ストレスで過呼吸(過換気症候群)が起きるのはなぜ?
過呼吸が起きた際の対処法についても解説

「急に空気が吸えなくなって、吸おうと頑張ってもうまく呼吸できない」
「呼吸が荒くなって手足がしびれる感じになる」

このような症状は過呼吸(過換気症候群)かもしれません。過呼吸は直接命に関わることはありませんが、全身につらい症状が現れます。

過呼吸はストレスが原因で起こりやすく、対処法を誤ると悪循環に陥って症状の改善までに時間がかかってしまいます。

今回の記事では、ストレスで過呼吸が起こるメカニズムと、過呼吸が起きた際の対処法を解説します。

1.過呼吸(過換気症候群)とは?

過呼吸はストレスなどによって引き起こされ、誰にでも起こる可能性がある症状です。ここでは、過呼吸の発作時に生じるおもな症状と、どのような人に起こりやすいかを紹介します。

1-1.過呼吸について

過呼吸は、過換気症候群とも呼ばれ、ストレスなどによって呼吸過多となり、全身にさまざまな症状が起こる状態です。速く浅い呼吸で空気を吸い込みすぎることで、血液中の二酸化炭素が不足し、体にさまざまな異変が生じます。

過呼吸は性別・年齢を問わずに起こるものの、比較的若い女性に多くみられる傾向があります。特に、真面目で心配性な性格の人に多いとされています。発作が起こりやすいのは、不安や恐怖、怒りなどのつらい感情があふれたり、気持ちを我慢したりするときです。

1-2.おもな症状

過呼吸になると、次のような症状が現れます。

  • ・呼吸がしにくくなる

  • ・頭痛、めまい

  • ・指先や口周辺のしびれ

  • ・冷や汗

  • ・吐き気

  • ・呼吸困難

  • ・失神

呼吸をしているにも関わらずうまく空気を吸い込めないと感じるため、本人は命の危機を感じることがあります。「もっと空気を吸い込まなければ」と焦るほど、さらに過呼吸を引き起こすという悪循環に陥りがちです。過呼吸は苦しい症状ですが、命に直接関わることはないため、症状が現れても落ち着いて対処することが大切です。

2.ストレスで過呼吸が起きる理由

通常、人間は意識して呼吸することはほとんどありません。これは、脳にある呼吸中枢の働きで、無意識でも呼吸し続けることができるからです。しかし、ストレスなどにより心が不安定になると、自律神経や呼吸中枢に影響が現れます。その結果、早く浅い呼吸となり息苦しさを感じます。

過呼吸になって体内の二酸化炭素が不足すると、血管が収縮し、血液がアルカリ性に偏り、カルシウムイオンが減少します。その結果、めまいやしびれ、吐き気を生じてさらに不安感に襲われると、自律神経のバランスが崩れ、ますます呼吸が激しくなるのです。

ストレス以外にも、肉体的な疲労や睡眠不足が原因で過呼吸の発作が起こることがあります。また、病気で過呼吸をきたすケースもあるため、初めて過呼吸症状が現れたときは医師に相談しましょう。

3.過呼吸が起きた際の対処法

ここからは過呼吸が起きた際の対処法を紹介します。

過呼吸が起きたと思ったら、まずは落ち着きましょう。過呼吸の発作はとても苦しいものですが、時間の経過によって発作は必ず落ち着きます。あわてないで安静にすることが大切です。激しい呼吸が落ち着けば、血液もアルカリ性から正常(中性)に戻り症状も治まります。

また、過呼吸を起こした人を見かけたときに、騒いだり心配しすぎたりするのは避けましょう。本人がさらに不安に感じ、過呼吸の症状を悪化させてしまうおそれがあります。周囲の人が落ち着いて話しかけたり、背中を優しくさすってあげたり、一緒に呼吸のリズムを整えてあげたりするとよいでしょう。呼吸リズムを整える際は、息を吸うことよりもゆっくりと吐くことを意識するように伝えましょう。

なお、昔は紙袋を利用した対処法(袋に口をあてて袋の中で呼吸する)が行なわれていましたが、窒息のおそれから現在は推奨されていません。過呼吸が起きたら、落ち着いて正しく対処しましょう。

過呼吸予防のためにストレスへの対策が大切

過呼吸になると、息を吸おうと思ってもうまく吸えなくなり、本人は大きな不安と恐怖を感じます。過呼吸の発作が起こったときは、本人も周りもあわてずに対処しましょう。

過呼吸は、ストレスが原因で起こることが多い症状です。

発作が落ち着いたあとは、日常生活のなかで心や体に負担になることがなかったか、じっくりと見直してみましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。