1.空気(息)が吸いにくい場合に考えられる原因とは?
空気が吸いにくいと感じる理由には、ストレスや呼吸器の病気が考えられます。ここでは、それぞれの特徴を紹介します。
1-1.不安やストレス
不安やストレスを感じているときに、息がしづらいと感じることがあるかもしれません。
人間の脳内にはある扁桃体という器官は、感情の動き(情動)を司っていると同時に、呼吸機能の調節も行なうところでもあります。
情動と呼吸が連動していることから、不安や緊張、ストレスを感じると速くて浅い呼吸になり、逆に心身がリラックスするとゆっくりと深い呼吸になるのです。
そのため、不安やストレスで空気(息)が吸いにくい場合は、まずは心身をリラックスさせてあげるとよいでしょう。
1-2.病気
空気、息が吸いにくい症状が現れる病気には次のようなものが考えられます。
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・気管支喘息
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・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
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・自然気胸
気管支喘息はアレルギーなどによって気道が慢性的な炎症を起こし、せきやたん、喘息発作といった症状が起こる病気です。せきやたんが、夜間・早朝の時間帯に出やすいこと、呼吸とともにぜん鳴(「ヒューヒュー」「ゼーゼー」のような音)が聞こえることなどが特徴です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、酸素と二酸化炭素を交換する役割を持つ肺胞という器官が壊れることで、息がしづらくなります。COPDは長期間の喫煙習慣などによる肺の炎症が原因です。最初は息切れやたんといった症状から始まり、治療をしないままでいると、やがておぼれるような息苦しさを感じるようになります。
自然気胸は、何らかの原因で肺に穴が開いて空気が漏れている状態で、肺にうまく空気が入らないことで息苦しさや痛みなどを感じる病気です。
いずれの病気でも、適切な治療が必要となるため、早めに専門医を受診することがすすめられます。
2.空気(息)が吸いにくい場合の対処法
息苦しさがストレスや不安が原因で起こる場合、自分でできる対策として、呼吸筋ストレッチや呼吸を楽にする姿勢をとることが挙げられます。ここでは3つのストレッチ法と2つの姿勢を紹介します。
2-1.呼吸筋ストレッチを行なう
肩や胸、背中などの筋肉をストレッチすると呼吸機能が高まり、深くなだらかな呼吸ができるようになることから、不安やストレスを和らげる効果が期待できます。
呼吸筋ストレッチは不安や緊張、息苦しさを感じたときに行なうのが効果的です。それぞれ1回3セットを目標に、起床時や就寝前などに取り組んでみましょう。継続すれば呼吸筋がやわらかくなるため、毎日続けるのがおすすめです。
喘息やCOPDの方は、息苦しさへの不安から運動をためらう方もいるかもしれませんが、ぜひ自分のペースに合った呼吸筋ストレッチを習慣にしてみましょう。
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肩のストレッチ
1.ゆっくり息を吸いながら肩を上げます。
2.息を吐きながら、肩を後ろに大きくぐるっと回して元の位置に戻します。
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胸のストレッチ
1.手を背中側で軽く組み、ゆっくりと息を吸いこみます。
2.息を吐きながら、肩甲骨をしっかり寄せて胸を開きます。そして、腕をななめ下に向かって伸ばしていきましょう。
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背中のストレッチ
1.膝を曲げ背中を丸めながら、手を胸の前で軽く組みます。
2.ゆっくり息を吸いながら、大きなバランスボールを持つイメージで腕を前に伸ばします。
3.息を吐きながら、伸ばした腕を元の位置まで戻しましょう。
2-2.呼吸を楽にする姿勢をとる
日常生活のなかで息切れが強くなってきた場合は、慌てずに呼吸を楽にする姿勢をとりましょう。
座っていてテーブルや机を使える場合は、腕をのせて肘をつき安定させ、うつぶせの姿勢をとります。このときテーブルや机の上に、タオルなどのやわらかいものを置くとよいでしょう。
立っている場合は、壁に背中をもたれさせて頭を下げ、両手を膝の上にのせて安定した姿勢を保ちます。
これらの体勢をとっても症状がおさまらないときは、一人で我慢せず周りの人の力を借りることも大切です。休める場所の準備や、病院への連絡などで助けてもらうとよいでしょう。
また、空気が吸いにくい症状が続いている場合には、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
空気(息)が吸いにくいと感じたら症状に合わせて対処しよう
空気が吸いにくい原因には、ストレスのほか肺や気管支の病気が考えられます。
ストレスが原因の場合は、心身をリラックスさせて呼吸を整えましょう。呼吸筋ストレッチや息が楽になる姿勢をとることも効果的です。
なお、喘息やCOPDなど病気の可能性がある場合は、早めの専門医への受診をおすすめします。
息がしづらいと感じたら、症状に合わせた対策を行ないましょう。また、症状が持続したり、症状が強くなったりする場合は一度専門医を受診して原因を調べることも大切です。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。