
ココネ株式会社は、『ポケコロ』を始めとするデジタルコンテンツを提供する会社です。育児フリータイム制度や無料で利用できる社員食堂など、大胆な施策を打ち出す背景には、社員の幸せを本質的に考え、取り組みを重ねてきた「温かい会社」の在り方が隠れていました。
今回は同社の人事部コーポレート人事労務チーム長の稲葉貴久さん、人事部コーポレート人事労務チームウェルネス担当の小比類巻晴耶さん、コーポレートブランディングチームの渡邉辰也さんに、健康経営に関する詳しい内容についてお話を伺いました。
デジタルワールドを構築するココネ株式会社

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業について教えてください。
渡邉さん(以下、渡邉):弊社は2008年9月に英語の学習サービス事業から始まりました。2011年にスマートフォン向けアプリの制作を開始し、『ポケコロ』をはじめとするアバターキャラクターの着せ替えと、コミュニケーションを楽しむCCP(キャラクターコーディネーティングプレイ)のサービスを行なっています。
デジタルワールドの構築にプラスして、ここ2.3年ではブロックチェーン開発やNFT事業も進めています。
社員が生き生きと過ごせる環境を作る

ーー御社は「健康経営優良法人2022」に認定されています。健康経営の取り組みを始めたきっかけについて教えてください。
稲葉さん(以下、稲葉):弊社のビジョンには「潔く生きよう、健康に生きよう、人生を磨こう」という生き方があります。無理に健康経営に取り組むという意識ではなく、このビジョンのもと、弊社のメンバー(社員のことを差す)の皆さんに幸せでいてもらいたい、成長してもらいたい、そしてもちろん健康でいてもらいたい、という思いからさまざまな施策を取り入れています。
ーー社員のことを想う、自然な流れで取り組まれているのですね。
稲葉:現会長が「温かい会社を作りたい」という思いを持って創業したこともこの考え方の基盤にあります。「暮らすように働く」という弊社のオフィスコンセプトにもありますが、仕事は生活の一部ですので、できるだけ自然に過ごしてもらいたいです。
例えば、タバコ自体が健康を害するものというのは百も承知ですが、喫煙率を下げるために無理に辞めさせたりするのは自然ではないと思います。取り組みの目的は何らかの認定を受けることではなく、メンバーに生き生きとしてもらうこと。その結果として、健康経営優良法人を受賞したのだと思います。
それぞれのライフステージを支える

ーー具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
稲葉:弊社のメンバーは20代から30代が多いので、上京や結婚、出産などライフステージが変化するタイミングを迎えることが多くあります。そのタイミングをサポートするために導入した施策はたくさんありますが、まず育児フリータイム制度を紹介します。
この制度は勤務日数×1時間をお子様のため使える制度で、例えば月の出勤日数が20日間だとすると20時間分を給与減額なしで活用することができます。まとめて使うことも1分単位で細かく使うことも可能。メンバーは、一般的な時短勤務のように夕方早く帰ってお子さんのお迎えに行ったり、学校行事で一日休みを取ったりとさまざまです。
育児と仕事を両立して、働きやすく長期に渡って活躍できる制度を作りたいという思いから取り組みました。
ーー柔軟性のある素敵な制度ですね。他にはどのような取り組みがありますか?
稲葉:6月から取り入れたのは週休2.5日制という、毎週水曜日の13時半以降を自由出勤とする取り組みです。働いても休んでもいい時間のため、6月中はスケジュールの都合もあり半分くらいの方が業務をしている状況だったのですが、7月以降はほとんど方が仕事を切り上げて帰宅したり、社内のジムの設備を利用したりしていたので、浸透してきていることを実感しています。
ーー社員の方からの反響はいかがでしたか?
稲葉:5月に制度の告知をした当初は、勤務時間が毎週4時間少なくなることで別のところにしわ寄せがくるのではないか?業績に影響はないのか?など、心配の声もありました。実際に運用してみるとそれぞれがスケジュールを調整して休みの時間を過ごしているので、7月以降はそのような声もなくなりましたね。
ーー貴社は社員食堂もとても充実していますね。
渡邉:2020年4月に三軒茶屋にあるオフィスに引っ越したのですが、その場所の決め手として一番大きいのは厨房の設備があったことです。以前は高層ビルにオフィスを構えていましたがそうすると厨房は作れないので、外部にキッチンを借りてそこから運んでくるような運用をしていました。しかし、それだと冷めてしまいますよね。
弊社は社員食堂のシェフも社員です。自分達がメンバーの健康や笑顔を守る業務を行なっている、という思いを持っているので、それを形にするために厨房が社内にあって、作りたてのものを出せる環境を重要視しました。
今年の6月からは月火木金の昼食と夕食を無料で提供しています。一人暮らしをしているとどうしてもコンビニで済ませることが多くなりますよね。そうするとお金もかかりますし、栄養バランスの観点でも不安なところがあります。

