「明日葉(あしたば)」に含まれている栄養素とは?基本について解説

明日葉は、日本を原産地とするセリ科の大型多年草です。ビタミンやミネラルといった豊富な栄養素を含み、生活習慣が気になる方におすすめの健康野菜として注目されています。

根・茎・葉にポリフェノールの一種であるカルコンを含んでいるのが特徴です。今回は、明日葉の栄養成分や産地ごとの特徴、他の野菜と比べて優れている点などをご紹介していきます。

1.明日葉とは

明日葉は温暖な気候を好み、海沿いの草原などに自生する日本原産のセリ科の植物です。八丈草や明日穂と呼ばれることもあり、関東以南の地域で多く栽培されています。「今日葉を積んでも明日には新芽がでる」という名前の由来通り、生命力にあふれた野菜です。

明日葉を葉のまま食べる場合は、ほどよい苦味でクセがあるので、胡麻和えやおひたし、天ぷらにするのがおすすめです。

1-1.明日葉(あしたば)の主な産地

八丈島

八丈島の明日葉は根葉の柄が緑色で、茎が太く背丈は2mほど伸びるのが特徴です。島ごとに形状や成分が多少異なり、八丈島産の明日葉はその茎の色から青茎とも呼ばれます。

伊豆大島

八丈島の青茎に対して、赤茎と呼ばれているのが伊豆大島の明日葉です。背丈は1mほどで、茎に赤みがあり下方で数本に分岐しています。

屋久島(鹿児島県)

屋久島は、温暖なイメージをお持ちの方も多いでしょう。実際は雨量が多く、年によっては冬に積雪があるほど寒暖の差が激しいのが特徴です。厳しい気候に順応してきた明日葉は八丈島産と同じ青茎系の形状となり、収穫時には2 mほどまで伸びます。

2.明日葉に含まれる栄養成分(働き)

明日葉の葉や茎を切るとにじみ出てくる黄色い液体はカルコンという物質で、明日葉に含まれる栄養成分のひとつです。カルコンには健康維持に寄与するさまざまな効果が確認されています。
このカルコンが明日葉の苦味成分のように思われますが、独特な苦味はセリ科植物の常成分であるクマリンの特性によるものと考えられています。
他にも、明日葉はビタミンやミネラルなどの多彩な栄養素を持っています。特にビタミンEは、ほうれん草やトマトなどの野菜よりも多く含んでいるのです。

2-1.他の野菜との比較

明日葉と栄養素を多く含む他の野菜の可食部100gあたりを比較すると以下のようになります。

食品名 食物繊維 (単位:g) カルシウム (単位:mg) リン (単位:mg) (単位:mg) ナトリウム (単位:mg) カリウム (単位:mg) β-カロテン (単位:μg) ビタミンB1 (単位:mg) ビタミンB2 (単位:mg) ビタミンC (単位:mg)
明日葉(茎葉、生) 5.6 65 65 1.0 60 540 5,300 0.10 0.24 41
いんげん 2.4 48 41 0.7 1 260 660 0.06 0.11 8
かぼちゃ 2.8 20 42 0.5 1 400 749 0.07 0.06 16
キャベツ 1.8 43 27 0.3 5 200 49 0.04 0.03 41
キュウリ 1.1 26 36 0.3 1 200 331 0.03 0.03 14
春菊 3.2 120 44 1.7 73 460 4,500 0.10 0.16 19
セロリ 1.5 39 39 0.2 28 410 44 0.03 0.03 7
大根 1.4 24 18 0.2 19 230 0 0.02 0.01 12
玉ねぎ 1.6 21 33 0.2 2 150 1 0.03 0.01 8
トマト 1.0 7 26 0.2 3 210 544 0.05 0.02 15
にら 2.7 48 31 0.7 1 510 3,500 0.06 0.13 19
にんじん 2.8 28 26 0.2 28 300 10,200 0.07 0.06 6
ねぎ 2.5 36 27 0.3 Tr 200 82 0.05 0.04 14
ほうれん草 2.8 49 47 2.0 16 690 4,200 0.11 0.20 35

(文部科学省「七訂日本食品標準成分表2015年版」を元に作成)

明日葉と他の13種類の野菜を比べてみると、明日葉は食物繊維、リン、ビタミンB2、ビタミンCの含有量が多いことが分かりました。また、カルシウム、カリウム、ナトリウム、β-カロテン、鉄分も他の野菜に含有量は劣りません。明日葉は、ある成分は豊富でも別の成分はほとんど含まれていないなどといった偏った栄養構成ではなく、バランス良く栄養成分が含まれているのです。

さらに食物繊維に注目してみますと、100gあたり5.6gとなり、セロリの約3.7倍、かぼちゃの約2倍となります。食物繊維は、厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、18~64歳の男性が摂取するべき1日あたりの食物繊維の目標量は21g以上、女性は18g以上とされています。しかし、平均摂取量は14g前後と20gを超えていた1950年頃から減少傾向にあり、積極的に摂取したい食品成分のひとつです。

また、明日葉にはリンも豊富に含みますが、これはミネラルの一種です。リンは肉や魚、豆腐といった食品にも多く含まれていますが、摂りすぎるとカルシウムの吸収を阻害するため、リンの割合が非常に高い肉類やインスタント食品に偏った食事は避けましょう。明日葉はカルシウムとリンの割合が同じで、バランス良く栄養を摂れるのがポイントです。

明日葉でバランス良く栄養を摂ろう

今回は、健康的な野菜として注目されている明日葉の特徴や栄養についてご紹介しました。明日葉には食物繊維やビタミン類などの栄養素が豊富に含まれていますので、野菜の摂取量が少ない方は、ぜひ明日葉をぜひ取り入れてみてください。

監修者情報

河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。