腹水のおもな症状・原因とは?
予防・ケア方法について紹介

「お腹が異様に膨らんでいる」「いつもお腹が張って息苦しい」といった悩みがある場合、腹水がたまっている可能性があります。その裏には重大な病気が潜んでいるケースも多いため、正しい知識を身につけてケアすることが大切です。

今回の記事では、腹水の症状や原因、予防・ケア方法について紹介します。

1.腹水とは

腹水(腹水貯留)とは、お腹の内部に水がたまった状態のことです。

病気にかかっていない健康体でも、腸が円滑に動けるよう腹腔内には50ml程度の「腹水」が貯留されています。この水はいわば「腸の潤滑剤」であり、体の機能を保つうえで欠かせないものです。

腹水はおもに腹膜で作られたあと、腹膜や血管に吸収されています。少量の腹水がたまっている分には問題ありませんが、何らかの原因で大量に増加した場合は、精密検査が必要です。

2.腹水のおもな症状・原因について

腹水によって起こる症状、考えられる原因について解説します。

2-1.症状

腹水が大量にたまっている場合、ひと目でわかるほどお腹が異様に膨らみます。ぽってりと丸みを帯びた「カエル腹」になったり、おへそが飛び出たりするケースもあるため、見た目が悪くなることも問題です。

また、腹水によって胃が圧迫されると、吐き気が起こったり、思うように食事をとれなくなったりする可能性もあります。

さらに、肺(横隔膜)の機能が低下して息切れしやすくなる、心臓に血液が戻りにくくなって足のむくみが起こるなど、腹部以外の症状が出るケースも少なくありません。

これらの現象がみられた場合、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の低下につながるため、精神的なストレスが発生しやすくなる点にも注意が必要です。

2-2.原因

腹水のおもな原因としては、以下の病気が挙げられます。

  • ・肝臓の疾患

  • ・腹膜の炎症

  • ・膵臓の炎症

  • ・ネフローゼ

  • ・卵巣腫瘍

これらの病気によって発生する問題が「腹水の過剰産生」「腹水の排出不良」です。

健康体の場合、余分な腹水は血管に引き込まれてから排出されます。しかし、腹腔内の血管内圧が高いと引き込みができなくなり、逆に血管から水がしみ出るため、結果的に腹水が増えてしまいます。

また、タンパク質の一種である「アルブミン」も、腹水の処理に関連しています。このアルブミンが不足しても、同様に血管への引き込み力低下や水のしみ出しといった異常が生じるため、注意しなければなりません。

さらに、腹膜の炎症でお腹に水がたまることもあります。

3.腹水の予防・ケア方法について

腹水がたまりやすい人は、日頃から予防・ケアを実践しましょう。

例えば、一日の塩分は通常なら10gが適量ですが、これを8gまでに抑える「塩分制限」が予防につながります。減塩の食材を使う、ラーメンの汁を残すといった取り組みが有効です。

また、お腹が張って苦しい場合、自宅で安静にして過ごしましょう。クッションで上肢を支える、足浴でむくみ解消を試みる、ゆったりとした衣服・寝具を選ぶといったケア方法もおすすめです。

特に肝臓の疾患の場合、横になって長時間ゆったり過ごすと、肝臓の血流が良くなるため、腹水も減少します。

腹水は日常生活から緩和しよう

肝臓や腎臓の疾患のある場合、腹水がたまりやすい傾向にあり、お腹がふくらんだり、吐き気や食欲不振などの現象がみられたりします。

原因となる疾患に対して、医師のアドバイスも参考にしつつ、塩分制限や自宅で安静にして過ごすなど、日常生活のなかで行なうことのできる予防やケアを実践しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。