「長寿」とは?
日本人の平均寿命や健康寿命のために必要なことを解説

日本人は寿命が長いということは、よく知られているかと思います。

しかし、平均寿命が長いからといって、健康に暮らせる時間が長くなるというわけではありません。普段からしている何気ない習慣が、将来の健康寿命に影響してしまうのです。

今回は、日本人の平均寿命や、健康に過ごすことができる健康寿命を延ばすために必要なことを解説します。

1.日本人はどれくらい長寿なのか?

厚生労働省の「平均寿命の国際比較」によると、2020年における日本人の平均寿命は、男性81.64年、女性87.74年といわれています。日本人の平均寿命は諸外国よりも長く、2065年には男性84.95年、女性91.35年になる見込みです。

2.長寿=健康とは限らない

現在、WHO(世界保健機関)によって健康寿命という考え方が提唱されています。

健康寿命とは、日常生活に制限ない期間の平均のことを指し、日常生活において自立しており、健康で過ごせる期間のことです。

日本人の健康寿命は男女ともに70代で、健康寿命は年々増加の傾向にあります。

厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」の2019年データでは、平均寿命と健康寿命の差が、男性8.73年、女性12.06年といわれています。健康寿命が長い国では平均寿命が健康寿命以上に長いため、介護が必要とされる期間も長くなってしまうのです。

厚生労働省:「健康寿命の令和元年値について

3.健康寿命をかなえるために取り組むべきこと

健康寿命においては、高齢者のフレイルを予防することが重要になります。
フレイルとは「心身が加齢で老い衰えた状態」のことで、フレイル対策を早く行なえば、健康な状態を維持することが可能です。

高齢者が健康維持をかなえるために取り組むべきことを見ていきましょう。

3-1.栄養・食生活

適正体重を維持できるように、栄養バランスが整った食事をすることが大切です。

主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を一日2回以上することを心がけ、塩分を抑えた食事づくりを心がけ、野菜と果物の摂取量を増やしましょう。

3-2.身体活動・運動

身体活動や運動量が多い人は、そうでない人と比べて生活習慣病などにかかる割合が少ないといわれています。

取り入れやすい身体活動として、まずは一日あたりの歩数を増やしましょう。

厚生労働省の「健康づくりのための運動基準 2006」では、生活習慣予防のために、一日8000~10000歩以上の身体活動を推奨しています。

3-3.休養

睡眠時間が不足すると、疲労を感じやすくなる、判断力を鈍るなど、生活の質に大きく影響します。

眠りにつきにくくなるなどの睡眠障害は、心の病気の症状として現れることもあります。そのため、日頃からストレスと上手に付き合えるように、日常生活の中にしっかりと休養を取り入れるようにしましょう。

3-4.嗜好品を控える

高血圧や脂質異常症などの生活習慣病のリスクは一日平均飲酒量とともにほぼ直線的に上昇するため、節度のある飲酒量を心がけるようにしましょう。

また、喫煙による健康被害についても科学的な知見によって、関係性が確立されています。禁煙することで、健康を改善する効果も明らかになっており、喫煙が関係する疾患のリスクが禁煙後の年数とともに確実に低下するため、喫煙も控えるようにしましょう。

日頃の生活習慣が健康な長寿につながります

今回は、日本人の平均寿命や健康寿命のために必要なことを紹介しました。

普段の食事や身体活動、嗜好品などが健康寿命に関係しています。

平均寿命と健康寿命の差が広がることで、介護が必要な期間が長くなります。個人としての生活の質が下がるだけでなく、医療費や介護給付金などの社会保障負担が大きくなるという問題にもつながっています。

少しでも長く、元気で健やかな毎日を過ごせるように、今回紹介した健康維持のための取り組みを参考に生活習慣を見直してみましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。