造血作用のある「葉酸」は貧血予防に効果的な栄養素
葉酸を含む食品を紹介

葉酸は血液と深い関連のある栄養素であり、ビタミンB群の一つです。葉酸が体内で足りなくなると、赤血球の生成に支障が出て貧血の原因となります。

この記事では、貧血予防に効果があるとされている葉酸の働きや葉酸を含む食品について紹介します。

1.葉酸は貧血予防に効果的な栄養素

ここでは、貧血予防に効果的な葉酸の特徴や働きについて解説します。

1-1.葉酸とは?

葉酸とは、水溶性ビタミンのビタミンB群に属する栄養素です。プテロイルモノグルタミン酸という物質であり、自然界では稀にしか存在しません。そのため、健康食品や葉酸を強化した食品などで摂取するケースがほとんどです。

しかし、プテロイルモノグルタミン酸には構造の異なるものが複数あり、食品中に含まれているものもあります。食品中に含まれている葉酸の多くは、ポリグルタミン酸型のN5-メチルテトラヒドロ葉酸と呼ばれるものです。

このように、食品に存在する葉酸は「食事性葉酸」と総称されています。黄色結晶であり、光や熱に弱いのが特徴です。

1-2.葉酸の働き

食品に含まれているポリグルタミン酸型の葉酸は、調理や消化の影響によって、モノグルタミン酸型へ変わり、小腸で吸収されます。しかし、細胞の中に取り込まれると、ポリグルタミン酸型へ再度変換され、補酵素として働くのが特徴です。

葉酸は別名「造血のビタミン」とも呼ばれ、ビタミンB12と連携し、赤血球の生成をサポートします。葉酸が足りなくなるとビタミンB12不足と同じく、悪性貧血とも呼ばれる赤血球のサイズが大きくなる貧血になります。さらに葉酸は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)といった核酸やタンパク質の合成を促す作用があり、正常な代謝のために必要です。

細胞分裂に関連しているため、胎児の健康的な生育には欠かせません。胎児の先天的な健康リスクを避けるためにも、妊娠している方は十分な量の葉酸を摂取するとよいでしょう。

2.葉酸の摂取量の目安について

葉酸には、一日に推奨される目安量と上限量が定められています。葉酸の基準摂取量を知り、適切な量を摂りましょう。

2-1.葉酸の一日の摂取基準量

葉酸の一日の摂取基準量は、年齢によって異なります。例えば、18歳以上の方は男女とも240μg、妊娠中の方は追加で240μgが目安です。年齢や性別ごとの葉酸の一日に摂取基準量は、次のとおりに定められています。

葉酸の食事摂取基準(μg/日)

性別 男性 女性
年齢等 推奨量 目安量 推奨量 目安量
0~5カ月 40 40
6~11カ月 60 60
1~2歳 90 90
3~5歳 110 110
6~7歳 140 140
8~9歳 160 160
10~11歳 190 190
12~14歳 240 240
15~17歳 240 240
18~29歳 240 240
30~49歳 240 240
50~64歳 240 240
65~74歳 240 240
75歳以上 240 240
妊婦(付加量) +240
授乳婦(付加量) +100

※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-1.葉酸の一日の耐容上限量

葉酸は、男女によって差はないものの、1歳以上から一日に摂取する上限量が設定されています。年齢によって上限量が異なるため、葉酸を摂取する場合は次の表を参考にしてみましょう。

葉酸の食事摂取上限量(μg/日)

年齢等 上限量
1~2歳 200
3~5歳 300
6~7歳 400
8~9歳 500
10~11歳 700
12~14歳 900
15~17歳 900
18~29歳 900
30~49歳 1,000
50~64歳 1,000
65~74歳 900
75歳以上 900
妊婦(付加量)
授乳婦(付加量)

※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

普段の食生活であれば、葉酸を摂り過ぎて健康を損ねることはありません。しかし、食事ではないものによってプテロイルモノグルタミン酸型の葉酸を摂り過ぎた場合は、ビタミンB12不足が原因で起こる大赤血球性貧血がわかりにくくなるといった、健康被害が報告されています。

3.葉酸を含む食品

葉酸を多く含む食品には、藻類・肉類・野菜類・し好飲料類・卵類・乳類・豆類などがあります。ここでは、日常生活で摂取しやすい葉酸を含む食品を紹介します。

【可食部100g当たりの葉酸含有量】

食品名 可食部100g当たりの葉酸含有量
焼きのり 1,900μg
乾燥わかめ 440μg
あおのり 270μg
ブロッコリー 220μg
パセリ 220μg

参照:文部科学省「食品成分データベース

ブロッコリーは、葉酸のほか、カリウムやビタミンK、ビタミンC、β-カロテンなどの生活習慣病の予防に効果的な栄養素を豊富に含んでいます。

葉酸で貧血予防をしましょう

葉酸には、赤血球の生成サポートやDNAの合成などの働きがあります。「造血のビタミン」ともいわれるほど、葉酸は血液を作るために重要な存在です。そのため、葉酸不足に陥ると赤血球の生成に影響をきたし、赤血球のサイズが大きくなる貧血の原因となります。

そこで、貧血予防のために普段の食事から葉酸を摂取しましょう。食事以外から葉酸を摂る場合は、上限量を守って摂取することが大切です。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医