1.QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とは?
QOLは、「Quality Of Life」を省略した言葉であり、日本語では「生命や生活の質」と訳されます。
高齢化の進む日本では、「単に生きるだけではなく充実した人生を過ごすこと」や「自分らしさを保って暮らすこと」という意味で使われている言葉です。
WHOではQOLについて「個人が接している文化や価値観で、目標・基準・関心などに関係する自分自身の人生に対しての認識」としています。
QOLは、幸福感・充実感・満足感といった価値観を基準にして判定するものです。
2.QOLに影響を与える要素
QOLの意味が理解できたところで、ここからはQOLに影響を与える要素について解説します。
2-1.QOLに影響を与える3つの要素
QOLは、さまざまな要因が組み合わさり構成されています。そのなかでも、おもに次の3つの質が関連しているのです。
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・心身ともに健康であるか
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・自立した生活できるか
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・社会と関わりを持っているか
個人の価値観は、それまでに触れてきた文化や教育、経済状況などによって異なります。そのほかに、健康に関する知識によっても、価値観は大きく変化するでしょう。
このような環境が個人のQOLに関係しているのです。
2-2.心身の健康に関する要素
心身の健康は、QOLを高める要因になります。
健やかな生活に関係のある栄養や食生活は、QOLに影響を与える要素です。栄養面を整えて健康でいることが、QOLの向上にもつながるでしょう。健康的な体作りに必要な運動や活動も大切な要素です。
また、たばこを吸っている方は、呼吸器系や循環器系の病気を発症するなど健康面でのリスクが高くなります。自分自身がたばこを吸わなくても、喫煙者の煙を非喫煙者が吸ってしまう受動喫煙もあるため、喫煙者が身近にいる方にとっては大きな問題です。
体も心も健康的な状態になるためには、休息を十分に取ることも意識しましょう。しっかり休むことは、心身ともに回復しストレスに対してうまく対応するうえで重要なことです。
食事や会話をいつまでも楽しむためには、歯の健康にも注意しなければなりません。食べ物をしっかり噛んで食べるには、自分自身の歯を20本以上キープすることが大切です。歯周病予防もしっかりしていきましょう。
3.QOLを損なわないために必要なこと
超高齢社会の日本では、長生きするだけではなく、年を重ねても人生の生きがいや満足感を持ち続ける必要があります。ここでは、QOLを損なわないために必要なことを紹介します。
3-1.人との関わりを持つ
高齢期のQOLを損なわないためには、家族や友人とつながり、仕事・趣味・会話を楽しむことがポイントです。このように他者と関わりを持つことで、心身の健康が保たれ高齢期のQOL向上につながります。
3-2.適度に運動する
運動習慣がない方は、毎日続けられるような軽い運動を生活に取り入れてみましょう。階段を使ったりなるべく徒歩で出かけたりと、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。
また、歩くときは姿勢を正して腕を振り、歩幅を大きくするとよいでしょう。そうすることで、歩くだけでも全身をしっかりと動かせます。
3-3.食生活を充実させる
QOLを向上させるためには、食生活を充実させることも大切です。栄養バランスだけではなく、食事を楽しむことも意識しましょう。
高齢になると1人で食事を摂る孤食(個食)になりやすく、食事の品数や食材が偏ります。その結果、食欲が落ちて食事量も少なくなり、低栄養の状態になりやすくなるのです。
そこで、家族や友人などと食事をする機会を多く持ち、孤食を避けることで健康を維持できるでしょう。
QOLを高めて豊かな生活を送ろう
加齢や病気の影響で体の機能が低下すると、QOLを低下させる原因になるため注意が必要です。心身が弱ってくると、介護を必要とするようなきっかけにもなります。そうならないためには、適度な運動・食生活の改善・健康的な歯の保持・社会と関わりを持つことが大切です。
運動習慣がない場合でも、日常生活の何気ない行動を変えるだけで活動量が増加します。また、栄養バランスを整えて孤食を避けることも重要なポイントです。
QOLを向上させて、いつまでも健康的な日々を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。