
サン電子工業株式会社は、大阪府に本社を構える電子部品メーカーです。
「野菜ジュースの配布」や「ライザップの健康セミナー」など、新しい施策を導入して社内の健康意識の向上に取り組む、同社の総務人事部長の林さんにお話しを伺いました。
社員ならびに家族の健康なくして、会社経営は成り立たない

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業について教えてください。
林さん(以下、林): 弊社、サン電子工業株式会社は1958年12月に大宮電機株式会社として創業者が立ち上げた会社です。大手総合家電メーカーの協力会社として発足しました。
以来、電化製品などに使用される電子部品のアルミ電解コンデンサや基板や電源等の設計・製造・販売を行なっています。現在では自主自立を果たして電子部品メーカーとして世界中と取引をしています。
中堅企業でありながら、世界初の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの開発に成功し、車載部品としても使用されています。
国内社員数は約520名。国内には大阪本社の他に、島根県の出雲市と益田市、山口県の下関市に製造工場が、埼玉県のさいたま市に営業所があります。海外では製造拠点として中国の南通市に南通工場、営業拠点として上海・香港・台湾・アメリカ・ドイツがあります。
ーー御社は「健康経営優良法人2022」に認定されています。健康経営の取り組みを始めたきっかけについて教えてください。
林:弊社の先代社長(現会長)の「社員ならびに家族の健康なくして、会社経営は成り立たない」という思いから、社員およびサポートしていただいているご家族の健康を大切にするよう健康経営の取り組みを始めたのがきっかけです。
取り組みを続けるうちに、地域ごとの認定制度である山口県の「やまぐち健康経営企業」や島根県の「しまねいきいき雇用賞」(魅力ある職場づくりを行なった企業を表彰する制度)、大阪府の「大阪府健康づくりアワード(優秀賞)」の受賞ができたことは良かったと思います。
「健康経営優良法人」1回目の挑戦では認定していただくことは叶いませんでしたが、フィードバックをいただいたことで、弊社の強み・弱みを確認しながら改善しました。そのおかげで2回目の挑戦は健康経営優良法人大規模法人部門の認定を受けることができました。
「健康診断レポート」の活用で精度の高い取り組みを

ーー具体的な施策には、どのようなものがありますか?
林:当時は「生野菜を食べなさい」という小さな取り組みから始まりました。また冬になるとインフルエンザのワクチン接種を社員の費用負担なしで行なってきました。現在では野菜ではなく野菜ジュースの無償提供を、ワクチン接種については変わらず行なっております。
その他にも35歳以上の社員は全員人間ドッグを無料で受診、健康アプリ利用、禁煙支援、ラジオ体操などがあります。
社員の健康バロメーターのひとつである定期健康診断の後に、健康保険組合から集計データが確認できる「健康診断レポート」をいただいています。健康保険組合のご担当者から前年度との比較分析などをいただき、次のセミナーテーマを決める等、今後の施策の検討材料としています。
ーー健康セミナーのお取り組みについてご紹介いただけますでしょうか。
林:社員の健康経営に関する知識を増やすことが重要だと考えています。弊社では1年に1回、社員のセミナー参加を必須としています。

健康保険組合やサポートいただける企業様主催のセミナーを行なっています。「がんについて」「メンタルヘルスについて」「睡眠について」など、幅広くテーマを設定することを意識しています。従業員から最も反響が多かったのは、リモートによるライザップの運動セミナーですね。
以前は参加者により強く印象が残るように工場へ訪問して対面型セミナーを行なっていましたが、コロナ禍以降はリモート形式で開催しています。リモートだと同時開催できるというメリットがありますね。
ーー健康アプリもご活用されていると伺いました。どのようなことができるのでしょうか?
林:健康保険組合からおすすめいただいた、日々の健康状態を記録することができるアプリです。
例えば歩数管理や消費カロリーも確認ができます。健康診断の結果や、薬の処方箋の記録を見ることもでき、好きなタイミングで振り返ることが可能です。そしてこれはおまけですが8,000歩を突破すると電子マネーポイントがもらえたりもします。
野菜ジュースの配布で健康経営の認知向上を目指す

ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
林:そうですね。立ち上げ当初から、社員への認知度向上に苦労しましたね。「健康経営」という言葉がまだ世の中に広がっていなかった影響はあると思います。そこで先ほども話しましたが、まず社員へ野菜や野菜ジュースを配布することから始めました。この反響はとても良かったです。
健康経営優良法人の申請を初めて行なった頃は「健康経営」という言葉が認知されていない時期で、2回目に申請する頃には、社員だけでなく新卒面接を受けにくる学生さんからの反応が出始めました。世の中でも「健康経営」が広がってきたのだと感じるようになりましたね。
先ほどご紹介した健康アプリですが、個人の携帯にインストールして使用できるアプリのため、社員の半数ほどしか利用していない状況です。アプリの他に健康への意識を全社員が持つように、弊社では各工場に体重計や血圧計を設置して環境づくりを行ないました。気軽に健康状態を測れるようになると、率先して計測する人につられて他の社員も計測するようになっています。
「個人の健康」を会社が率先して管理してくれるこの動きは、一社員としてありがたいことだと私自身も実感しています。
環境を整えることもそうですが、定期的に健康に関するアンケートで「コンディションはどうですか?」「能力を発揮できていますか?」などの質問を行ない、取り組みについて試行錯誤を繰り返しているところです。
2021年には4代目代表取締役社長の礒垣が就任し、さらに強く健康経営を進めています。
今後の課題としては、毎年新しく入社される方とも健康への意識を共有できるような体制を整えることです。現在はマラソン大会への参加などで、健康について触れるきっかけを提供できるよう考えております。

ーーありがとうございます。では最後に読者の方や健康経営に取り組まれる企業のご担当者様にメッセージをお願いいたします。
林:弊社では「社員の皆さんを大切にする」という社長のかけ声がきっかけとなり健康経営に関する取り組みを始めました。
我々も初めは健康経営の認知度向上で苦労したことが多かったのですが、健康経営について社員と共有することで、いい方向へ相乗効果が生まれたと思います。いつ始めても遅くはありません。だから今始めても大丈夫です。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:サン電子工業株式会社
インタビュアー:塩野実莉