
2018年から5年連続で健康経営優良法人の認定を受ける大高建設株式会社。2021年に新設された「健康経営優良法人の中でも優れた企業」、「地域において、健康経営の発信を行なっている企業」の上位500法人が認定されるブライト500も取得しています。
また、令和2年にはとやま健康経営企業大賞を受賞するなど健康経営への取り組みを続けてきた同社。今回は、代表取締役社長の大橋聡司さんへ健康経営をはじめたきっかけや施策についてお話を伺いました。
健康意識の向上のため、従業員に個別のアプローチ

ーーよろしくお願いします。おもな事業内容や沿革について教えてください。
大橋さん(以下、大橋):弊社は富山県黒部市宇奈月温泉に本社がある総合建設業を営む企業です。昭和21年の創業以来、黒部川の電源開発や治水、砂防事業の施工に携わっております。
極めて厳しいといわれる黒部の自然環境のなかで長年培ってきた技術を有していることから「黒部川の防人」といわれております。
黒部奥山の現場までは車道がなく、資材輸送はトロッコ電車やヘリコプターで行ないます。大きな機材などは分解し、現地でまた組み立てなおして工事で使用するという独特な技術をもっているのも特徴です。建設のICT施工やミャンマーへの進出など、新しいことへも積極的に取り組んでおります。
ーー健康経営を始めたきっかけについて教えてください。
大橋:弊社は、もともと「企業は人なり」という考え方をもっており、人を大切にする企業でありたいと思い続けていました。特に自然の険しい黒部奥山で工事をしなければならず、その際には宿泊をともなう現場への従事が必要です。
交通手段も極めて限られており、もしも病気やけががあっては大変なことになりますので、従業員の健康に対しても会社が責任をもつべきだと考えていました。そのなかで、協会けんぽさんから健康企業宣言制度が始まったことを聞いたのが健康経営を始めるきっかけとなりました。
ーー課題や改善が必要と思っていたところはありますか?
大橋:健康診断については、従業員全員に受けていただくようにしていました。健康診断の受診率は過去からずっと100%ですが、要精密検査の対象になってもあらためて検査を受ける人が少ないということが課題でした。
要精密検査の結果が出た人の約半数は、再検査を受けていないままという実態については、改善していかなければならないと感じていたところです。
再検査へ行かないという理由については、健康への意識が高くなく「面倒くさい」という気持ちや、仕事が忙しくて行きにくいといったところがあると思うので、会社からの啓発が足りていないという課題もあると感じました。
ーー再検査をしてもらうために、どのような工夫をされましたか?
大橋:要精密検査対象者については、健診機関と連携して、従業員の健診結果を会社が直接把握できるようにしました。該当する社員へは個別に再検査を受診するまで働きかけを続けるようにし、再検査結果を会社へ提出してもらうようにしています。
健康経営に取り組む部署を新設し、産業看護師を配備

ーーほかに健康経営で取り組まれた施策について教えてください。
大橋:令和3年度の組織変更にともない、総務部内に「健康衛生課」を新設しました。
正社員の産業看護師2名と臨時雇用の看護師1名が所属し、うち2名が奥山の現場宿舎に常駐して従業員の健康管理に従事しています。
本社にいる産業看護師は、会社全体の健康管理に関する企画や運営を行なっておりまして、例えば、従業員の心身の健康状態を毎月チェックして、リスクがあるようであれば面談などを行ない先手で対応するようにしています。
また、体の健康やメンタルヘルス、環境衛生に関する情報を健康だよりとして社内グループウェアにて月に一度発信し、健康意識の向上に取り組んでいます。
ーー健康経営を通して社内に変化はありましたか?
大橋:以前は看護師1名体制で、できることも限られていました。また、健康へのアドバイスも看護師個人からのアプローチというかたちになっていたと思います。
健康経営にあたり、看護師を3人名へ増やし、組織を編成したことで会社全体での取り組みであることが社員に伝わったのではないかと思います。
健康に関するアドバイスも、看護師個人からの「お願いごと」のようにとらえられていたかもしれませんが、健康衛生課としてアドバイスを伝えることで組織からの「要請依頼」と認識してもらえるので、従業員側のとらえ方もまったく違うものになってきました。
健康に関する組織を新設したことで、従業員の意識向上やスムーズな啓発ができるようになってきたと思います。
ーー2年連続でブライト500の認定を受けていますが、認定取得や健康経営で大変だったことを教えてください。
大橋:情報発信が不得意で、ホームページやTwitterなど外部への発信は担当部署が悩みながらやってきたところだと思います。
ブライト500の認定を得るためには、自社がどのように健康経営を実施しているかを外部に発信することが必須要件となっています。講演の場にて健康経営についての話題も含めたり、ホームページなどで発信したりといった取り組みがありました。
また、食に対する取り組みは難しいと感じました。大きな企業であれば社内食堂のメニューをヘルシーなものにするといったことができますが、食堂もないので、どのようにして取り組みをすればいいのかと迷いました。
ーー健康経営を通して社内や従業員に変化はありましたか?
大橋:健康に対する意識が芽生えてきていると思います。例えば、喫煙者数を減らしていこうという取り組みに対して、以前であれば「それは個人の嗜好だから」といった「個人の問題」というふうにとらえる従業員が多かったと思います。
しかし、健康経営を始めてからは「会社全体で取り組む」という考え方に変わり、従業員一人ひとりが自分ごととして禁煙に取り組んでいかなければならないという意識をもてるようになってきたと思います。
また、とやま健康経営企業大賞などを受賞したことを従業員が知ることで「先進の企業で働いている」という誇りをもってもらえるようになったのではないかと思っています。
従業員の健康的で幸せな生活のために、労働環境の改善を

ーー今後の展望について教えてください。
大橋:働き方改革を進めて、従業員の心の幸福や業務への満足度を高めていくことを考えています。
もう一つは、安全安心、快適かつ一人ひとりに寄り添った労働環境の提供とダイバーシティの推進を図っていこうと思っています。今は、すべての工事現場を4週8休にすることと、残業時間の大幅な削減に取り組んでいます。
あとは、仕事と子育てを両立できるように、職場環境の整備を通して家事参画への促進も進めていきたいと考えています。
ーー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
大橋:ウェルビーイング向上には、まずは健康であることが大前提です。そのためにも、従業員に寄り添って、目的や目標を明確にすることが必要だと思います。
そして、できることは着実に取り組んでいくことで、大きな目標にも到達できるのではないかと思っています。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:大高建設株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子
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