コロナ禍でなかなかできなかったのですが、社員食堂で歓迎会を行なうこともあるのでコミュニケーションをとる場所としても活用しています。
ーーこのような取り組みを行なうなかで苦労したことはありますか?
小比類巻さん(以下、小比類巻):オフィス内にあるジムでは、スタッフの指導方法がバラバラになってしまうという課題と、運動が苦手な方に「運動をしましょう」と直接伝えてしまうと、より苦手意識を持たれてしまう、という2つの課題がありました。
一般的にフィットネスクラブは、ダイエットやウエストを絞るためなどのコンセプトが細かく決められたものが多いです。そこでコンセプトを正しく設定し、守っていくことで2つの課題解決を目指しました。
コンセプトは「鍛えるジム」から「整えるジム」に変更。コンディションを整える、姿勢を整えるなど、フィットネスという要素ではなく生活の一部を整えるという意識です。コンセプトを細かく設定したことで指導の方向性を揃えることができました。また運動が苦手な人でも通いやすいジムに近づけたのではないかと思います。ジムを使うことで健康について意識する時間を提供できれば嬉しいです。

ーーマシンが置いてあるだけではなく指導もしてくれるのですね。
小比類巻:以前はマシンを置いてあるだけのときもありました。マシンの利用方法を知っている人にとってはいい施設空間だと思いますが、知らない人が多い環境だと運動のハードルが上がってしまいます。そこで、スタジオレッスンでヨガやピラティス、パーソナルトレーナーによるトレーニングやストレッチの指導を行なうなど、新しい取り組みを始めました。リラックス系が好きな人にはマッサージをすることもあります。
個人に合わせたサポートをしたい

ーー健康経営に関して、今後の展望を教えてください。
小比類巻:9月から産業保健師の方を直接雇用して保健室を作ることが決まりました。現在は大手の企業に保健室があることも多いですが、弊社の保健室は学校の保健室のように気軽に足を運べる施設を目指しています。特に用件がなくても保健室の先生と話しに行くときが学生の頃にあった人もいると思いますが、そのようなリラックスできる空間を作っていきたいです。
全社員の6割を女性が占めているので女性特有の体の悩みを相談できる場所としても利用してほしいですね。他の業務としては、健康診断の数値の見方やセミナーの開催なども考えています。
稲葉:弊社で大切にしている考え方の「ライフ・インクルード・ワーク」をさらに高いレベルで実現していくために、性別や年代といった属性情報と、アンケートで集めた定量的な情報、個人の面談記録を活かして、パーソナルな支援を行なっていきたいと思っています。
例えば、「この人にはトレーニングとコーチングを提供しましょう」「この人には語学を学んでもらいましょう」などです。個別最適化された支援をして、「生涯活躍したい」とメンバーに感じてもらえる会社を作っていきたいですね。
ーー最後に読者の方や健康経営に関する企業のご担当者様にメッセージをお願いいたします。
小比類巻:健康経営は、会社がどういうものを健康だと認識しているかによって方法やメッセージの伝え方も変わってきます。弊社は「温かい会社を作りたい」という想いがあるので、それを実現するためにはこういう制度があったらいいよね、という目線で取り組みを行なってきました。「どういう会社で働いてもらいたいのか」というところをしっかりと言語化することが重要だと思います。
稲葉:「健康経営をやろう」「ブランディングで取り組もう」と考えている企業は、難しいと思います。各会社にある、ミッション・ビジョン・バリューになぞらえて取り組み内容を考えることが大切です。「そんなこといわれてもできない」と思うこともあると思いますが、可能性のある施策を一つひとつ取り組むことで周りが変わっていきます。諦めずにやっていると、いつの間にか道が開けるのではないでしょうか。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:ココネ株式会社
インタビュアー:塩野実莉
サントリーウエルネスのおすすめ商品はこちら