
「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定された株式会社宇部情報システムは、従業員の意識を高めるべく健康関連のセミナーを実施しています。健康診断後の二次検診やインフルエンザ予防接種の補助も行ない、従業員の健康を第一に考えた取り組みを進めてきました。
今回は同社の人事部マネージャー 飛永勝彦さん、人事部 労務グループ 田福裕子さんにお話をお伺いしました。
製造業向けパッケージソフトやシステム開発を請け負う

ーーまず、御社の事業内容や沿革について教えてください。
飛永さん(以下、飛永):弊社はUBE株式会社(旧・宇部興産株式会社)の情報システム部門から独立し、1983年、山口県宇部市に設立されました。設立当初から現在に至るまで、UBE株式会社の情報システムの開発・保守を一手に扱っております。
また、UBEグループ以外の一般企業に対しても、弊社の技術やノウハウを提供し、工場の生産管理や品質管理のパッケージソフト、画像処理やデータ解析、その大元となるITインフラなども含めたシステム開発・運用を請け負っております。
2001年にDaigasグループのオージス総研の資本参加により、さらに一般企業向けの事業を拡大している状況です。
事業拡大にともない、拠点や従業員も年々増え、多様な働き方が求められています。そのような変化に対応できるよう「社員が心理的・身体的に健康であることが第一」と考え、健康活動への参加を業務として位置づけ、全員参加で取り組んでまいりました。
健康経営優良法人の申請によって取り組みを客観視
ーー健康経営を始められたきっかけや、課題と感じていたのはどのような部分でしょうか?
田福さん(以下、田福):社員にとっても会社にとっても健康は大切な財産ですので、労務メンバーを中心に取り組みをしています。
従業員を対象としたメンタルヘルスセミナーやインフルエンザ予防接種の補助、禁煙外来も含めた健康診断後の二次検診の補助、ウォーキングイベントの実施などを通して健康面のサポートに取り組んできました。
新型コロナウイルスが流行してから在宅勤務が増え、社員の働き方も変化しております。それにともなう体の負担もありますし、コミュニケーションが取りにくい状況になりましたので、心理面のサポートにも取り組んでおります。
そこで、弊社の従業員への健康対策がどれくらいできているのかを外部機関に判断していただこうと考えました。2021年に健康経営度調査に回答して申請をしたところ「健康経営優良法人2022」の認定をいただけました。
申請に際して調査項目から弊社の不足部分も見えてきましたので、今後はそれらを改善する施策も盛り込んでいきたいと思っています。
多様な健康セミナーやウォーキングイベントを実施

ーー健康に関するセミナーについて、詳しく教えてください。
田福:定期的に開催していますが、2020年は「コロナに負けるな免疫力アップセミナー」を実施しました。
今年度で一番反響があったのは、サントリーの方に来ていただいた「ドリンクスマートセミナー」ですね。アルコールはお水と一緒に摂取しましょう、これだけの量を飲んだら体内に何時間アルコールが残りますよといった説明があり好評でした。アルコール感受性遺伝子検査や無料のパッチテストが受けられるセミナーで、やってみたい人という人も多かったです。
また女性向けとして「働く女性のための明日の健康美を叶えるための食事セミナー」も新たに取り入れました。こちらも好評で、女性向けセミナーは今後も開催してほしいという要望が多いです。
それから、在宅勤務が増えたので「肩と腰の筋肉を緩めるセルフケア」も実施しましたし、「朝食改善でパフォーマンスアップ」や「腸内環境の負担を減らす食事スタイル」といった食事関係のセミナーも今後開催予定です。
親会社から紹介されたセミナーもあり、今年度は種類を増やして、社員が興味のあるものを何講座でも受けられるようにしました。すべてオンライン開催で、100名くらい集まることもあります。女性限定のセミナーでも70名程度は参加していました。
飛永:田福は健康オタクなんです。弊社でこれだけいろいろとセミナーを開催できているのは、田福が健康分野に常にアンテナを張っているからだと思います。
田福:セミナー情報を見るとまず私自身が参加したくなります(笑)。社員のみんなにも健康について意識を持ってほしいと思っていますが、現状は関心のある人・ない人に分かれていますね。
ーー以前から行なわれていたウォーキングイベントは、今年も開催されるのですか?
田福:今年も10月に1カ月間予定しています。このイベントは反響が良く、開催を楽しみにしている人も多いです。チーム制で歩数を競い、上位チームや個人結果の上位者にQUOカードが贈られるほか、飛び賞もあります。参加は任意ですが、参加率は80%~90%とかなり高いです。
ーー健康への関心が低い方もいるとおっしゃっていましたが、セミナーやウォーキングイベントへの参加率は高いのですね。
田福:ウォーキングイベントは各チームの歩数や順位が見えるので、負けず嫌いでがんばる人も多いようです。会社で歩数計測アプリを導入しているので、ウォーキングイベントの時期になると、少しでも歩数カウントが伸びるようにスマホをポシェットに入れて歩く人が増えます。
飛永:今までは部署内でチームを作っていたのですが、今年は部署を超えてチームを編成する予定です。ウォーキングイベントをきっかけに、あまり話したことのない人と交流する機会になればと思っています。
健康診断に腫瘍マーカーを取り入れ、インフルエンザ予防接種も
ーー従業員の健康診断にも力を入れて検査項目を充実させているそうですね。具体的にお聞かせいただけますか?
