
株式会社ヤマコンは、山形県山形市に本社を置く建設企業です。東日本を中心に、コンクリート圧送事業や設備事業を展開しています。
佐藤隆彦社長は2011年の東日本大震災を経て、事業継続には経営計画だけでなく従業員の健康も不可欠であると感じたとのこと。今回は「健康経営優良法人 ブライト500」認定につながったお取り組みや今後の目標について伺いました。
震災で「事業継続には社員の健康が不可欠」と実感

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
当社は建設業のなかでも専門工事業といって、ゼネコンさんと一緒に仕事をする事業を展開しています。
主力工事は、型枠の中に生コンクリートを流し込む「コンクリート圧送工事」という業務です。コンクリートポンプ車という専用の機械を操作してコンクリートを流し込む作業を行ないます。
もう1つの柱は設備事業で、経年が進んだ建物の設備リニューアルを行なっています。ほかに太陽光発電事業や不動産賃貸事業なども展開していますが、主力事業としてはコンクリート圧送工事と設備リニューアル事業です。
現在創業から56年目で、東日本を中心に全国最大規模で事業を展開しています。
ーーありがとうございます。健康経営を始められたきっかけについても教えてください。
2011年の東日本大震災震災で、当社の大きな拠点の一つだった仙台支店が被災しました。津波によって一階部分が水没し、社員の車両が流されたり、当社の重要な生産設備であるコンクリートポンプ車が使用不能になってしまったりしたのです。
幸いなことに従業員やその家族の人命に関わるような被害はありませんでしたが、事業を再開するのには非常に時間がかかりました。
その経験から、事業を継続するということが非常に重要だと考え、事業継続計画(BCP)を策定しました。その結果、防災や事業継続の取り組みを評価する日本政策銀行の格付け融資「BCM」や、内閣官房国土強靭化貢献団体の「レジリエンス認証」も受けることができています。
このように会社の生産設備や経営システムを維持することはもちろん不可欠ですが、それ以前に社員自身の健康が一番大事なものであり、事業継続につながると感じました。それが、会社の経営課題として健康経営に取り組み始めた理由です。
ーー健康経営の推進を担う「安全環境部」についてお聞かせください。
安全環境部は健康経営の主幹部署です。建設業では安全管理が非常に重視され、当社の場合も、コンクリートポンプ車のようなタイヤが付いた大型車を社員が運転する際の事故を防ぐ必要があります。
もともとはそうした安全管理を担うのが安全環境部なのですが、社員の健康を高めるために衛生管理も担当してもらうことになり、2017年から健康経営推進の体制ができています。
現場で働く社員も健康診断を100%受診

ーー具体的なお取り組みはどのようなものがあるのでしょうか?
健康経営を進めるにあたり具体的な指標、客観的な物差しがいるだろうということで、まずは健康診断の受診率100%達成を最初の目標に掲げてスタートしました。
当社は製造業や事務系の職種のように、全従業員が一つの建物で始業時から定時まで働くわけではありません。
朝は会社に出勤するものの、すぐにコンクリート作業車や営業車に乗って現場に出るため、日常的な勤務場所はそれぞれのゼネコンさんやお客様のマンションなどです。
そのため健康診断を全員で一斉に受診するのはなかなか難しいことでしたが、やはり全員で健康意識を持ってもらうために声かけを始め、現在まで100%の受診率を達成しています。次の目標は、現在約90%の二次検査受診率を100%にすることです。
ーー二次検査についてはどのように受診勧奨されているのでしょうか。
安全環境部から、個人宛に再検査を促す文書を送付しています。また、会社の施策としては就業時間中に受診できるようにしました。休みの日は病院が開いていない場合もありますから。そのように融通を利かせたことで受診率は上がっています。
熱中症対策にいち早く空調服®を導入

ーー熱中症の対策にも力を入れていらっしゃるそうですね。
熱中症は、世間一般的に以前は私傷病扱いされていましたが、十数年前から学校の部活動などで倒れる学生さんが増えて、社会問題になりましたよね。
仕事の場でも熱中症が労災の一つになり、作業事故だけでなく熱中症をなくすことも安全環境部の重要な課題となりました。
当初は社員に経口補水液や冷却効果のあるグッズを持たせたりしていましたが、なかなか劇的には効果が上がりませんでした。
そこで数年前から「空調服®」というファン付きの作業服を導入したところ、熱中症になる社員が多かった関東エリアで効果があったため、全社員に配布して着用してもらうようになりました。
以前は毎年10人以上の社員が熱中症で救急搬送されていたのですが、今はなくなり、しっかりと効果が出ていると思います。
最近は他の企業でも導入事業が増え、現場作業員は着用することがほとんど当たり前になりましたね。当社での導入を見て導入を決めた他社さんも多いと思います。
アプリ活用で運動習慣の定着
ーー歩数記録ができるアプリの活用についても教えてください。
山形市で行なっている健康づくり事業「スクスク」に事業所登録をして参加しています。 個人の携帯にアプリを登録することで日々の歩数が携帯に表示されるため、 職場内のコミュニケーションと健康増進に役立っていますし、業所登録をしている他の企業とも歩数比較ができます。
ポイントを貯めると景品が贈られるのでモチベーションのアップにもなり、安全環境部の部長もこの歩数アプリを活用し8キロほどやせたそうです。
健康経営優良法人に認定されたことによる変化
ーー御社は「健康経営優良法人」に2年連続で認定され、中小企業法人部門の上位500社である「ブライト500」にも選出されています。社内で何か変化はありましたか?
認定を受けたことを社内報で広く伝えています。社員も自分たちの健康づくりの成果が見える形で評価されたので、達成感を抱いたようです。さらに2年連続の認定でしたので、より健康意識が高まったように思います。
会社案内の資料や冊子にも健康経営優良法人とブライト500認定について紹介しています。「人を大切にする企業」だということを社長が言うだけでは意味がありませんから、健康経営が対外的に評価されることで、よりその信憑性が高まるのではないかと思います。
健康で長く勤められる企業を目指して

ーー今後のご予定や目標についてお聞かせください。
健康診断の再検査を促すことで、疾病の早期発見をする必要があると感じています。また、社員の高齢化が進んでいますので、長く元気で働いていただけるようにさらなる健康増進の意識づけをしていくことも重要ですね。
喫煙率がまだ高いという課題もありますが、数年前から役職者たちがまず禁煙を成功させ、全支店で社屋内禁煙にするなど取り組みを進めております。
ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
当社に入っていただいた方とご縁をつないでいけるように、会社の成長と社員の成長が一致するような取り組みをしていきたいと考えています。その前提には社員の健康が不可欠ですから、今後も継続していきたいですね。
建設業の専門工事業、さらにコンクリート圧送業ではまだ健康経営に取り組んでいる会社が少ないようです。
暑さが厳しい時期も屋外で仕事をするなど、働き方がなかなか難しい業界ですが、当社は長く勤められるような環境を目指して健康経営に取り組んでいます。同業の会社さんや周辺の業界の方にもご参考になれば幸いです。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社ヤマコン
インタビュアー:青柳和香子
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