1.EPAとは
EPA(エイコサペンタエン酸: Eicosapentaenoic Acid: IPA)は、青魚に多く含まれる成分で「n-3系脂肪酸」のひとつです。
EPAは「必須脂肪酸」と呼ばれ、人の体内で作られにくい成分です。そのため、食事により摂取する必要があります。ただし、酸化しやすい、熱に弱いなどの特徴があり、加熱調理すると大気中の酸素と反応して過酸化脂質となるため、お刺身など生のまま食べることを意識してみましょう。
1-1.DHAとEPAの違い
EPAと同じn-3系脂肪酸には、青魚の脂に含まれる成分(必須脂肪酸)のDHAがあります。DHAもEPAと同じようにさまざまな作用を持つ成分として有名ですが、体にもたらす働きは同じではありません。
DHAは、1989年に北ロンドン大学の脳栄養化学研究所所長(当時)であるマイケル・クロフォード博士が著書の中で「日本の子どもの知能指数が高いのは、魚をよく食べるためではないか」と述べたことで注目されるようになりました。DHAは、物事を考え学習する力や覚える力の維持など、健康維持に重要な働きをすることが知られています。仕事や勉強を頑張る方から生活習慣が気になる方まで、幅広い年代に注目されている成分なのです。
一方のEPAも、DHAと同様に青魚に多く含まれる必須脂肪酸となり、体を健全に保つ働きがあります。1990年代後半から、魚の摂取量が多い国の人は思い悩む頻度が低い可能性が高いことが分かり、注目され始めました。国内での研究成果はまだ少ないですが、将来の健康や生活習慣が不安な方、健康意識が高い方に期待されています。
2.EPAの主な働き
EPAの働きとして代表的なものが「血栓」の生成を抑える作用です。血栓とは血のかたまりのことで、血の流れによどみがあると心臓で作られやすくなります。
さらにEPAには、「中性脂肪を下げる」「高血圧の予防」などの作用が期待され、善玉コレステロールを下げずに、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
また、EPAを含むn-3系脂肪酸は、眼や神経組織の発達にも関わります。乳幼児をはじめ、妊娠中もしくは授乳中の女性はn-3系脂肪酸を含む海産物を積極的に食事で取り入れるように意識しましょう。ただし、あくまでも摂取目安量の範囲内であることが大切です。
3.一日に必要な摂取量(目安)
EPAやDHAは、体内ではほとんど合成されないため、食事などから摂取しないと体に取り入れることはできません。では、一日にどれくらいの量のEPAを摂取する必要があるのでしょうか。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、EPAやDHAのほかにα-リノレン酸等を含むn-3系脂肪酸を合わせた量として、一日に必要な摂取目安量が発表されています。たとえば、女性(30歳~49歳)の摂取目安量は一日あたり約1,600mg、男性(30歳~49歳)では一日あたり約2,000mgとなります。また、女性(50歳~69歳)の摂取目安量は一日あたり約1,900mg、男性(50歳~64歳)では一日あたり約2,100mgとなります。
では、このn-3系脂肪酸の摂取目安量は、一日の食事でどの程度補えるのでしょうか。一般的なツナ缶(もっとも含有量が高いビンナガマグロの水煮タイプ)の場合、DHA・EPAは可食部100gあたり約440mg含まれています。つまり、厚生労働省が発表しているEPA・DHAを含むn-3系脂肪酸の一日摂取目安量が約2,100mgの男性(50歳~64歳)の場合では、100gのツナ缶を5缶分も摂取する必要があるということです。
3-1.EPAの過剰摂取について
日ごろの食生活でEPAを意識して取り入れることが大切です。しかし、EPAは過剰に摂取すると健康に悪影響を及ぼすことがありますので、バランスを意識して、EPAは一日3,000mgまでを目安として、過剰に摂りすぎないよう注意しましょう。
4.EPAが多く含まれる食品
EPAは、青魚の中でも加熱をしていない生の青魚に多く含まれています。以下は、EPAが多く含まれる食品の例となりますので、ぜひ今後の食生活の参考にしてみてください。
食品名 |
可食部100gあたり |
サバ類・開き干し(生) |
2,200mg |
シロサケ・すじこ |
2,100mg |
サンマ・皮なし(生) |
1,500mg |
クロマグロ・トロ(生) |
1,400mg |
ブリ・成魚(生) |
940mg |
ニシン(生) |
880mg |
真イワシ(生) |
780mg |
ウナギ(かば焼き) |
750mg |
サンマ(焼き) |
560mg |
※引用:水産庁「水産物等に含まれるDHA及びEPA」
魚の網焼きは、EPAが豊富に含まれている魚の脂が流れて落ちてしまいます。刺身やマリネなどにして生で食べるか、加熱する際も煮漬けにするなど、魚の脂も一緒に摂れるように調理方法も工夫することをおすすめします。青魚の臭みが気になる場合は、味噌・酢・しょうが・梅干しなどを組み合わせると効果的です。
食事にEPAを上手に取り入れましょう
魚は良質なタンパク質だけではなく、ビタミンやEPA、DHAと健康維持に役立つ成分が豊富に含まれています。とくにEPAやDHAは体内で作られにくい必須脂肪酸であるため、食事など外からの摂取が必要です。
しかし、現代の日本の食文化は欧米化が進み、魚を食べる機会が昔より減りつつあります。EPAやDHAを多く含む魚を食べる機会が減った今だからこそ、改めて魚食について見直してみてはいかがでしょうか。
なかなか食事から摂ることができない場合、EPAはサプリメントなどで補給するのもひとつの手段です。これからの体の健康維持のためにも、EPAの摂取を意識しながら上手に取り入れていきましょう。
監修者情報
氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。