
ヒューマンリレーションネクスト株式会社は、エンジニアの派遣を行なう(SES)会社です。2020年から女性活躍推進に取り組み、2022年には健康経営優良法人を取得しました。
経営会議でも、従業員の稼働状況や勤怠状況について話し合うなど、従業員と向き合うことを重要視しています。
今回は、同社の総合管理部の森谷さん、近藤さんにお話を伺いました。
エンジニア派遣の事業を行なう、ヒューマンリレーションネクスト株式会社
ーー本日はよろしくお願いいたします。御社の沿革や事業内容を教えてください。
近藤さん(以下、近藤):当社は、2006年10月に創業し、当時はヒューマンリレーションネットワークという社名でしたが、2013年7月に現在の形であるヒューマンリレーションネクスト株式会社となりました。SESと呼ばれるお客様先にエンジニアを派遣する事業を行なっています。従業員数は約120名です。
健康経営の取り組みとしては、女性活躍促進に関する状況が優良な企業を、厚生労働省が認定する「えるぼし認定制度」において、2021年4月に三ツ星を取得。2022年3月には健康経営優良法人を取得しました。
ーー御社は「健康経営優良法人2022」を取得されています。健康経営を始められたきっかけは何だったのでしょうか?
近藤:社長が発起人となり、厚生労働省が安全衛生優良企業を認定する「ホワイトマーク」取得に取り組み始めたことがきっかけでした。これは残業時間を短くする、有給取得率を高くする、健康診断の有所見率を低くする、などが評価項目になっている資格です。資格取得にあたり、ほかの認定資格も探していたところ健康経営優良法人を見つけ、両資格取得のためにも取り組みを強化しました。
取り組みを行なうなかで、エンジニアはパソコンの作業が多いため運動不足になりやすいという課題が見えてきました。また保険組合から頂けるスコアリングレポート(組合の平均と比べて当社の社員がどのような健康リスクが高いか、フィードバックがもらえるシート)を見ると、朝食を抜いている人が多いというのも現状の課題です。
ーー課題に対しては、どのような取り組みをされているのでしょうか?
近藤:運動不足の改善については、当社で歩行の奨励を行なっています。従業員それぞれがスマートフォンのアプリで歩数を測定し、歩数が多い人を表彰して1位の従業員にギフトカードをプレゼントするという取り組みです。最近はこの取り組みに取引先も巻き込もうという話をしています。
当社は人材を派遣するだけではなく人材を借りることもしています。まだ具体的な制度設計はできていないのですが、その派遣頂いた従業員の方にも歩数を出していただき、当社の従業員同様に表彰するよう取り組み内容を更新する予定です。取り組みのなかでコミュニケーションを取り、従業員同士の関係づくりにもつながっていけばうれしいですね。
現在はまだ4%ほどの社員しか参加していない状況ですので、今後も参加者を増やすためにプレゼントの額を上げるなど、内容を工夫して取り組んでいきます。
また、朝食を食べていない従業員が多いという課題については、当社で発行している社内報で「朝食の重要性」について取り上げ、従業員に生活習慣を見直すきっかけを提供できればと考えています。従業員一人ひとりに食に関する理解を深めてもらうため、保健組合である関東ITソフトウェアと連携を取り、セミナーの実施を検討しています。
勤怠アプリで残業時間の抑制を図る

ーーそのほか、どのような施策に取り組まれていますか?
