年齢対策の新定番「セサミン」
年齢対策の新定番「セサミン」
監修:愛知学院大学
心身科学部 健康栄養学科 客員教授
農学博士
大澤 俊彦
健康に関わる重要な働きが次々と解明されてきたゴマのチカラ。
その発見と探求の始まりには、実験の失敗が生んだドラマがありました。
あくなき真理への情熱と、たゆまぬ探究心が開花させた
奇跡の道のりを手繰ってみましょう。
なぜ洋酒メーカーのサントリーがゴマに注目したのでしょうか?
サントリーはウイスキー、ビール、ワインづくりで長年にわたって、発酵技術の研究に努めてきました。
発端は1984年。サントリー健康科学研究所と京都大学が口の中でトロッと溶けるカカオ油脂のような「理想の脂質」を探す『夢のあぶらプロジェクト』を立ち上げました。
プロジェクトの手始めは、微生物の探求です。耳かき一杯分の土中には約1億個もの微生物が生きています。善玉も悪玉もいるので、研究者は条件を変えて次々と実験しなければなりませんでした。
苦労を重ねて多くの微生物を分析したにもかかわらず、「夢のあぶら」はどこにも見当たりません。
しかし、幸いにも実験の過程で発見できたのが、脳と母乳の重要成分である健康成分アラキドン酸(ARA)です。そこで、サントリー健康科学研究所は、土中の微生物からARAを生産する微生物の研究に熱中していったのです。
研究者は、微生物を使ってアラキドン酸(ARA)を大量生産するために、さまざまな油を発酵タンクに注入しました。ところが、ある日、突然に異変が起きます。ナタネ油や大豆油を入れるとARAが増えるのに、ゴマ油を入れてもARAがまったく増えません。予想を裏切られた研究者は腰を抜かさんばかりに驚きました。
「ARAができなかったのはなぜか?」「ARAの代わりに何ができたのか?」「ゴマ油に影響している物質は何か?」
研究者は発想を転換し、ARAをまったく作れなかったゴマ油のナゾを究明し始めます。
既成概念や常識を超えるために、高速液体クロマトグラフィーなどの解析機器を活用し、半年間を費やして成分を詳細に分析。観察、実験、検証を繰り返し、やがて成果は1988年に結実します。
研究開発者の新免芳史さんは「このナゾの成分の正体、それがゴマプリフェノールである揺るぎない証拠をついにつかんだのです」と振り返ります。
当時、ゴマポリフェノールはすでに学会に知られていましたが、その作用はまだ公認されていませんでした。
その後、各所との共同研究で、ゴマは健康に良いという明確な根拠がゴマポリフェノールにあると断言できる成果が次々と出てきました。
現在よく知られるところとなったゴマポリフェノールの健康パワーは、このような実験の意外な失敗がきっかけになってゴマ油に着眼したことで、偶然に発見できたのです。
ワインもウイスキーも烏龍茶も酸化を抑えるポリフェノールを含みます。ゴマから抽出されるゴマポリフェノールは、地道な研究活動の蓄積があったからこそ手にできた稀少な「自然からの贈り物」でしょう。
取材・文 GOOD AGING LABO 編集部
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