愛知県日進市に本社工場を置くマスプロ電工株式会社では、「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定される前から、従業員の健康やワークライフバランスを考慮した制度を整えてきました。
今回は同社の総務部法務グループの所属する熊﨑 昭和さんと総務部人事グループの羽田 いずみさんにお話を伺いました。
テレビの普及とともに成長してきたマスプロ電工株式会社
ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業についてご紹介ください。
熊﨑さん(以下、熊﨑):当社はテレビ受信関連機器やセキュリティー機器、IoTソリューション機器などの開発、製造、販売を行なう企業です。
創業者の端山孝は当初、ラジオやアマチュア無線用機器などを製作していました。ちょうどその頃日本でテレビ放送が始まり、端山はテレビアンテナの製造、販売も始めました。
カラーテレビが始まった時には、世界で初めて塗装したカラーアンテナを発売し、「あの家にはカラーテレビがあるんだ」という目印になり、好評を博しました。当時は皇太子ご成婚や1964年の東京オリンピックなど大きな出来事があり、テレビの普及が加速した時期です。当社もテレビの成長とともに業績を伸ばしていきました。
現在はテレビ受信関連機器に加え、当社が得意とする高周波技術を利用したサービスも展開しています。例えばLPWA(低消費電力・低コストで遠距離通信を実現する通信方式)によって温度、湿度、気圧などのデータを収集するといった製品です。
いざというときを支える「預かり有休制度」
ーー御社では従業員の健康について、どう考えていらっしゃいますか?
熊﨑:当社の経営理念の一つに「健全な心と健康であることが人生で最も重要」というものがあります。そのため以前から、心身の健康は大切なものだと考えています。
それがわかる例として、「預かり有休制度」というものがあります。通常、2年間使われなかった有休は失効しますが、この失効してしまう有休のうち最大5日分を60日間まで積み立てられるという制度です。
12年間で最大60日分の有休を積み立てられるので、例えば病気療養のために現在の有休を使い果たしてしまった場合でも、預かり有休から最高60日間使って休むことができます。その後初めて休職扱いになるという仕組みです。
ーー使わなかった有休が無駄にならず、いざというときに活用できるのですね。最近できた制度なのでしょうか?
熊﨑:私が入社した1987年当時にはすでに運用されていました。入社したての若い頃は「なぜそこまで手厚いのだろう」と思っていましたが、今では当時非常に珍しい、先進的な取り組みだったのではないかと思います。
最近は企業での禁煙や分煙対策も重要となっていますが、やはり私が入社した頃にはすでに独立した喫煙部屋が設けられていました。今では構内全面禁煙になっていますし、健康経営という概念が生まれる前から従業員の健康に配慮した取り組みはあったと思います。
健康経営度調査に回答し、「健康経営優良法人」認定の申請を作成していくうえで新たな制度づくりも進めてきましたが、それだけではなく、既存の取り組みで調査項目に該当するものを掘り起こすプロセスもありました。
計画有休と時間休で、休みを取りやすく
ーー御社ではワークライフバランスの実現に力を入れていると伺っています。ほかにはどのような制度がありますか?
熊﨑:先ほどの「預かり有休制度」とは別に、「計画有休制度」というものもあります。これは年度始めに7日間の有休を先に登録するというものです。登録した有休は優先的に休むよう指導していまして、上長も例外ではありません。
また、フレックスタイム制と半日有休制度をかけ合わせたことで時間休を取れるようにしましたので、よりフレキシブルに休みを取れるようになりました。
ーーあらかじめ登録しておくと「積極的に休む」という意識につながりそうですね。時間休の取得状況はいかがですか?
熊﨑:従業員の平均年齢が40歳を超えているということもあり、通院のために活用している例が多いですね。
羽田さん(以下、羽田):私も通院や平日の夕方に済ませたい用事があるときなどに時間休を取っています。
営業所の社員に用事があって電話をすると、「フレックスなので〇時に出社予定です」と返ってくることもよくあります。部署を問わず、日頃から活用しやすい制度なのではないでしょうか。
熊﨑:その他にも水曜日はノー残業デー、毎日20時以降のパソコン使用は事前申請制にしており、時間外労働の削減・管理につなげています。
「産後パパ育休」を取りやすくする独自の制度
ーー最近新たに始められたことはありますでしょうか?
羽田:10月から始まる「産後パパ育休制度(出生時育児休業)」をより利用しやすくするために、産後パパ育休中の部分的な就労や在宅勤務を可能にする柔軟な体制づくりを進めているところです。
「出産サポート休暇」という制度もあります。お母さんが母子手帳を受け取ってから子どもが一歳になるまでに、5日間のお休みを積極的に取ってもらう制度です。
以前は奥さんが出産しても通常通り働いている男性社員が多かったように思います。でもこうした制度ができたことで意識が変わり、育児休業よりも気軽に利用してもらえています。育児にしっかり取り組んでもらえたら会社としても社会に貢献できるので、今後も利用を呼びかけていきたいですね。
働き方改革も当たり前になったように、仕事もプライベートも充実できるような制度を設けていかないと、企業は生き残れないのではないでしょうか。今後も柔軟な働き方、休み方ができるようにしていきたいです。
全社イベントや高齢社員のための制度も検討中
ーー今後の課題や目標がありましたらお聞かせください。
熊﨑:健康診断結果を見ると、40歳未満の若年層で脂質異常に当てはまる従業員が36%いるなど、従業員の生活習慣が気になる状況となっています。
ただ、健康経営を始めたときに「健康は個人のものだから、会社に指導されたくない」という声もありました。アルコールや煙草は嗜好品ですし、会社としてどこまでサポートしていけるかはなかなか難しい問題ですね。
羽田:一人ひとりの健康意識が高まってより生き生きと働けるようになれば、組織も活性化していくと感じています。会社全体で足並みをそろえるのは簡単ではありませんが、少しでも健康の大切さを伝えていきたいです。
当社は全国各地に支店営業所があるので、会社全体での企画開催が困難なため、アプリを利用したウォーキングイベントなどを開催することで、チームで競い合いながら楽しく健康な体づくりに取り組めるようにしたいとも考えています。
ーー働き方に関する制度についてはいかがでしょうか。
熊﨑:今後ますます増えると考えられる高齢の従業員も働きやすい制度づくりを進めていく予定です。ただ働くのではなく、健康を大切にしながら安心して長く勤められる制度を整えていきたいですね。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:マスプロ電工株式会社
インタビュアー:青柳和香子