必須アミノ酸の働きとは?
含有量が多い食品と効果的な摂取方法

人間が生きていくうえで、必ず摂取しなければいけない栄養素に、必須アミノ酸があります。必須アミノ酸を摂るには、食事でタンパク質を摂る必要がありますが、タンパク質であれば何でも良いわけではありません。

偏った食材だけを食べ続けていると、摂取する必須アミノ酸のバランスが崩れて筋力や免疫力の低下につながるおそれがあります。

今回の記事では、必須アミノ酸の種類と各アミノ酸を多く含む食品、必須アミノ酸を効率良く摂るための食事のポイントを紹介します。

1.アミノ酸の働きと必須・非必須の分類

アミノ酸とは、タンパク質を構成する有機化合物です。アミノ酸は20種類存在し、組み合わせや量によって、筋肉・酵素・免疫物質・ホルモンなど異なる特徴を持ったタンパク質が合成されます。

20種類のアミノ酸のうち、9種類が必須アミノ酸、11種類が非必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸とは人間が体内で作ることができない、もしくは十分に作ることができないアミノ酸です。

そのため、必須アミノ酸は食品から摂取する必要があります。一方で、非必須アミノ酸は体内の糖質や脂質からも作れるため、食事から摂る必要はありません。

なお、必須アミノ酸の種類は以下のとおりです。

  • ・バリン

  • ・ロイシン

  • ・イソロイシン

  • ・メチオニン

  • ・スレオニン

  • ・フェニルアラニン

  • ・トリプトファン

  • ・リジン

  • ・ヒスチジン

2.必須アミノ酸を多く含む食品とは?

必須アミノ酸には9種類がありますが、健康を維持するためにはすべての必須アミノ酸をバランス良く摂る必要があります。必須アミノ酸を効率良く摂れる食品を見ていきましょう。

2-1.良質なタンパク質を含む動物性食品

良質なタンパク質とは、必須アミノ酸がバランス良く含まれているタンパク質のことです。良質なタンパク質を含む食品には肉・卵・魚・乳製品・大豆製品などが挙げられます。

良質なタンパク質が多く含まれている食品は、次のとおりです。

必須アミノ酸 食品名
バリン 鶏むね肉、牛乳、チーズなど
ロイシン 卵、牛乳、チーズなど
イソロイシン 鶏むね肉、卵、牛乳など
メチオニン 牛もも肉、鶏むね肉、チーズなど
スレオニン 鶏むね肉、豚ヒレ肉、チーズなど
フェニルアラニン 豚ヒレ肉、卵、チーズなど
トリプトファン 鶏むね肉、卵、チーズなど
リジン 豚もも肉、卵、チーズなど
ヒスチジン 鶏むね肉、チーズ、マグロなど

1種類でも必須アミノ酸が足りないと、体内でタンパク質を効率良く産生できなくなります。タンパク質が不足すると筋肉量を保てなくなるほか、免疫力低下にもつながりかねません。つまり、必須アミノ酸をまんべんなく摂取して健康な体を保つためには、さまざまな食材を組み合わせることが大切だということです。

また、アミノ酸の含有バランスの指標をアミノ酸スコアと呼び、この数値が高いほど質の良いタンパク質とされます。良質なタンパク質は必須アミノ酸のバランスが良く、アミノ酸スコアは高い値を示します。

例えば、卵は良質なタンパク質を含む食品の一つですが、アミノ酸スコアは100と理想的な数値です。アミノ酸スコアを目安に、食材選びを意識してみましょう。

2-2.大豆、米、小麦などの植物性食品

大豆や米、小麦といった植物性食品にも、必須アミノ酸は含まれています。ただし、玄米・精白米・パンは、いずれもアミノ酸スコアが100以下です。米や小麦では、必須アミノ酸のうちリジンの含有量が必要な水準に達していません。

このように、アミノ酸スコアが低い食品の場合は、不足している必須アミノ酸を補うために他の食品と組み合わせる必要があります。米や小麦の場合は、動物性タンパク質や大豆といった、リジンを多く含むタンパク質と一緒に摂るのがポイントです。

2-3.分岐鎖アミノ酸を含む食品

筋肉量を保ち、増やしたいと考える人は、筋タンパクのおもな構成成分である分岐鎖アミノ酸を意識して摂取しましょう。分岐鎖アミノ酸は「Branched chain amino acid」の科した文字を取って「BCAA」とも呼ばれ、バリン・ロイシン・イソロイシンの3つを指します。

分岐鎖アミノ酸が多い食品は、次のとおりです。

  • ・まぐろ

  • ・かつお

  • ・あじ

  • ・鶏肉

  • ・牛肉

  • ・卵 など

2-4.黒酢

必須アミノ酸は、肉・魚・卵などの動物性タンパク質以外に黒酢にも含まれています。黒酢は9種類すべての必須アミノ酸のほか、クエン酸も含む健康に良い食品です。

黒酢は、通常の酢に比べてもアミノ酸が豊富です。これは、米の精米歩合の高さ、発酵と熟成の長さ、そして一般の米酢のおよそ5倍の量の米を使用して作られていることが関わっていると考えられています。

3.食事で必須アミノ酸を効果的に摂取するポイント

毎日の食生活で必須アミノ酸を効率良く摂取するには、良質なタンパク質である肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などを組み合わせるとよいでしょう。しかし、食事を肉中心のものにすると、飽和脂肪酸の摂りすぎとなり、中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の割合が増えてしまうため注意が必要です。

食生活で肉を食べる機会が多い人は、肉を少なめにして一日に1回は魚料理を食べるようにしましょう。

一日の始まりである朝食にも、食べ方のポイントがあります。朝食は脳のエネルギー補給として重要ですが、ご飯やパンだけでは必須アミノ酸のリジンが不足してしまいます。卵や牛乳、納豆など、手軽に摂れるタンパク質を朝食に取り入れて不足している栄養素を摂取しましょう。忙しい朝食には、簡単に作れる卵かけご飯や、ご飯にかつおぶしをまぶすのもおすすめです。

必須アミノ酸は元気な暮らしを支える栄養素

人間が健康に生きていくうえで、必須アミノ酸をバランス良く摂ることは大切です。1つでも必須アミノ酸が欠けていると、せっかく食事から取り込んだタンパク質を上手に活用できなくなってしまいます。

9種類の必須アミノ酸をまんべんなく摂るには、食品のアミノ酸スコアを参考に食材選びをするのがおすすめです。健康な毎日のためにも、良質なタンパク質を含む食品や、必須アミノ酸を多く含む食品などを食事に取り入れてみましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。