低血糖とは?低血糖になりやすい人の特徴や対処法について解説

「ダイエットをしていると、頭がボーッとしたりフラフラしたりして、思うように仕事がはかどらない」ということはありませんか。その状態は、もしかすると「低血糖」を引き起こしているかもしれません。

また、低血糖が重症化すると、意識障害など命に関わる危険性もあるため、注意が必要です。

今回は、低血糖の概要や低血糖になりやすい人の特徴、万が一低血糖になったときの対処法について解説します。

1.低血糖とは?

低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が低くなった状態のことをいいます。

血糖値別のおもな低血糖の症状、症状を引き起こす原因は以下のとおりです。

血糖値 症状 症状を引き起こす原因
60~70mg/dl未満 【交感神経症状】
・冷や汗がでる
・気持ちが悪くなる
・強い空腹感をおぼえる
・寒気がする
・動悸がする
・手足がふるえる
・目がちらつく
・ふらつく
・力が抜けた感じがする
・頭痛がする
低血糖になると、血糖値を上げる作用のあるアドレナリンやグルカゴンが分泌されるために症状が現れます。
50mg/dl未満 【中枢神経症状】
・ぼんやりする
・うとうとしている
・異常な行動をとる
・意味不明な発言をする
・ろれつが回らない
・目の前が真っ黒になって倒れそうになる
・意識喪失
・けいれんを起こす
低血糖により、脳の機能が低下することで症状が現れます。

参照:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖

低血糖になったとしても、早めに適切な対処をすることで症状は改善します。しかし、低血糖を放置して脳の機能が低下している状態が長時間続くと、脳に重度の後遺症が残るか、場合によっては命に関わることもあるので注意が必要です。

2.低血糖になりやすい人の特徴

低血糖になる原因は薬の副作用によるものと生活習慣によるものがあり、低血糖になりやすい人の特徴は以下の3つが考えられます。

2-1.糖尿病などの薬を使用している人

糖尿病の治療で血糖値を下げる薬を飲んだり、インスリンの注射を打ったりしている場合、血糖値が必要以上に下がって低血糖症状が現れます。

心拍数が乱れてる状態に対する薬を飲んでいると飲み合わせによっては低血糖を起こす場合があるほか、高齢の方は加齢により薬が効きやすく、低血糖を起こす傾向があるため、気をつけましょう。

2-2.糖質制限をしている人

ダイエットなどで極端に糖質を控えた食生活を送っている人は、低血糖になる場合があります。

糖質は基本的に脳の唯一のエネルギー源であり、不足すると集中力の低下などを招くため、注意が必要です。糖質は適量を摂ることを心がけ、朝昼夕の食事でごはんやパンなどの炭水化物を1種類だけ食べるとよいでしょう。

2-3.激しい運動を長時間する人

ブドウ糖は体を動かすエネルギーになるため、運動をすることで血糖値は下がります。しかし、激しい運動量は低血糖になるので注意が必要です。

運動前後に適度な糖質を摂取すると、運動のパフォーマンスを向上することが明らかになっています。運動をする際は、適度な食事を摂るようにしましょう。

3.低血糖の初期症状と対処法

低血糖の初期症状として覚えておきたいのが、「いつもと何か違う」という感覚です。何か異変を感じた場合は、血糖値を測定し、早めの受診をおすすめします。

3-1.初期症状

低血糖のおもな初期症状は、次のようなものがあります。

  • ・強い空腹感

  • ・軽い脱力感

  • ・発汗

  • ・手指のふるえ

  • ・熱っぽさ

  • ・動悸

  • ・不安感

  • ・悪心

3-2.対処法

低血糖の症状が現れた場合は、次のように糖分を補給しましょう。

  • ・ブドウ糖の場合は5~10g摂取する

  • ・砂糖の場合は10~20g(ブドウ糖の倍量)摂取する

  • ・ブドウ糖が入っているジュース(「果糖ブドウ糖液糖」などと表示してあるもの)を150~200ml飲む

口から摂取できない場合は、ただちに医療機関に受診し、できれば唇や歯肉の部分にブドウ糖を塗りつけて対処しましょう。

適切に対応することで、通常は5分以内に低血糖症状は改善します。しかし、30分ほどで再び低血糖を引き起こす場合もあるため、糖分を摂取したあとに食事も摂るとよいでしょう。

前述したとおり、低血糖は、食事時間が遅れたときや激しい運動をした場合に起こりやすいので、注意しましょう。また、糖尿病などを患っている高齢者は薬の効き目が強く出る傾向があるため、「低血糖になりやすい」ということを常に意識して生活してください。

低血糖は最悪の場合、命を奪う危険性があることを家族も認識しておきましょう。万が一、意識が混濁状態になったときに、早急に対処できるように備えておくことが重要です。

適量の糖質摂取を心がけ、低血糖から身を守ろう

低血糖は、生活習慣や薬の影響によって症状が現れます。過度なダイエットや激しい運動をしている人、糖尿病などの病気を患っている人は注意が必要です。

極端に糖質を減らした食事は、仕事や運動のパフォーマンスを下げてしまうため、おすすめできません。

また、糖尿病の薬を使用している場合は、「低血糖になるかもしれない」という意識を常に持っておくことが大切です。万が一、低血糖になった場合も適切に対処できれば症状は治まるため、ブドウ糖や砂糖の入ったジュースなどを常に備えておきましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。