1.乳酸菌とは
乳酸菌は、糖を発酵させて乳酸を産生することのできる微生物の総称です。乳酸菌には以下のような特徴があります。
1-1.乳酸菌はあらゆる場所に存在する
乳酸菌とは1種類の菌を指すのではなく、糖を発酵させて乳酸を産生する性質をもつ嫌気性微生物の総称を意味します。乳酸菌は私たちの体内以外にも、土中、空気中、水中など場所を問わず存在しており、その種類は2,000にもおよぶとされています。
1-2.人間の腸内には40種類程度の乳酸菌が存在する
私たちの腸内には100種類を超える細菌が住み着いていますが、乳酸菌はこのうちの約40種類を占めるといわれています。乳酸菌は私たちの健康を支えてくれる大切なパートナーであるため、その働きを適切に維持するためには日々の暮らしのなかで食事やサプリメントを通じて継続的に摂取する必要があります。
2.乳酸菌のおもな働き
乳酸菌は私たちの健康を維持するうえでとても大切な役割を担っています。乳酸菌の具体的な働きには、おもに以下のようなものがあります。
2-1.便通の改善
乳酸菌には便通の改善効果があることが知られています。乳酸菌の摂取により、便量が増える、便の臭いや残便感が減るなどの効果が得られ、腸内環境がより整っていることがわかっています。
現代の日本では、高脂肪食、食物繊維摂取量の減少、ストレス、運動不足などを原因として慢性的な便秘を抱えている方が多く、なかでも女性の半数程度が便秘であるともいわれています。
2-2.コレステロール値の低下
乳酸菌は便通の改善に加え、コレステロール値を低下させる作用があるものが存在することが知られています。
2-3.免疫力の強化
私たちの腸管内にはIgAと呼ばれる抗体が存在しており、病原体の排除や腸内環境の維持に重要な役割を果たすことが知られています。
乳酸菌にはこのIgA抗体の量を上昇させる効果が報告されており、この効果は、乳酸菌の菌体成分が免疫細胞によって異物として認識されることで、IgAの産生が誘導されるために生じると考えられています。
2-4.ピロリ菌の抑制
乳酸菌の中には、ピロリ菌を抑制するなど特殊な働きをするものもあることが知られています。
3.腸内の乳酸菌を増やす方法
腸内に乳酸菌を増やして良好な腸内環境を維持するためには、乳酸菌の特性を理解したうえで適切な食品を摂取することが大切です。具体的には以下に解説する点を頭に入れておくようにしましょう。
3-1.乳酸菌には植物性と動物性がある
乳酸菌は、植物性乳酸菌と動物性乳酸菌の2種類に大別できます。植物性乳酸菌は穀物、野菜などの植物に含まれており、動物性乳酸菌は、ウシ、ヤギなどの動物の母乳中に含まれています。
3-2.植物性乳酸菌の特徴
植物性乳酸菌は生命力が強く、環境に対する適応能力が高いため、さまざまな食品中で生息することができます。植物性乳酸菌は、植物中のブドウ糖や果糖などをエサとして分解し、野菜、豆類、米、麦などの食品を発酵させる働きがあります。植物性乳酸菌を多く含む食品には、しば漬け、ぬか漬け、野沢菜漬け、みそ、しょうゆ、キムチ、ザーサイなどがあります。
3-3.動物性乳酸菌の特徴
動物性乳酸菌はおもに動物由来のミルクに含まれていますが、動物の肉にも生息していることが知られています。動物性乳酸菌を効率よく摂取するには、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品に加えて、乳酸菌を使った発酵食品である生ハム、ニシンの塩漬け、くさや、鮒寿司、アンチョビなどを食べましょう。
3-4.乳酸菌の死菌も健康維持に役立つ
動物性乳酸菌は植物性乳酸菌と比較して生命力が弱く、乳製品などから摂取しても人の腸内に到達する頃には死滅しています。しかし、動物性乳酸菌は死菌となったあとも植物性乳酸菌のエサとして働き腸内環境を整えるので、植物性乳酸菌と同様に積極的に摂取したい成分といえます。
3-5.乳酸菌のエサとなる食品を摂取することも大切
良好な腸内環境を保つためには乳酸菌と併せて乳酸菌のエサとなる食品も摂取し、乳酸菌が快適に生存できる状態を維持することが大切です。乳酸菌はオリゴ糖や食物繊維が大好物なので、これらを豊富に含む食品を積極的に摂取するように心がけるとよいでしょう。ちなみに、オリゴ糖は糖の一種ですが体内に吸収されにくい性質があるため、血糖値をほとんど上昇させることがありません。このため、血糖値を気にされている方でも安心して召し上がることができます。オリゴ糖を多く含む食品には、玉ねぎ、ごぼう、大豆、アスパラガス、ねぎ、バナナ、にんにくなどがあります。
体内の乳酸菌を積極的に増やしていこう!
乳酸菌は私たちの健康維持に役立つ大切なパートナーです。植物性乳酸菌、動物性乳酸菌に加えて乳酸菌のエサとなる食物をバランスよく摂取し、積極的に体内の乳酸菌を増やすことが健康な日常生活をおくるための鍵となるでしょう。
監修者情報
氏名:豊田早苗(とよだ・さなえ)
とよだクリニック院長。鳥取大学医学部卒。精神科・心療内科・内科・神経内科(認知症、物忘れ)の診療を担当している。総合診療医学会、認知症予防学会、精神医学会などに所属。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。