1.鉄分の摂取量の基準
鉄分は、健康増進法に沿って、一日に推奨される摂取量が定められています。
一日に必要な鉄分の摂取量は、体内の鉄分の蓄積量や血液量などに差があることから、年代や性別などによって異なるのが特徴です。特に女性は月経の有無によって、同じ年代でも必要な量が異なります。
それぞれの年代や性別における、一日の鉄分の推奨量を以下にまとめました。
年齢 |
男性 |
女性(月経なし) |
女性(月経あり) |
18~29歳 |
7.5mg |
6.5mg |
10.5mg |
30~49歳 |
7.5mg |
6.5mg |
10.5mg |
50~64歳 |
7.5mg |
6.5mg |
11.0mg |
65~74歳 |
7.5mg |
6.0mg |
- |
75歳~ |
7.0mg |
6.0mg |
- |
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
※参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
月経のある女性は、経血によって失った鉄分を補う必要があるため、推奨される鉄分の摂取量が多くなっています。
そして、妊娠中や授乳中の女性は、上表の推奨量よりもさらに多くの鉄分が必要になります。例えば、妊娠初期と授乳中の方は、推奨量に2.5mg追加した量が目安です。妊娠中期や後期になるとさらに鉄分が必要となり、プラス9.5mgした量の鉄分を摂るように推奨されています。
このように性別や年齢、体の状態によって推奨される鉄分の摂取量は異なるため、上表を参考に、自分にはどれぐらいの鉄分が必要なのかを把握するとよいでしょう。
2.日本人の鉄分摂取状況
一日に推奨される鉄分量と比較して、実際に日本人はどの程度摂取できているのでしょうか。
「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、男性における鉄分摂取量の平均値は20~29歳で7.4mg、30~39歳になると7.2mgという結果になりました。女性の場合は、20~29歳では6.2mg、30~39歳では6.4mgです。
前述の推奨量を見ると、男性は18~49歳で7.5mg、月経のない女性は18~49歳で6.5mgとなるため、男女ともに若い世代では鉄分がやや足りないことがわかります。
3.鉄分を摂るときのポイント
鉄分は、もともと吸収しにくい栄養素です。しかし、摂取方法を工夫すれば、体内へ取り込みやすくすることは可能です。
ここでは、鉄分を効率良く摂取するときに意識したいポイントを紹介します。
3-1.鉄分の吸収率を高める摂取方法
鉄分の吸収率を高めるには、次の栄養素と一緒に摂取することが大切です。
また、鉄分は肉や魚介類に多く含まれるヘム鉄と、野菜や海藻類に多く含まれる非ヘム鉄の2種類に分けられます。どちらも体内への吸収率は低いものの、ヘム鉄のほうが比較的吸収しやすい性質を持っています。
吸収率が比較的高いヘム鉄を非ヘム鉄とともに摂取することでも、非ヘム鉄の吸収率を上げることが可能です。
3-2.鉄分の吸収率を妨げる原因
一緒に摂取することで、鉄分の吸収を妨げる食品もあります。そのため、鉄分を意識的に摂りたいときは、以下の食品に注意しましょう。
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・米ぬかに含まれるフィチン酸
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・ホウレンソウに含まれるシュウ酸
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・茶類に含まれるタンニン
一日分の鉄分摂取量を意識し日々を元気に過ごしましょう
鉄分は、酸素を運ぶ赤血球に多く含まれているため、不足すると赤血球の機能が落ちて体内に十分な酸素が届きません。そうなると、体のだるさや頭痛、集中力の欠如などを引き起こす、鉄欠乏性貧血になります。
現在の日本において鉄分は不足しやすく、特に若い世代では摂取推奨量を下回っている状態です。
鉄分を効率良く体内に取り込むには、タンパク質・ビタミンC・アミノ酸などと合わせて摂ることが大切です。普段の食事にも積極的に鉄分を取り入れて、明るく元気な毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。