
株式会社ヤマハコーポレートサービスはヤマハグループの人事・経理や情報システムなどのシェアードサービス機能を担っているヤマハ株式会社のグループ企業です。
健康経営の取り組みでは「健康経営優良法人2018」を取得し、上位500位の企業が認定される「ホワイト500」も取得されました。働きやすい職場作りとして年次有給休暇制度や復職プログラムも充実しており、個々の従業員の人生を豊かにすることと長く働ける職場づくりに取り組んでいます。
今回は同社経営管理部の大石様と山本様にお話を伺いました。
ヤマハグループのシェアードサービスを展開
ーー御社の沿革や事業内容について教えていただけますか。
弊社は、ヤマハ株式会社100%出資の人材総合サービス事業を行なうグループ企業として、1997年に創業しました。2010年10月からグループの人事シェアードサービスを開始し、そのあと、2011年4月にグループの保険事業とメディア事業を担う会社と合併するなどして、事業領域を順次拡大してきました。創業当初は数人だった従業員数も、現在は700人ほどの規模になりました。
弊社が行なっているシェアードサービスは、音・音楽を通して「感動を・ともに・創る」ヤマハグループ企業の人事・経理・総務・物流や情報システムのコーポレートシェアードサービス事業と、総合人材サービス、トラベルサービス、メディアプロダクション、保険サービスのビジネスシェアードサービス事業を展開しています。
ーー健康経営に着目したきっかけは何だったのでしょうか。
2011年以降、シェアード事業が急速に拡大した影響で一部の部署に業務が偏るなど、ワークライフバランスの取り組みが進められていませんでした。そこで全社を挙げてワークライフバランスの取り組みを開始しました。
2017年に経済産業省の健康経営優良法人の認定制度があることを知り、弊社の健康経営の状況を把握する目的も含めて調査票へ回答した結果、2018年の「ホワイト500」に認定され、同時に弊社の課題も見えてきました。
ーー具体的にどういう課題が見えてきたのでしょうか。また、従業員のみなさんの健康状態について改善が必要だと感じた点はありましたか?
健康経営優良法人からのフィードバックシートでは、弊社のコミュニケーション施策の対応や労働時間の把握が相対的に不十分というご指摘をいただきました。この指摘を踏まえ、あらためて自社の状態を振り返った結果、時間外労働が多く、ワークライフバランスが崩れてしまった一部の従業員のモチベーション低下や、健康状態低下への懸念(メンタル傷病発症、生産効率の低下など)、部門間のコミュニケーション不足(各事業部単位で業務が完結してしまうため部門を超えた横のつながりが希薄になりがち)による社内の一体感の醸成ができていなかった事が課題であることを再認識しました。
そこで、こうした課題を改善するための取り組みとして、従業員の健康への意識付けとコミュニケーション活性化を目的とした全社の健康セミナーの開催や、年次有給休暇の取得促進施策として、「プラスワン休暇」「マイバケーション休暇」を新設しました。
また、長時間労働者に対しては、モニタリングや長時間労働者への措置基準の運用を徹底することで改善を図っています。部門ごとに時間外労働時間を集計し、経営会議や安全衛生委員会で報告したり、措置基準の対象となった従業員の上長へ連絡して、該当従業員との面談などを実施させたりするなど、従業員の健康保持に努めています。
健康セミナーで健康への意識づけ、コミュニケーションの活性化を図る

ーー健康セミナーについて詳しく教えていただけますか?
