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企業が進める健康への取り組みを聞いてみました

大切なのは「見える化」と風土づくり SOMPOケア株式会社の健康経営をインタビュー

高品質の介護サービスを提供するためには職員の健康が必須

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社について教えてください。

当社は高齢者の方々に向けてさまざまなサービスを提供しています。

訪問介護やデイサービスなどの在宅介護から有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅といった施設介護まで、フルラインナップの介護サービスを提供しています。お一人おひとりの心身の状態や価値観を考慮した個別性のあるケアを提供し、ご利用者さまの自立支援をお手伝いしていることが、当社の大きな強みです。

また、自社運営だけでなく業界全体を盛り立てていくための取組みにも力を入れています。中小規模の介護事業者様や新規参入を検討されている皆さまに向けて、当社が培ってきたノウハウを提供し、あらゆる面からサポートする「ビジネスプロセスサポート」を2020年度から展開しています。

ーー御社は「健康経営優良法人2022 大規模法人部門」の認定を受けています。健康経営に注力することを決められた時期や背景を教えてください。

健康経営の取り組みを本格的に始めたのは2020年です。高齢化の進展による「人生100年時代」の到来を受け、私たち一人ひとりが元気に活動できる「生涯現役社会」を構築するために、健康寿命をいかに長く維持するかが社会的な課題になっています。

当社では、正社員の定年は65歳で、定年以降も70歳までは再雇用として、加えて70歳以降も本人の能力・意欲や健康状態に応じてパートタイマーとして勤務いただける制度となっています。制度を整備するだけではなく、年齢にとらわれず活き活きと働くことのできる環境づくりを進め、精神的・肉体的な健康を支えていくことが非常に大切だと考えています。

さらに人口も減っていますので、職員の採用活動も容易ではありません。そのような環境下で、職員の方々にいかに長く元気に働いていただくかという観点、また新規採用において企業の魅力を向上させるということからも、健康経営を進めていくことは非常に重要だと考えています。

以上を踏まえて、SOMPOケアがご利用者さまに安心・安全・健康に資する最高品質のサービスをご提供するためには、職員の健康増進を進めることが必須な事業戦略だと考え、2020年9月に「健康宣言」を制定しました。

ーー職員の皆さんの健康状態について、傾向や懸念されていた点はありますか?

当社では職員に長く働いてもらえるよう人事制度を整備していることもあり、比較的年齢層が高めです。そのため、どうしても年齢の積み重ねによる生活習慣病、健康診断で有所見となる方が一定数存在します。

介護は力仕事だけではないですが、業務の特性上、ヘルニアなど腰痛をもっている方も多いですね。80代など高齢で就労されている方もいらっしゃるので、業務中に転倒などで怪我をされるリスクも高まります。ICT・デジタル技術などのテクノロジーも活用しながら、業務負荷を下げてその方らしいパフォーマンスが発揮できるようにする必要があります。

また業界特有の課題として、シフト制による生活リズムの乱れがありますね。有料老人ホームなどの施設では早朝からの勤務や夜勤もありますので、オフィスワーカーのように一定のリズムで勤務して土日は休み、という働き方ではありません。そのため、他業界と比較しても、より力を入れて対策を講じていく必要があると考えています。

身体の健康状態を「見える化」する

ーーそれでは、健康経営の具体的な施策について詳しくお伺いできますでしょうか?

身体的な健康課題に関しては、健康診断の結果を最大限に有効活用する施策を行なっています。当社は正社員だけでも12,000人以上いるため、健康診断の結果を扱うこと自体が非常に大変です。そのため、データを一元管理できるように健康管理システムを昨年導入しました。

健康診断、ストレスチェック、残業時間・有給取得、休職の有無など健康に関する情報を1年かけて集め、システムでの一元管理を進めています。

蓄積したデータは今後展開していく施策の検討材料や、産業医による健診結果に基づく意見聴取などに役立っています。以前は受診者の健康診断結果などを1枚ずつ紙で産業医の先生にお見せして、その方の働き方に問題がないかどうかを判定していただいていたのですが、システム導入によって大幅に効率化・標準化され、産業医による意見聴取に、さらなる活用ができるようになっていますね。

また、SOMPOグループにはヘルスケアを担うグループ会社がありますので、分析を委託し、客観的なデータに基づいて、健康課題を把握しています。

身体的な健康を維持するためにデータを活用し、健康状態の経過を「見える化」することが1つ目の大きな柱です。

ーーありがとうございます。健康診断をただ受診してもらうだけでなく、結果を継続的に分析することで改善施策も検討しやすくなりますね。

健康診断で有所見となった方々に対する受診の促しも行なっています。血圧や糖代謝、脂質など項目は多々ありますが、これらの数値が高いままだと病気につながり、就労できなくなってしまう恐れもあります。早い段階で病院に行き、診察・治療を受けていただくことが重要です。

また「今は数字がそこまで悪くはないものの、このままだと服薬や継続治療が必要になる」というケースもあります。この場合は、当社が委託している保健師さんに生活習慣の改善指導をしていただいています。当社は全国に1,000以上の事業所があるので、オンラインを活用した保健指導やアドバイスです。これが2つ目の柱ですね。

心の不調は予防・早期発見・復帰サポートが大切

ーー精神的な健康の推進についてはいかがでしょうか?

