潰しておいてください。
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2. 玉ねぎはみじん切りにします。フライパンにサラダ油を入れて中火にかけ、玉ねぎが透き通るまで炒めましょう。合いびき肉を加え、さらに炒めてください。
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3. 合いびき肉に火が通ったら、生おからを加えて炒めます。全体に火が通ったら調味料を加えましょう。
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4. 潰したじゃがいもに炒めた具を加えて混ぜ、粗熱が取れてからドレッシングを加えて混ぜます。器に盛り付け、パセリのみじん切りを散らしたら完成です。
3-2.ハッセルバックポテト
じゃがいもの味わいを堪能できる一品です。薄く切れ目の入ったじゃがいもをカリッと焼きあげてください。
【材料】2人前
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• じゃがいも(メークイン) 2個
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• ハーブソルト(なければ普通の塩) 適量
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• オリーブ油 大さじ2
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• バター 10g
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• サワークリーム 適宜
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• 粗挽き黒こしょう 適宜
【作り方】
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1. じゃがいもは皮ごとよく洗い、切り離さないように、2~3mm間隔で上部のみ切り込みを入れていきます(割りばし2本でじゃがいもを挟んでから切り込みを入れていくと、最後まで包丁の刃が入りにくいため、うまく切り込みが入れられます)。
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2. 切りこみを入れたじゃがいもをしっかり水にさらし、でんぷんを落としましょう。でんぷんが残っていると切り込みがくっついてしまうため、水が濁らなくなるまで数回水を替えてください。オーブンを210度に予熱しておきましょう。
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3. じゃがいもの水気をふき取り、耐熱皿に入れてハーブソルト、オリーブオイルをかけてください。バターは切り込みの間にちぎって挟みましょう。
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4. オーブンで30~40分焼きます。途中でじゃがいもから流れ出たオリーブオイルをすくってかけると、カリッと仕上がります。じゃがいもがやわらかくなったら取り出しましょう。
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5. 焼き上がったじゃがいもの上に、トッピングとしてサワークリームを載せ、粗挽き黒コショウを振りかけたらできあがりです。
煮ても焼いてもおいしいじゃがいもを栄養補給に役立てましょう
じゃがいもは栄養価が高いだけでなく、さまざまな料理に活用できる食材です。品種により性質が異なっているので、煮物や焼き物、揚げ物など料理によって使い分けるとよいでしょう。
今回の記事を参考に、身近なじゃがいもに含まれる栄養素を知って、日々の健康管理にお役立てください。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医