1.高齢者の運動不足にはどのようなリスクがあるのか
年を重ねると体が衰え、筋肉量と筋力が低下して転倒しやすくなります。転倒は、高齢者が要介護状態になるきっかけの一つです。
立ち上がる・歩くという動作が難しくなると移動がおっくうになり、お出かけや趣味の機会が減って生活の質の低下にもつながりかねません。一日中家のなかで過ごしてばかりいると、ふさいだ気持ちになる方もいます(閉じこもり)。
また、運動不足は、脂質異常や耐糖能異常を引き起こすほか高血圧や肥満といった生活習慣病の発症率を高めることもわかっています。
2.高齢者が運動に取り組んだほうがよい理由
高齢者が積極的に運動を行なうことのメリットをご紹介します。
まず、転倒防止になります。積極的な運動で筋力を保つことが可能です。運動による刺激は筋肉量だけでなく骨量のアップにもつながります。
また、寝たきりや死亡率、生活習慣病のリスク軽減にも効果的です。
その他、フレイルと呼ばれる心身の働きが弱まった要介護状態にいたる前段階を、運動への取り組みで予防できるとされています。
いつまでもイキイキと自分らしい暮らしを送るためにも、運動不足への対策は重要です。
3.運動不足を解消できる高齢者におすすめの運動
ここでは、高齢者の運動不足解消に効果的な3種類の運動を紹介します。
3-1.有酸素運動
有酸素運動とは、酸素を利用しながら体のなかの糖質や脂質をエネルギーに変えるという筋肉への負荷が軽めの運動です。ウォーキングや自転車こぎ、水中歩行などが有酸素運動に当たります。
有酸素運動をする際は、無理をしない程度から少しきついと感じるほどの強度で、1回10分以上の運動を一日に合計30分、週3~5回行なうのがおすすめです。
3-2.バランス運動
バランス運動は転倒や転倒にともなう怪我の予防につながります。無理をしない程度からややきついと感じるほどの強度で行ないましょう。
高齢者でも手軽にできるバランス運動は、つま先立ちしてゆっくりかかとを下ろす「ヒールレイズ」や片足を大きく踏み出し腰を深く下げる「フロントランジ」などです。周りに邪魔になるものがないところで、イスや壁を利用するなど無理のない範囲で行なってください。
最初は1セット10~15回くらいでスタートし、慣れてきたら1セット8~12回にしましょう。一日1~4セット、週2~3回を目安に行なうのがおすすめです。
3-3.筋力トレーニング
筋力トレーニングをする際は、胸・背中・下肢のトレーニングをまんべんなく行なうとよいでしょう。トレーニングの負荷は個人に合わせて軽めからやや重めまでで設定します。
慣れないうちは1セット10~15回くらいで始め、徐々に1セット8~12回にしましょう。一日1~4セット、週2~3回を目標に取り組みます。
高齢者も積極的に体を動かして運動不足を解消しよう
転倒は高齢者が要介護状態になる原因の一つであり、転倒を防ぐには日常的な運動が大切です。運動は転倒防止だけでなく、生活習慣病やフレイルになるリスクを軽減します。
高齢者の運動は有酸素運動、バランス運動、筋力トレーニングを組み合わせ無理しないレベルで行なうことが大切です。
高齢者も積極的に体を動かして運動不足を解消し、いつまでもはつらつとした暮らしを楽しみましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。