1.血圧は常に変化する
血圧とは、心臓から押し出された血液によって血管にかかる力です。血圧は時間帯や毎日の行動、周りの環境によって常に変化しています。
血圧が高くなる要因には運動や食事、喫煙や寒い環境があります。また、車の運転のような緊張や興奮状態、ストレスなども血圧を上昇させます。
一方で、体を安静にしたり、暖かい環境で過ごしたりすると血圧は下がる傾向にあります。
通常は血圧が変動しても、ある程度の範囲内におさまっています。何らかの理由で一時的に大きな変動があったとしても、しばらくすると正常値に戻ります。しかし、高血圧の方は血圧の変化が大きくなるため、なかなか回復しないのが特徴です。
2.一日の血圧の変化
血圧は時間帯によっても変動します。基本的には、眠っていると血圧は低くなり、起きて活動している日中は高くなります。この変動は24時間周期で起きるため、血圧の日内変動と呼ばれます。この毎日の変動は、血圧が正常な方でも高血圧患者でもみられる現象です。
しかし、高血圧患者のなかには早朝や夜間に血圧が上がるケースもあります。そのような場合は、血圧手帳などに自宅で測定した血圧を記載して医師に伝えましょう。
3.注意すべき血圧変化
血圧の大きな変動や、高血圧の悪化は心血管系に負担を与えるため、注意が必要です。ここでは、気を付けるべき血圧変化について紹介します。
3-1.早朝高血圧
通常、眠っている間は一日の中で最も血圧が低い時間帯ですが、夜間から早朝にかけて血圧が上昇することを早朝高血圧といいます。加齢にともなって血圧を上昇させる自律神経である交感神経が刺激を受けやすく血管が硬くなるため、早朝高血圧となる高齢者は少なくありません。
また、たばこを吸う習慣がある方や寒冷下で生活している方も起こりやすくなります。
朝の血圧が135/85mmHg以上ある状態は心臓や血管に負担をかけ、心臓や脳の疾患を起こすとリスクを高めます。高血圧の治療中であっても、降圧薬を服用する直前である朝は、薬の作用が弱まり血圧が上がりやすくなるケースもあります。
病院で測定した血圧は安定していても、自宅で測る早朝血圧が安定していない場合は、治療の進め方について主治医に相談しましょう。
3-2.夜間高血圧
夜間高血圧とは、夜になっても血圧が低くならないことをいい、糖尿病や腎不全、自律神経障害のある方に多くみられます。これらの疾患にかかっている方は、体の中に塩分がたまりやすい特徴があるため、余分な塩分を排出しようとして眠っている間に血圧が上昇します。その結果、心臓や腎臓に負荷がかかり、高血圧の悪化につながります。また、加齢や睡眠時無呼吸症候群も、夜間高血圧の一因となります。
3-3.ヒートショック
ヒートショックは周りの温度がいきなり変化することで血圧が大きく変動し、体に過剰な負担がかかることで生じます。ヒートショックが起こりやすいのは、冬場の入浴時です。
寒い脱衣所や浴室から、急に熱いお風呂に入ると急激な温度差で血圧が大きく変化します。その結果、心臓や血管に負担をかけ、最悪の場合は命に関わることもあります。ヒートショックを予防するためには、次のような対策を行ないましょう。
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・脱衣所とお風呂場を入浴前に温め、温度変化を少なくする
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・脱水予防のため、入浴前にコップ1杯の水を飲む
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・体への負担軽減のために、バスタブのお湯の温度は41度以下にし、長湯を避ける
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・バスタブからはゆっくりと立ち上がる
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・入浴時間が長引いたら家族が声をかける
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・体調不良時や、飲酒や食事をした直後の入浴を避ける
特に持病がない方でもヒートショックは起こる可能性があるため、健康に自信がある方であっても気を付けましょう。
一日の血圧変化を把握して日々の健康に役立てよう
血圧は一日の間で、行動や時間帯などによって変動します。高血圧の方は、健康な方に比べると変動の幅が大きく、回復するまでに時間がかかるのが特徴です。
血圧の大きな変化は、脳や心臓へ負担をかけるため注意する必要があります。自分でできる対策としては、ヒートショックを防ぐための工夫をしたり、早朝・夜間に高血圧になっていないかチェックしたりすることが挙げられます。
高血圧は知らないうちに進んでいくため、日々の生活の中で血圧の変化に意識を向けましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。