
株式会社電通名鉄コミュニケーションズは、経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されました。
これは電通健康保険組合に加入する企業として初の認定。どのような健康課題があって活動を始めたのでしょうか。
今回は同社の専務取締役 後藤哲男さんと人事総務部 今岡聖一朗さん、平田恵子さんにお話を伺いました。
「名古屋を日本で一番元気な街にする」ことを目指し、社員の健康増進をサポート

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容を教えてください。
平田さん(以下、平田):当社は、2007年に現社名でスタートした会社で、株式会社電通グループと名古屋鉄道株式会社が株主です。
各種メディア事業、イベントやセールスプロモーション、OOHメディアの取り扱い、デジタルビジネス、マーケティングコミュニケーションなど、あらゆる広告コミュニケーションを展開しています。
ーーありがとうございます。健康経営に取り組み始めたきっかけは何だったのでしょうか?
平田:弊社が実現したい未来に「名古屋を日本で一番元気な街にする」というものがあります。ただ、広告会社という業種柄もあってか社員の健康リテラシーが決して高いものではなく、健康に関しては少しおざなりになってしまう傾向がありました。
このままだといずれは体に負担がかかり、疾病や生活習慣病につながってしまう可能性があります。地域を元気にしようと考えている弊社の社員自身がまず健康であること、そして長く元気で働くことを目指して、健康経営を進めています。
また、弊社が加入している電通健康保険組合を十分に活用できていないという課題もありました。一方、名古屋鉄道では以前から健康経営の推進を進めていたので、健康増進のノウハウがあります。そのノウハウを電通グループの中に生かすことも目指していることの1つです。
後藤専務(以下、後藤):私は名古屋鉄道から出向していますが、以前、名古屋鉄道の健康保険組合に在籍していたこともありました。電通名鉄コミュニケーションズの働き方改革においても、電通・名鉄それぞれの健保組合がもつ良いところを活かして、従業員の健康につなげていけたらと考えています。
今岡さん(以下、今岡):取り組みを始めた当初は、健康経営について手探りで学びました。電通健保では初めての「健康経営優良法人」認定でしたので、名古屋鉄道さんのノウハウがあってこそだったと思います。今後も名鉄健保、電通健保との連携を強めながら取り組んでいきたいと考えています。
移転を機に、健康に配慮したオフィスづくり

ーー実際の施策、お取り組みについて教えてください。
平田:2022年3月の本社オフィス移転をきっかけに、健康に配慮したオフィス空間をデザインしました。すべてフリーアドレスで、その日の取り組む仕事やメンバーに合わせ、また、体調に応じて好きな席に座り、ストレスフリーで働けるようになっています。
立ったまま仕事ができるスタンディングデスクや自分の身長に合った高さに調節できる昇降付きのデスクなど、デスクワークが多い社員に配慮した席も用意しています。
また、クッション部分がバランスボールのように不安定になっていて、仕事をしながら体幹を鍛えられる椅子もあります。
半円形のデスクなどもあり、その日の仕事や打ち合わせ内容に合わせた空間で仕事ができるオフィスになりました。
ーー自分で選べるのがポイントなのですね。社員の皆さんからの反応はいかがですか?
今岡:働きやすい空間になったという声をよく聞きますね。外部の方にも内覧会のような形でご覧いただくことがあり、「うちもこうしたいなあ」とおっしゃる方が多いです。
「食べ合わせ」のセミナーや社員食堂で食の改善をサポート

ーー健康に関するセミナーも開催されたそうですが、どのような内容でしょうか。
平田:2021年に、食生活の改善をテーマとしたオンラインセミナーを実施しました。名古屋本社に勤務していると外食やコンビニのランチになりがちなのですが、「ファストフードも食べ合わせを良くすれば健康に配慮できる」ということを管理栄養士さんからレクチャーいただきました。
身近な食品で例を挙げていただき、適宜参加者への問いかけも交えて進めたため、参加者からも意見や「普段はこんなものを食べています」といった発言が出て、反響が大きかったです。
ーーファストフードを否定するのではなく、食べ合わせの提案をするというのが新鮮ですね。
平田:講師の管理栄養士さんと相談する際に、弊社の勤務スタイルや特徴をお伝えしてこの内容になりました。
野菜など栄養価の高いものを摂るのはもちろん大切ですが、やはり好きな食べ物は人それぞれありますし、我慢をともなう改善はなかなか続かないと思います。
まずは自分の近くにあるもので置き換えをしたり、メニューに追加したりすることで栄養価を高められるということを知り、実践してもらうことを目的として開催しました。
ーーグループ共有の社員食堂もあると伺っています。
今岡:名鉄グループ内共用の社員食堂があります。栄養バランスの取れたメニューが4種類あり、価格も手頃なので、福利厚生の1つとしてよく利用されています。
後藤:昼食時の名古屋駅前はどこのお店も混み合うので、すぐに食べられるという面でも社員食堂は便利ですね。私もときどき利用しています。
「実践してみたよ」の声で活動の意味を実感
ーーお取り組みを始めて、社内に何か変化はありましたか?
平田:はっきりした効果を感じるのはまだ少し先だと思っていますので、焦らず1つひとつ取り組みを進めていきたいですね。
ただ、産業医の監修のもと発信している健康情報には社員から反応があり、励みになっています。毎月作成している掲示物に対して「今月の掲示見たよ」「この間掲示されていた内容を実践してみたよ」といった声がありますね。
会社にいる時だけでなく、その人の人生全体がより健康的になるようにと考えて活動しているので、こうした反響があると、その人が自分の体と対話をするお手伝いができたのかなとうれしくなります。
焦らず、社内の理解を得ながら進めていきたい

ーーお取り組みを進めるうえで難しさを感じる場面はありますか?
平田:「伝える難しさ」を感じることがあります。社員には体を大切にしながら働いていただきたいのですが、健康に気を付けることを煩わしい、面倒くさいと感じる人もいると思います。自分と相手の思いが違うときに、どんなふうにその距離を縮めていけばいいのか、悩むことはありますね。
後藤:やはり焦らないこと、1つひとつ進めていくことが大切だと思います。いきなりすべての施策をきちんとやるというより、少しずつ社内の理解を得ながら健康意識を浸透させていきたいですね。
ーー今後注力されることなど、計画がありましたらお聞かせください。
平田:健康経営は昨年の夏頃から本格的に取り組み始めましたので、まだまだこれからだと思っています。
具体的には運動習慣の定着、高齢社員の健康課題、PMSや婦人科系疾患など女性特有の健康課題、禁煙といった分野で施策を検討していく予定です。
運動に関しては、特に30~40代で運動習慣のある社員が少ないことがわかっています。保健指導の該当者予備軍になりそうな社員もいますので、運動を習慣づけるサポートができたらと考えています。
煙草は嗜好品ですので禁煙を強制することはなかなかできないですが、健康を大切にしてもらえるよう、根気よくお伝えしていきたいですね。
また、健康経営に関する対外的なコミュニケーションもどのように取り組んでいくか、模索中です。
後藤:社員の皆さんの健康を第一と考えて取り組んでいけば、会社の成長にもつながっていくはずですから、我々としては焦らずじっくり進めていきたいなと考えています。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社電通名鉄コミュニケーションズ
インタビュアー:青柳和香子