1.顎関節症とは
顎関節症とは、あごの関節とその周辺の筋肉(咀嚼筋)の病気です。日本顎関節学会では、病態によって以下の4つの型に分類しています。
【顎関節症の症例分類】
顎関節症は、4つの病態を細分化すると数十種類にもなります。それらの病態をひとくくりにして、顎関節症と呼ばれているのです。
顎関節症は、世界に共通する定義はなく、各国または日本のなかであっても、顎関節症の定義が異なる場合があります。また、顎関節症とひと口にいっても、違う病態を指していることがあるため、注意が必要です。
2.顎関節症のおもな症状
顎関節症では、おもに以下のような症状が見られます。
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、顎関節症が疑われます。まれにMRIやCT検査によって、診断することもあります。
顎関節症の患者は年々増加しており、歯医者に行く原因として、顎関節症が一番多くなるといわれています。初期は、軽い症状であっても、重症化すると頭や首にまで症状が現れることがあります。あごの関節周辺に違和感がある場合は、歯科や口腔外科に受診しましょう。
3.顎関節症の原因
顎関節症の原因は明らかになっていません。さまざまな原因が絡みあって、症状として現れることが多く、原因を一つに絞るのは難しいとされています。
一般的に挙げられる原因は、以下のとおりです。
また、強く噛みしめていなくても、上の歯と下の歯が触れている状態が長時間続くとあごや筋肉に負担がかかり、害をおよぼす可能性があります。
「スマートフォンやパソコンの長時間の使用」は、上下の歯が合わさり噛みしめやすくなるため、要注意です。
ほおづえやうつ伏せ寝といった習慣もあごに負担をかけ、顎関節症の原因になりやすいため、気を付けましょう。
4.顎関節症は自分で治せる?
顎関節症を治すには、「嚙み合わせを治すこと」が最も有効とされています。嚙み合わせを治す治療例としては、マウスピースのようなものを上あごや下あごに装着し、噛み合わせが上下均等に接するようにします。あごの関節が適切な位置に戻ると、筋肉の緊張が緩み、口の開閉がスムーズにできるようになるでしょう。
症状を悪化させないためには、以下の点に気を付けて生活することが大切です。
【顎関節症や症状を悪化させないための生活習慣】
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・やわらかい食事にする(おかゆ・やわらかく煮たうどん・そば・パスタなど)
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・硬い食べ物は避ける(硬い肉、ガム、フランスパンの皮)
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・上下の歯が噛み合わさっている場合は、離すように心がける
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・大口を開けない(あくび、長時間の歯の治療)
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・仰向けに寝る(うつ伏せ寝はしない)
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・低い枕を使用する
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・長時間同じ姿勢を続けないで、時々ストレッチをする
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・あごを突き出すような姿勢や猫背は避ける
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・ほおづえをつかない
また、口がスムーズに開閉できないときには、関節の動きを良くするために以下の方法で開口訓練を行なうとよいでしょう。あご付近の筋肉に痛みがある場合は、筋肉をほぐす効果が期待できます。
【開口訓練のやり方】
これを1回につき10回ほど、一日数回行なうのがおすすめです。
ポイントは、指の力で圧力をかけるようにすることです。強い痛みを感じない力加減で行ないましょう。
顎関節症が重症化する前に歯科に受診をして適切なケアを
顎関節症は、あごの関節やその周辺の筋肉の病気で、病態は数十種類もあります。世界に統一する顎関節症の定義はなく、日本国内においてもそれぞれ異なる定義が採用されています。そのため、ひと言に顎関節症といっても、医療機関によっては違う病態を指している可能性があることを覚えておきましょう。
顎関節症の原因は一つに絞ることは難しいですが、ストレス、食いしばりなどが一因だといわれています。
近年、顎関節症の患者は増え続け、第一の歯科の病気になりえるともいわれているため、原因を排除する工夫やセルフケア方法を実践して、正しく対処していきましょう。症状を放っておくと重症化するおそれがあります。あごの関節付近に違和感がある場合は、歯科や口腔外科に受診することをおすすめします。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医