近藤:注力している施策として、残業時間の抑制を目的とした勤怠アプリの導入がありますね。以前は、エクセルのシートに勤怠情報を入力してもらうシステムでした。このシステムだとリアルタイムで勤怠を把握することが難しく、締日の直前にまとめて記入する従業員もいたので、正確なデータを収集するのも難しいという課題がありました。
勤怠アプリを導入してからは、従業員がアプリ上でボタンを押すだけで打刻をすることができ、毎日全社員の稼働がわかります。毎日、稼働が高くなっている従業員がいないかを確認しています。従業員はお客様先に常駐していますのでそういった管理が必要ですね。稼働が高い従業員がいた場合には、担当者が本人の状態を確認するなどフォローを行ないます。あまりにも稼働が高い場合には、お客様先との調整を行なうことで、従業員の就業時間の調整を行なっています。
調整措置をとる基準として、基本的には1カ月の残業時間が45時間を超えないようにしています。その時間を超えてしまった場合でも、2カ月連続で45時間を超えないようにすることや、7月から6月までの1年間で5回は超えてはいけないという社内ルールもありますね。当社では45時間を超える人はほとんどおりません。
経営会議でも従業員一人ひとりに向き合う
ーー御社は経営層が健康経営に強く関与されていると伺いました。詳しく教えていただけますか?
近藤:従業員の稼働状況や健康状態などを、社長を筆頭にした経営会議で毎月取り上げています。改善策を一緒に考える場になっていますね。
従業員の稼働状況については、取引先と調整して従業員の就業時間を調整することや、人手不足が原因の場合には、当社の社員を客先に増やすというアプローチも検討します。また、休職している従業員の健康状態の共有では、どのようにフォローをするのか、誰がいつ面談するのか、部署の異動など一人ひとりの状況や今後の対策を話します。「一人ひとりにどう向き合うか」ということを大事にしていますね。
ーーありがとうございます。健康経営に関するお取り組みのなかで大変だったことはありましたか?
森谷さん(以下、森谷):勤怠アプリの導入はとても大変でしたね。使い勝手の面で、残業管理するにはどのような仕様がいいかなど、選定から始まりました。もともと従業員のさまざまな情報は紙ベースで管理していたので、すべてをデータベースに落とし込む作業に工数と時間がかかりとても大変でしたね。
勤怠の確認についてはアプリを導入したことで楽になりましたが、導入開始直後は従業員の皆さんもアプリに慣れていないため、出退勤ボタンの押し忘れが多発しました。それにともなう打刻修正についても実務的な意味では大変でした。
打刻修正については継続的な対応が必要ですが、半年ほど運用してみるとおおむね浸透しましたね。従業員はお客様先で就業しているため顔を合わせて説明する機会がなく、マニュアルの送付やメールでの連絡だったので浸透までに少し時間がかかりました。
社員の健康と会社の成長の両立
ーー今後の展望を教えてください。
近藤:現在、中長期的な経営計画を作ろうとしています。今までは社員の生産性を上げるとか、働きやすくするとか、従業員が健康で働けるように、という考え方だけが独立しがちだったのですが、経営戦略と連動させてよりシナジーを生むような形で取り組んでいきたいと考えています。
日本中の企業が健康経営に取り組むことで、未来の明るい社会に
ーー健康に関心のある読者の方に一言メッセージをお願いいたします。
近藤:健康経営優良法人をはじめとする会社資格に取り組み始めたことで、社員の働きやすさを意識するようになり、新しい施策を考えるきっかけになりました。そのことが良い会社作りや良い社会作りにもつながると考えています。ほかの企業さんとともに、社会貢献するという意味でも健康経営を目指せるといいと思っています。
森谷:働き方改革やコロナ禍によって、健康への意識や価値観が大きく変動したと感じています。最近だと育児休業の法律が改正されましたし、本当にいろいろな方向で働き方に変化が起こっていますよね。従業員の意識が多様化したことによって、仕事のやりがいとは別に、今まで以上に健康で安全安心に働ける環境を会社に求め、会社はそれに応える必要があります。各会社ができる範囲で施策に取り組むことで、豊かな社会を実現できると思うので、日本に存在しているすべての企業がその姿勢で取り組めれば、この先の未来も明るいと感じます。各社が協力しつつ、良い取り組みを共有する体制ができたりすると健康に対する意識がさらに広がっていくと思いますので、この健康経営優良法人という資格自体がより認知されてほしいですね。
ーーお話しいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:ヒューマンリレーションネクスト株式会社
インタビュアー:塩野実莉
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