職場でのメンタルヘルス対策は「一次予防」「二次予防」「三次予防」が必要だといわれています。

メンタルヘルス不調を未然に防ぐのが一次予防で、不調を早期に発見し適切に対応するのが二次予防、そして休職から復帰された方をサポートして再発を防ぐのが三次予防です。

当社では3つそれぞれに取り組んでいます。まず一次予防としてはeラーニングでメンタルヘルス研修を行なっており、これはストレスが溜まるとどうなるのか、どうしたらストレスとうまく付き合えるのかといった知識を得ていただくものです。

二次予防としては、個人のストレスチェックを年に1度行なうことに加えて、組織のストレス度を測る各事業所単位の結果を分析しています。なぜその事業所が高ストレスの職場になっているのかをさまざまな観点から分析して、人事や現場の責任者とともに対策を講じ、実際にメンタルヘルスの不調者が出ないよう取り組んでいます。

三次予防については、復帰された方との定期的なフォロー面談を実施しています。1カ月後、3ヶ月後、6ヶ月後といった時期に産業医の先生と面談をして再発リスクを抑える取り組みです。

そのほかに「リワークプログラム」というものも一部導入しています。メンタル不調で休職していた職員にスムーズに職場復帰してもらうための、リハビリテーションプログラムを活用しています。

健康経営の課題や反響

ーー健康経営に取り組まれる中で難しく感じた点はありますでしょうか?

健康診断の有所見者の方々に、医療機関を受診していただくことでしょうか。ご自身で気にしている方は積極的に受診されますが、生活習慣病の多く、とくに初期は自覚症状があまりありません。

検査で血圧が高くても、痛みや不調がない限り「自分は大丈夫」と思うものですよね。何も不調がない時に病院へ足を運んでいただく難しさはあります。

専属の産業医の先生や保健師さんが何人もいて、受診勧奨の体制が非常に厚い業種もありますが、当社ではまだそうした体制をつくっていく途中にありますので、健康リスクがやや高い方に対するアプローチは課題となっています。

もう1点は、健康に関する情報提供です。介護現場の職員は1人1台パソコンを持っているというわけではありませんので、会社からの情報は各事業所にある掲示板や職員それぞれのレターケースに配付される資料から得るのが中心となっています。

人事部で「健康開発通信」というお便りを定期的に作成しているのですが、事業所や職員数が多いこともあり、全職員に直接お届けするのではなく、まず管理者の方に送信する形式になっています。デジタル情報のお届けや個人への情報発信が今後の課題の1つです。

ーー健康経営に取り組まれて感じた効果や社内からの反響がありましたら教えてください。

取り組みからまだ3年目ということもあり、健康数値が改善されたという数字的な効果を確認できるまでには至っていません。現在は、職員の健康増進に必要な取り組みを地道に積み上げているという状況ですね。

ただ肌感覚としては、少しずつ意識を変えてくださる職員さんが増えていると思います。保健師さんからの受診勧奨や生活習慣の具体的なアドバイスをもとに目標を決め、それがきっかけになって行動変容し、実際に受診して報告書を提出してくださる方も増えてきました。

また、労働組合を通して、職員の方から健康経営へ取り組むことに対する期待、前向きなお声も実際に届いています。

定量的な効果は今後になると思いますが、定性的な部分ではすでに日々効果や反響を感じますね。

施策を進めるうえでは、健康管理システムを導入したことでやはり時間的な労力が下げられています。以前は書類を全てデータ化しなければならなかった作業が非常に効率化できているので、施策自体が進めやすくなりました。

事業特性に合う施策を進め、健康風土をつくっていきたい

ーー「健康経営優良法人2022」の認定を受けて、ご担当者としていかがでしたか?

この取り組みを開始してから、今年初めて認定をいただけました。会社の目標の1つでしたので、この認定は非常に光栄に感じています。介護業界の大手企業として認定を受けたのは当社が初めてですので、業界を引っ張っていくという意味でもインパクトがあったのではないかと思います。

当社の強みでもあり、取り組みを進めるうえで難しい点でもあるのが、事業所数と職員数の多さです。健康経営優良法人の認証にかかる調査結果でも、取り組みに関する項目に課題が多くありますが、認定で高評価を得るためというよりも、会社の健康課題の実態に合わせた施策を進めていくことが重要だと考えています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

この2年間は、PDCAサイクルを回していくための土台づくりをしてきました。ようやく必要なデータを数値化できる環境が整ってきましたので、今年度以降、本格的にエビデンスに基づいた施策、取り組みを展開していけると思っています。今後も事業特性や実態に合った施策をしっかりと検討して、展開していきたいですね。

また、会社の中に健康風土をつくっていくことも大きなテーマだと考えています。「SOMPOケアは健康経営に力を入れている」と職員の方々に実感してもらうこと、そして健康に対するリテラシーを上げてもらうことが非常に重要だと考えています。

ーーありがとうございます。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

健康経営は数年で結果が出るものではなく、一度始めたら終わりのないものだと感じています。「経営」という言葉がつくように、経営戦略の1つとして、ヒューマンリソース分野の取り組みとしてとらえることが必要です。

先ほどお話したように、生活習慣病の多くは気づきにくいものです。実際に、「肝機能の数値が心配なので産業医面談を受けてほしい」と連絡をした職員が、すでに肝機能が原因で入院してしまっていたという事例がありました。やはり健康改善のためのアプローチは、早いに越したことがないと感じています。

企業が健康経営に力を入れて会社の文化・風土を変えていくことで、職員の健康リテラシーがどんどん変わり、ご家族や周りの方にもその意識が波及していくと考え、この取り組みを続けていきたいですね。

ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

今回お話を伺った企業はこちら:SOMPOケア株式会社

インタビュアー:青柳和香子

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