胸の付け根が痛い理由は何?
症状別に考えられる原因を紹介

「胸の付け根がチクッと痛む」
「生理が近づくと胸が張って痛い」

胸の付け根に痛みを感じるとき、その原因は乳腺以外にもあることが多いと言われています。症状が現れたときには受診が勧められますが、なかには治療と並行してセルフケアで痛みを和らげることのできることもあります。

今回の記事では、胸の付け根に痛みを感じる原因、自分でもできるセルフケア方法を紹介します。

1.どのようなときに胸の付け根が痛くなるのか

胸の付け根に痛みを感じるときは、おもに次のような原因が考えられます。

  • ・神経や筋肉に関係する痛み

  • ・骨に関係する痛み

  • ・乳腺に関係する痛み

  • ・心臓、肺、胸膜など内臓が原因となっている痛み

ある病院を受診した患者のうち、痛みの原因が乳腺と関係がない人の割合はおよそ7割です。なかには、月経前症候群の症状の一つとして、胸の痛みを感じる人もいます。

胸の付け根に痛みを感じた場合は、我慢せず検査をすることが大切です。痛みの原因が判明して安心することで、痛みそのものが軽くなる方も少なくありません。

2.症状別に考えられる原因

症状が出ている部位によって、痛みの原因をある程度推測できます。ご自身の症状と照らし合わせながら参考にしてください。ただし、ここで紹介するのは一例です。

継続して症状を感じる場合は、自己判断せずに病院を受診しましょう。

2-1.わきの下や胸の外側の痛み

わきの下や胸の外側は、多くの方が胸の痛みを訴える部位です。「わき下から胸の外側にかけて痛む」「ふとした瞬間に刺すような痛みを感じる」「腕を動かしたり、上半身をひねったりすると痛む」という方は、肩こりが原因となっているケースが多くみられます。昨今、デスクワークの方が増えたことも関係していると考えられています。

肩こりの影響で、肋間(肋骨の間)の筋肉が緊張すると痛みを生じます。また、緊張した肋間の筋肉が肋間神経(肋骨の間に存在する神経)の付け根を圧迫して痛みを引き起こすこともあります。その結果、わきの下や胸の外側の痛みとして現れるのです。

肩こり以外の原因としては、サイズが合わない下着を着用することで片側だけ痛みが出たり、過去に負ったケガの後遺症だったりするケースもあります。

このような痛みには、筋肉の緊張をほぐすのが有効です。ストレッチや半身浴などで凝り固まった筋肉をほぐしてください。下着のサイズ確認や、体への負担が大きい運動をしていないかなども見直してみましょう。

2-2.肋骨と軟骨の継ぎ目の痛み

内側の肋骨と軟骨の境目も、多くの方が痛みを感じる部位です。40歳を超えた女性では軟骨が弾力性を失うことで、肋骨と軟骨の結合部に負担がかかって痛みを生じることがあります。

40歳くらいの女性で第2、3肋骨の境目に急に強い痛みが出る場合、病院から痛み止めの塗り薬や飲み薬などが処方されます。症状がある場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。

2-3.月経周期に同調する痛み

月経周期に沿って症状に変化がみられる場合は、乳腺症の可能性があります。

乳腺症とは特定の病気の名前ではなく、女性ホルモンバランスの変化が引き起こす乳腺へのさまざまな変化や病変の総称です。乳腺症では、痛みやしこりといった症状が月経周期に合わせて起こります。

症状は月経が始まる前に強くなり、月経が終わるとやわらぎます。30~50代の女性でおもに報告されていますが、多くの場合、自覚症状は閉経後に自然に軽減していきます。

その他、比較的若い女性にもみられる原因として挙げられるのが、月経前症候群(PMS:Premenstrual syndrome)です。月経前症候群は、月経開始3~10日前からさまざまな心身の不快症状が始まります。月経が始まると症状は、すっかりなくなるのが特徴です。

女性ホルモンの影響でふくらんだ乳腺が神経を刺激することで、乳房の痛みや張り、しこりを引き起こすとされています。なかには、しこりはなく痛みだけを感じる人もいます。その他、おなかの張りや肩こり、頭痛、むくみ、便秘、体重増加などの身体的な症状や、イライラ感、無気力、集中力低下といった精神的な症状など、人によって現れる症状はさまざまです。

これらの症状は排卵後の女性ホルモンの変化に、体が過剰に反応して引き起こされると考えられています。ストレスも症状悪化に関わっていると考えられるため、ストレスを溜めすぎず、自分に合ったリラックス方法を試してみましょう。

胸の付け根が痛いと感じるときは我慢せずに相談しましょう

胸の付け根が痛むと、不安を感じる方もいるでしょう。しかし、乳腺以外に痛みの原因があることも少なくありません。検査・診察を受けて原因がわかれば、やみくもに感じていた不安をやわらげることにもつながります。

胸の痛みで不安を感じる場合は、まずは医師に相談してみましょう。受診の際には、どのようなタイミングや周期でどのような痛みが現れたのかを伝えると、診断の役に立ちます。

痛みについてあらかじめまとめておき、診察の際に伝えるとよいでしょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。