健康セミナーは、従業員の健康への意識づけとコミュニケーション活性化を目的として毎年実施しています。開催当初の2016年は、外部講師を招いて管理職向けに行なっていましたが、そのあと、健康経営を支援していただいている弊社の産業医の健康講話を聞くセミナーを開催しています。
セミナーのテーマは、そのときの従業員の健康状況で、課題になっていることを取り上げています。2020年は、コロナ禍の影響で従業員どうしの接触が減り、コミュニケーションが希薄になっていたので、Well-being(精神的、肉体的に幸福である状態を目指すこと)をテーマに取り上げました。また昨年は、テレワークの導入が進んだことによる生活習慣の乱れが課題に挙がりましたので、生活習慣の改善にどう取り組むかを講義してもらいました。
健康への意識付けとともにコミュニケーションの活性化を目的としているため、必ず講話のなかで、グループワークを取り入れてもらっています。以前は、広い集会室に集まって実施していたので、なるべく同じ部門の従業員が隣同士にならないように座席を配置して、普段お話しする機会のない人とコミュニケーションを図ってもらうように配慮しました。
2020年からはZoomを用いたオンラインでの開催としました。ブレイクアウトルームの機能を使用して、参加者をランダムに部屋分けする仕様にしたことで、部門を超えたコミュニケーションを取る良い機会になっていると思います。
従業員が自分を大切にする時間をつくる
ーー情報を伝えるだけでなく、セミナーのなかでコミュニケーションを図る取り組みが素晴らしいですね。そのほかの取り組みとして、年次有給休暇の取得促進施策についてもお教えいただけますか。
こちらの施策は、夏期や年末年始の長期休日、土日祝日に有給休暇をつなげて、より長い休暇を取ってもらうことで、自己啓発や心身のリフレッシュ、家族と過ごす時間として活用してもらうなど、自分を大切にする時間を創出することを目的とした施策です。
「プラスワン」制度は、一日の休暇を休日につなげて取得できるもの、「マイバケーション」制度は、2日の休暇を休日につなげて取得できる施策です。数日だけの休暇だとできることが限られたり、心が休まらなかったりするので、少しでも長い期間のお休みを取って、ゆっくりしてほしいという思いがあります。この施策が浸透することで、休みやすい雰囲気作りの一端になればうれしく思います。ただ年次有給休暇は従業員が自由に使うものなので会社が休暇取得を強制することにならないよう心がけています。
不安を緩和する療養者の手引き
ーー休みを取りやすい空気を作るというのが素敵ですね。御社ではメンタルヘルスの復職者が100%とのことですが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
休職者の復職プログラムでは、メンタル疾患の場合、2週間休むとプログラムを始動します。休職者の不安を少しでも緩和するために、療養が始まるタイミングで「療養の手引き」という書面を所属長から本人に渡し「焦らず、まずはゆっくり治療に取り組んでくださいね」という案内しています。そして、休職中に主治医から復職の許可が出たら、指定医、産業医の診断を経て復職する流れです。
月に1度は必ず所属長が面談を行ない、休職者の様子を確認するとともに、人事異動や組織変更などの会社状況を伝えて、休職者に職場が確保されている安心感を持っていただく機会にしています。
ーー健康経営に取り組まれたことで社内に変化があったことや、従業員の方からの反響を教えていただけますか。
Well-beingをテーマにしたセミナーを開催したあとに、「何ができたかではなく、どう感じたかが重要」という内容を実践してみて、職場の雰囲気が良くなったという声がありました。
また従業員が、健康経営に力を入れている会社ということに誇りを持って、学生や内定者に案内している姿も見かけます。このことが優秀な人材の確保にもつながっていくのだと思います。採用活動をしていると、「健康経営を重視している会社なので安心して働けると思い応募しました」とお伝えいただくこともあり、これまで取り組みを進めてきた成果の一つだととらえています。
働きがいの高い組織へ

―今後の展望を教えてください。
もともと会社の方針として「人を大切にしよう」という考え方があり、生き生きとやりがいを持って、長く働き続けられる職場環境を従業員に提供できるよう、健康経営、ダイバーシティ、両立支援という3つの取り組みを継続しています。
そのなかで、今年4月に就任した弊社社長が「働きがいの高い組織へ」という方針を打ち出しました。今後は、従業員一人ひとりが働きがいを持って自分らしいキャリア形成ができるように仕組みを作っていきます。こういった仕組みが健康経営にもつながっていくと思います。
昨年、ヤマハグループ全従業員を対象とした「働きがいと働きやすさ」についての調査を行ないました。弊社では、残念ながら一部の従業員が「働きがいを感じられていない」という結果が出ました。この結果を受け、社内プロジェクトとして「働きがい」をテーマに、若手従業員を中心に構成したプロジェクトメンバーが会社へ施策を提案するという取り組みを実施しています。
ここからどのような施策が出てくるのかを楽しみですね。提案された施策については社内の委員会で精査して、実際に取り組んでいこうと考えています。プロジェクトに参加することで、働きがいについて自分のことを考える良いきっかけになればうれしいです。
自分らしく働くことで一人ひとりが生き生きと活躍する職場に
ーー健康に関心のある読者の方に向けて最後に一言メッセージを頂けますか?
会社が一方的に取り組むのではなく、従業員一人ひとりが参加できるような仕組みを作ることで、健康経営の取り組みが自分事として進んでいくと思います。弊社は働きがいの高い組織を目指しています。たとえば従業員が「働きがいってなんだろう?」と自分自身へ問いかける機会を作ることが、自分らしく働く(=やりがいをもって生き生き働く)ことにつながり、それが個々の人生を豊かにしていくと思います。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社ヤマハコーポレートサービス
インタビュアー:塩野実莉
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