ダイエット情報館

ダイエットのための「カラダ」と「栄養学」基礎 賢くやせ、気持ちよく生きるための「大人の食育」

肥満の成因 ~なぜ肥満になるのか~

太るしくみ

ところで、人はなぜ「肥満」になるのでしょうか。ここであらためて、その背景としくみを確認しておきましょう。

私たちが生きていくためには、熱や力のもと=「エネルギー」が必要です。先にお話したように、脂肪(中性脂肪)はたいへん優秀なエネルギー源であるために、何日も獲物の獲れない飢餓状態に備えて、人のカラダは脂肪をたくわえておく仕組みを備えるようになりました。また、食事でとった糖分(炭水化物)も、脂肪に合成し直してたくわえれば、それだけ効率のよい燃料として保存することができます。

現代(日本)に生きる私たちは毎日食事をしますが、食べ物からとった糖分や脂肪(エネルギー源)は、その日一日呼吸をしたり、体温を保ったり、脳や内臓を動かしたり、歩いたり仕事をしたりするエネルギーに変わり、使われます。食べ物からとったエネルギー【摂取エネルギー】と、生きるため、活動するために使ったエネルギー【消費エネルギー】の収支が合っていれば、人は太ることもやせることもありません。しかし、その日食べた分を、生きるためのエネルギーや活動するエネルギーとして使いきれなかった場合は、獲物が獲れないかもしれない明日に備えて、余ったエネルギーを体脂肪としてためこむことになります。

しかし現代(日本)に、「獲物の獲れない明日」はやってきません。それでも脂肪や糖分を好む体質は変わらないので、トロや霜降りほど高いお値段が付き、さらに食物を加工して食べる技術も身につけ、生クリーム、アイスクリーム、マヨネーズ・・・といった美味しいものが身のまわりに溢れるようになりました。上の図で言えば、【摂取エネルギー】が確実に増えたわけです。一方で、車社会が発達し、肉体労働は減少し、電化製品が発達して家事もずいぶん楽になりました。活動のエネルギーがあまり要らないので、【消費エネルギー】は減るいっぽうです。日々少しずつ余りたくわえられた脂肪は、使われる機会を失い、カラダにどんどんたまっていきます。これが「太る」という現象です。

ページトップへ

「体質」

よく「水を飲んでも太る体質です」という人がいますが、上に述べたように、「太る」とは余ったエネルギーを脂肪としてためこむことです。水はエネルギーにはなりませんので、エネルギーの収支に影響を与えません。したがって、"水を飲んで太る"ということはありえません。

実際、「太りやすい体質」「太りにくい体質」というのはあるのでしょうか?「太る」というのは上の図のようなエネルギー収支に基づいていますから、「【摂取エネルギー】-【消費エネルギー】」が蓄積されるのは、どんな人でも共通です。体質によらず皆同じメカニズムです。

しかし、「脂肪をどのくらいまでためられるか(限度)」ということに関しては、多少の個人差があるようです。つまり、ある一定量脂肪がたまると、それ以上はためたくてもためられない、という人もいるわけです。このような人は、体質的に「太りにくい」と言えるでしょう。また、基礎代謝(後述)が落ちてしまっている人は【消費エネルギー】が小さくなるので、同じものを食べていても人より太りやすい、ということはあるかもしれません。

いずれにしても、【摂取エネルギー】と【消費エネルギー】が同じであれば太ることはありません。これはどんな体質の人でも同じです。脂肪をためこむ能力のある人が【摂取エネルギー】をとりすぎてはじめて「太る」のです。

遺伝の影響

肥満の一因として、遺伝の影響がたしかに関わっていることは否定できません。「体脂肪をどこまでためこめるか」といった体質も遺伝によるでしょうし、満腹中枢がうまくはたらかなかったり、代謝がうまく行われないような、遺伝子上の問題を抱えている場合もあります。

しかし、一見「遺伝かな?」と思われるような場合でも、よく検証してみると、実は体脂肪をためこむ能力も人並み、遺伝子にも問題はなかった、という例はよくあります。そういう家庭では、たとえば飼い犬も太っていたりして、肥満の原因は「食べすぎ(たくさん食べる/油もの・甘いものが好きetc…)」や「運動不足(生活スタイル/行動パターン/スポーツの習慣etc…)」など、日々の食習慣や生活環境よることも多いのです。とくに子どもは、食事の内容や運動の習慣など、ライフスタイル全般にわたって両親からきわめて大きな影響を受けています。家族みんなが太っているからといって、すぐに「遺伝」で片付けてしまうのは、少々安易な判断かもしれません。

逆に、BMIが25以上であるのに、きちんとしたダイエットを行ってもまったく成果が上がらない人は、一度専門医を訪れ、原因を調べてみることをおすすめします。

ページトップへ

運動不足

運動不足は現代の肥満の大きな要因と考えられますが、フィットネスクラブやスポーツクラブはむしろ増加の一途です* 。私たちが運動不足になっているのは、スポーツをする機会の減少ではなく、車や電車、エレベーター、OA機器、家電製品、リモコン・・・等など、便利な社会が発達して、カラダのエネルギーを使うかわりにガソリンや電気のエネルギーを使うようになってきたことによるものです。

*2005 レジャー産業白書

運動不足になると【消費エネルギー】が少なくなるのはもちろんですが、デメリットはそれだけではありません。全身の筋肉が落ちるので基礎代謝*が落ち、【消費エネルギー】はますます小さくなります。また、インスリンというホルモンのはたらきが鈍くなることが知られています。インスリンはおもに食後の血糖値を下げるはたらきをしていますが、もう一つ、中性脂肪を合成し蓄積するはたらきも担っています。運動不足になると、インスリンを感知する細胞のアンテナの感度が鈍くなるので、血糖値を正常に保つためには、よりたくさんのインスリンを分泌しなければなりません。すると脂肪を蓄積するはたらきも高まってしまい、カラダは脂肪をためこみやすい状態になってしまうのです。先に述べたような「もともと脂肪を多くためこめない体質の人」も、このような状態が続けば、脂肪をためこみやすい方向に代謝状態が変化してしまうことは十分にありえます。外で遊ぶ子より塾で勉強している子のほうが太りやすいのもこのためです。頭をフル回転してエネルギーを消費していても、運動不足をカバーすることはなかなかできないのです。

*基礎代謝・・・生きていくために(呼吸・心拍・体温維持など)必要な最小のエネルギー量。一日中眠っていたと仮定した場合のエネルギー消費量に等しい。

ページトップへ