「健康経営優良法人」の認定を受けた中小規模法人部門のうち、上位500社「ブライト500」に2年連続で認定された津軽警備保障株式会社。中小規模の警備会社で健康経営優良法人に認定されたのは、全国初でした。
今回は取り組みを始めたきっかけや実際の施策について、代表取締役の山口道子社長にお話を伺いました。
疾病を防ぐ重要性を感じた出来事
ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の沿革や事業内容について教えてください。
1973年創業、2023年3月に50周年を迎える警備専門会社です。警備業務全般、具体的には施設警備・機械警備・ホームセキュリティ・イベント警備・交通誘導警備・巡回警備に加えて、防犯カメラの販売・取り付け工事などを行なっています。
また、損害保険の代理店や機器販売及び保守点検なども行なっています。
弊社はマンパワーによる警備が多いですが、近年ではITの進化によりセキュリティシステムの導入も増えています。しかし、システムが増えようともそれを取り扱うのはやはり「人」ですから、従来から社員の存在を大切にしています。
社員教育は警備員としての指導や教育はもちろんですが、「体が資本」という観点から、健康教育にも力を入れています。
ーーありがとうございます。健康経営を始めたきっかけについてもお伺いできますでしょうか。
警備の仕事は人が資産なので、社員が健康でいてくれることは会社にとって非常に大切なことだと思っています。
しかし2007年、ある社員に結核があることがわかりました。正確には「非結核性抗酸菌症」だったため人に感染するものではありませんでしたが、過去の健康診断の結果を遡ると、1、2年前から異常があったにも関わらず受診していなかったことがわかりました。
また、2008年にはガンが進行している社員も見つかりました。これも健康診断の結果を遡ると、何年も前から予兆があったにも関わらず、本人任せにしていたために治療が遅れてしまいました。職場復帰には時間を要しましたが、幸いにも大事には至りませんでした。
これらの出来事をきっかけに社員の健康について深く考えさせられ、会社として取り組みが必要だと感じました。
ーー当時、社員の健康に関して何か課題に思われていたことはありますか?
一番の課題は、多くの社員が健康に無関心だったことだと思います。そして、喫煙者が多かったこと(全体の約6割)、高血圧・肥満傾向にある社員が多かったことです。
健康診断の結果を見ると高脂質異常などの生活習慣病を抱えている社員が多く、会社としても社員の意識改革を含め、なにか早く手を打たなければならないと感じました。
健康管理を社員任せにしない
ーーどのような活動から始められたのでしょうか。
まずは年6回の「衛生委員会便り」発行を始めました。毎月産業医と行なった衛生会議の内容や、時期ごとに熱中症・インフルエンザへの対策、健康診断前のワンポイントアドバイスなどを載せて定期的に健康意識をもたせるようにしました。
例えば、社員から依頼先へインフルエンザを感染させてしまうことはあってはなりませんので、インフルエンザワクチンは2008年から全額会社負担で受けてもらっています。
また、定期健康診断後は、有所見者に対して再検査完了報告を受けるまで受診勧奨をしました。過去の出来事を教訓に、社員任せにするのではなく、再検査を受けたかどうかを最後まで管理をすることが、会社で行なう健康診断の意義だと思ったからです。
その甲斐あって、再検査受診率は2013年から毎年100%です。ただ、わたしの希望は、会社で管理をしなくても社員が自発的に行動するようになることです。
ーー健康経営優良法人の制度ができる前から、徹底して健診フォローをされているのですね。
数年前に健康経営優良法人の認定制度ができたことを知ったとき、「今までやってきたことを申請すれば、認定を取れるのではないか」と考えました。
また、この認定を受けることで警備業界の不健康なイメージを少しでも変えて、若い人たちにも興味を持ってもらえるような企業にしたいと強く感じました。
少しずつ新しい取り組みを工夫して行なってきたことが、2021年・2022年のブライト500認定につながったのだと思います。
不規則なシフトでもできる食生活の改善を提案
ーー課題だった喫煙率や肥満については、どのような取り組みをされましたか?
まずは、2015年頃から役職者が社員の手本となるために禁煙に取り組みました。そして、敷地内を禁煙にして、勤務時間内の禁煙を徹底し、3カ月ごとに喫煙率を調査するようにしました。
「タバコは体に悪いから止めなさい」と言っても喫煙者には響きません。言葉だけではなく会社の本気度を行動に移し、喫煙者1人ひとり、周りからジワジワと取り囲んでいった感じです。現在は禁煙外来の費用補助も行ない、禁煙者のアフターフォローも行なっています。
また、年4回の社員教育の場を用いて、私からも健康に関する意識の改善を直接社員に訴えるようにしています。
例えば、昨年は「食のセミナー」を実施しました。管理栄養士の方に来ていただき、夜勤の場合の食事で気をつけるべき点などをお話ししてもらいました。
さらに、どのようなものを食べると良いのかイメージしてもらえるよう、栄養士の方の指導のもと「健康弁当」を作って、社員に実食してもらいました。
ジムトレーニングで運動不足解消を促進
ーーその他にはどのようなお取り組みがありますでしょうか?
今年からフィットネスジムとの法人契約をして、社員がトレーニングに行けるようにしました。こちらもまずは役職者が入会し、なかには3カ月ほどで肥満体型から標準体型まで絞ってくれた者もおりました。まだまだですが、少しずつ入会者も増えています。
肥満予防や運動不足の解消、仕事時間以外のコミュニケーションの場として、ジムトレーニングを役立ててもらえればと思っています。
ーーさまざまな活動をされていますが、健康経営による社内の変化をどう感じていらっしゃいますか?
時間はかかりましたが、2021年11月で社員の喫煙率0%を達成できました。今後は採用面接時に喫煙の有無、喫煙者の場合はやめられるかどうか意思確認をした上で採用しますので、喫煙者0%は今後も続けていけると思っています。
最近では社員からも「会社や社長がこんなに社員の健康を気遣ってくれ、ありがたく思う」という声を聞いています。少なからず社員からの共感も得られているようでうれしいですね。
ーー今後の展望や取り組んでみたいと思われていることはありますか?
今後はメンタルヘルスケアについても考え、気楽に何でも相談できる環境作りをしていこうと考えています。また、歯科検診も取り入れていけたらと思っています。
そしてもう一つ取り組みが必要だと感じているのが、社員の家族への健康サポートです。現在、社員は健康診断を100%受診できていますが、家族が専業主婦やパート従業員だと、健康診断を受けない人が多いようです。
ですから、弊社としては「家族にも健康診断を受けさせてください」という喚起を今年から発信していきます。
ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします。
「健康管理」はもちろん自分のためにすることですが、家族や友人など、自分を取り巻く大切な人たちのためにも大切なことだと思います。
日々の生活のなかで無理なく取り組めることがあれば、ぜひ少しずつでも始めてみてください。そして、人の意見に耳を傾け、取り入れてみるというのも大事なことではないかと思います。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:津軽警備保障株式会社
インタビュアー:青柳和香子