
歯科医療機器の世界トップシェアを誇る株式会社ナカニシは、「全世界の人々の健康寿命の延伸に大きく貢献できるOnly Oneメーカーになる」という長期ビジョンを掲げています。そのためにまず社員の健康保持が必須と考え、健康経営に取り組んでいるそうです。
今回は同社の人事部・健康増進課の世田 学(せた がく)さん、安倍 亜紀子(あべ あきこ)さんにお話を伺いました。
世界トップの「削るテクノロジー」をもつ株式会社ナカニシ

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社について教えてください。
弊社は1930年に創業し、今年で92周年を迎えました。栃木県鹿沼市に本社・工場を構え、国内主要都市に営業所を設置しています。創業以来の「削るテクノロジー」を核に、歯科医療機器・外科医療機器・一般産業用製品の各分野で成長し続けてきました。
現在は海外15ヵ国に販売子会社を持ち、135ヵ国以上に向けて製品を販売しており、ハンドピース(歯科治療用ドリル)は世界トップシェアを誇ります。高性能で高品質な「NSKブランド」は世界中の歯科医師から高く評価されています。
弊社の製品は鹿沼市の本社・工場で一貫生産し、部品の内製化率は約90%を誇ります。高い内製化率は、製品設計の自由度やコスト競争力を高めるほか、高品質で安定的なものづくりにも寄与しています。
ーー健康経営の取り組みを始められた背景を教えていただけますでしょうか。
弊社は2020年に長期ビジョン「VISION2030」を策定し、「全世界の人々の健康寿命の延伸に大きく貢献できるOnly Oneメーカーになる」ことを志向しています。
このビジョンを実現していくためには、まず私たち自身が健康であり続けることが重要であると考えました。弊社は従業員一人ひとりが率先して、自律的に、心身の健康の保持と増進に取り組み、自分自身の健康価値を高めていけるように様々な取組みを行っています。
これまでも歯科医療機器メーカーとして「歯の健康が体の健康に通じる」という考えのもと、社内歯科検診をはじめとする従業員の口腔衛生に関する取り組みを行なってきましたが、改めて歯の健康・体の健康・心の健康に着目して、総合的な取組みを進めていくことにしました。
5つの健康課題と改善に向けた取り組み

ーー社員の方の健康状態について、改善の必要性を感じていたことはありますか?
ポイントとしては5つあります。1つ目は、歯の健康についてです。歯科機器メーカーとして、従業員への歯科健診を積極的に行ってきましたが、この2年はコロナ禍のため中止を余儀なくされました。従業員一人ひとりが歯の健康に関心を持つ働きかけを続けていきたいと考えています。
2つ目として、働く世代に多い婦人科系疾患の検診を受ける機会が必要だと考えました。
従来、定期健康診断は巡回で行っていましたが、婦人科系疾患の検診項目は実施していませんでした。
3つ目は、健康診断の集計結果から判明した脂質異常の割合の高さです。糖代謝異常の方は健保平均と比較しても低い傾向でしたが、徐々に増加してきていました。生活習慣病の予防に向けて、栄養に関する正しい知識をつけてもらうこと、その知識を生活に取り入れて改善してもらう必要がありました。
4つ目は、喫煙率の高さです。健保平均よりやや高く、なかでも女性従業員の喫煙率は高い傾向でした。弊社の健康経営のキーワードでもある口腔衛生の観点からも、喫煙率の高さは課題であると考えました。
5つ目はメンタルヘルス不調による休職者の復帰支援体制です。これまで、所属部署と健康増進課で連携し対応してきました。復職後のフォローによる再発予防をより効果的に行うために、第三者の専門家も含めた、よりきめ細やかな支援体制が必要ではないかと考えました。
ーー課題は非常に明確だったのですね。実際に取り組んだ施策も詳しく教えてください。
歯の健康については、歯科健診の結果「う歯あり」判定となった方、全員からその後の受診状況を確認しています。健診から治療へ確実につなげることが必要ですね。歯周病の有病率が高い傾向にあるのも分かっていますので、歯科メンテナンスの啓発活動もしていきたいと考えています。
本社での巡回健診時に、婦人科系疾患の項目をセットにして一緒に受診できるようにしたところ、受診率は約67%になりました。婦人科系疾患の検診費用は会社が補助しています。また受診申込時に、市の健診や医療機関で経過観察中である方の人数も把握しました。
脂質異常の改善については、個人の生活習慣に合わせたアドバイスができるよう、個別の栄養相談を行ないました。健診結果データや食事傾向に合わせた具体的な指導ができる一方、実施できる人数が限られてしまうという新たな課題が見えてきました。今後はより効果的な実施方法を模索していきます。
喫煙に関しては、禁煙への関心度を把握するためのアンケートを行ないました。厚生労働省の「禁煙支援マニュアル」を参考にして禁煙相談の手順書を作成し、個別相談を実施しました。また、禁煙補助剤や禁煙外来の受診費用を補助する制度をつくり、禁煙にチャレンジする従業員を支援しています。
メンタルヘルス不調による休職者からの復職に関しては、外部の復職カウンセリングを受けていただく体制にしました。まだ導入したばかりで例が少ないですが、私たちには言えない相談事にも対応していただいており、手ごたえを感じています。
「個人の問題」を超えて、会社全体で健康づくりを

ーー健康経営を実践する上で、大変だったことはありますか?
「健康は個人の問題である」と会社から介入されることに抵抗感を持つ方もいるようです。会社全体で「健康づくりに取り組んでいく」という雰囲気づくりが最も大切であり、かつ最も難しいことであると感じています。
まずは私たちが行なっている日々の取り組みを通じて、社内認知度を高めていきたいですね。
ーー健康経営優良法人認定の評価のフィードバックはいかがでしたか?
優良法人に認定されましたが、現状は「基準を満たしている」という状態で、弊社ならではの着眼点や施策がうまく表現できていないように感じています。今後は注力するポイントを絞り、重点的に取組む課題と施策を明確にして、取り組んでいきたいですね。
ーーお取組みによる効果、社内からの反響はいかがでしょうか?
弊社の健康増進活動に対して、従業員から「参考になった」「生活を改善しようと思う」というフィードバックを受けることもあり、大きな励みにもなっています。今後は部署ごとの取り組みや、管理職にも率先して参加してもらうなど、社内の色々な方々を巻き込んだ活動に発展させていきたいです。
治療をしながら働ける環境づくりも大切

ーー健康経営について今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
健康経営の取り組みを理解しやすくなるように施策マップを策定するなど、社内外への発信の仕方にも工夫が必要だと思います。ホームページの内容を充実させることもひとつの手段ですね。また、治療を続けながらも弊社で働ける制度・職場環境づくりを検討したいと考えています。
ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
定期的な健康診断を通じて自分の体の状態をきちんと把握することは基本でありながらも最も重要なステップであると考えています。変化が現れたら、かかりつけ医に相談するなり、検査に行くなり、必要な行動をしていただきたいと思います。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社ナカニシ
インタビュアー:青柳和香子
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