田福:健康診断は、対象者全員の受診が必須です。会社が費用を負担するオプション検査項目も腹部エコー、眼底検査、喀痰細胞診検査、子宮がん検診、乳がん検診、ペプシノーゲンと充実しています。
昨年度からは腫瘍マーカーも追加し、40歳未満は必ずCEA、AFP、CA19-9の3種を受けてもらっています。40歳以上だと男性と女性特有のPSA、C125が加えられます。
有所見者もやや多いので、今年からは要精密検査になった人を対象に、二次検診の会社補助も始めました。
また、宇部地区は健康診断時にインフルエンザ予防接種も受けてもらうようにしています。予防接種のために病院に行かずとも健康診断で同時に受けられるので、接種率はかなり高いですね。
禁煙や働きすぎに対するアプローチが課題
ーー取り組みを進めるなかで課題に感じることはありますか?
田福:コロナの影響で、コミュニケーションの促進に工夫が必要になっています。今年度は産休・育休中の社員の集まりを考えていたのですが、感染拡大状況を見て検討中です。
オンラインセミナーでは通信をスムーズにするためにカメラを切っている人が多いので、参加者がセミナー内容をどう受けとめてくれたのかがわかりにくくなりました。ただ、リアクション機能を使って反応してくれる人はいます。
思うように進まない課題は禁煙ですね。「そこまでする必要はないんじゃないか」と反対意見も一部上がりますし、エントリー制の禁煙活動で禁煙に成功しても、そのあと喫煙習慣が戻ってしまう人もいました。
飛永:制度としては禁煙外来の補助もしていますが、勤務時間中の喫煙を控えるよう呼びかけるのはなかなか難しいですね。
残業・長時間労働も課題の1つです。働き過ぎに気付かず、いつの間にか健康を害している可能性があるので、それをケアする方法を考える必要があります。
社員の健康への意識をさらに向上させたい
ーー健康経営を始めて、何か良い変化はありましたか?
田福:健康経営優良法人の申請をきっかけに、ホームページや社内のイントラネットでも社長の言葉や健康宣言について掲載したところ、社員の意識が良い方向に変わったと思います。
以前から行なっていたセミナーはもともと任意ではなく参加必須でした。任意にしたことで参加者がかなり減るのではないかと思っていましたが、実際は参加率が高く、関心をもってもらえていると思います。
セミナー後のアンケートでも、意見が寄せられるようになりました。「すでに知っている内容が多かった」という感想が出たこともあって、今年度のセミナー主催者にも共有して、よりテーマを深堀りしていただくようにお願いしています。
ーー健康への意識が社内でも高まっているようですね。今後注力したいことはありますか?
田福:健康診断の有所見者や保健指導の対象者が多いので、減らしていくとともに、二次検診ももっと受診してもらえるようにしたいですね。また、高ストレスをいかに減らしていくかも今後の課題です。「心と体の相談窓口」を設置して、メンタル疾患に陥る前に対応できればと考えています。
飛永:誰でも気軽に自分の健康や悩みを話せる場所が必要だと思います。せっかく健康への意識が向上して「おかしいな」と自分でも気付いたなら、自力で解決するだけでなく、専門の相談窓口を利用して早期解決できるようにしたいですね。
田福:勤務間インターバル制度も今後、導入したい制度です。忙しい時期にトラブル対応が発生すると、次の勤務まで時間を空けるのは難しいというのはわかるのですが。
飛永:システムの不具合やトラブルが重なって発生したときや、システムの本番稼働が複数走っているときは、どうしても長時間労働になる傾向があります。システム開発には納期がありますし、担当者でないと対応できないこともありますから。ただ、より質のいい休息をとってもらうためにインターバル制度は実現したいですね。
田福:管理職を対象に、長時間労働の健康被害と経営リスクをテーマにしたセミナーも予定しています。健康への意識がない人に、少しでも興味を持ってもらうためには、経営層からの発信や管理職の理解も重要ですね。
みんなが健康に関心を持ち、公私ともに充実させてほしい
ーー最後に、今後の健康経営への意気込みや読者の方へのメッセージをお願いします。
田福:心身ともに健康になることによって、会社の生産性が良くなるのはもちろん、プライベートも充実して笑顔が増える生活をしてもらいたいですね。そのためにはまず、健康に無関心な人をなくして、少しでも意識してもらえるよう働きかけていきたいと思っております。
健康診断の結果を家族に見せていない人も多いようです。「結果を見せたら、家族に喫煙を止められるから」といった声がありますが、ご家族に胸を張って結果を見せられるように、私たちも努力したいと思っております。二次検診の費用補助も活用して自分の体を大切に、健康になってもらいたいですね。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社宇部情報システム
インタビュアー:青柳和香子
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