
彌生ヂーゼル工業株式会社は、自動車整備をおもな事業としており、従業員40名ほどの会社です。外国人社員も多くいることから、言葉の壁を感じながらの健康経営に取り組んできました。
今回は、同社の代表取締役である細田さん、総務部長の石渡さんに、健康経営についてお話を伺いました。
最初は当社で取り組めるのか不安だった

ーー本日はよろしくお願いします。さっそくですが御社の沿革や事業内容を教えてください。
細田さん(以下、細田):弊社は戦後間もない昭和21年に創業しました。大型トラックやバスなどの自動車整備を中心にBtoBの事業を展開し、商用車の車検をはじめ法令点検といった業務を行なってきました。現在は運送会社のトラック整備が事業の中心となっており「整備技術をとおして安全・安心な物流を支える」という自負をもって取り組んでいます。また、今後もそのような想いで事業を続けていきたいと思っています。
ーー健康経営を始めたきっかけについて教えてください。
細田:人生100年と言われているなかで、東京海上日動さんから「健康経営をやってみてはどうか」と言われました。私自身、健康経営については詳しく知らなかったので、もらった資料を石渡さんに渡して「どう思うか」と相談してみたところ「無理でしょう」と言われました。内容もよくわからず、私も無理だろうなと思っていました。
ところが、私が商工会議所で役員をしている関係で、アクサ生命さんとも話す機会があり、同じように健康経営を勧められました。アクサ生命さんは商工会議所でいろいろな事業のサポートを行なっているので、実際に担当者の方からどのように健康経営をしているのかといった事例を聞くことができました。そこから、まずは幹部を集めて健康経営を検討すれば良いことがわかり、歩み出しました。
健康経営を始めるときの想いとしては、健康優良法人の認定をとる目的でスタートしたというわけではありませんでした。あくまで「従業員のためになる」という考えを持ったのが始まりです。
ーー従業員の健康状態で改善が必要と思ったことはありますか?
細田:健康診断を受けない人もいましたが、受診を勧奨して受けた人のなかに、病気が発覚した人がいました。そのときには、健康診断の重要さを痛感しました。事業として物流の安全を担っていくのにも、まずは社員一人ひとりが健康でなければいけないと感じました。
健康診断は就業時間内に行なう

ーー健康経営の具体的な施策について教えてください。
石渡さん(以下、石渡):健康診断については100%受診していただくように努めています。健康診断へは、就業時間中に行ってもらうようにしています。再検査や要精密検査といった結果が出た場合も、就業時間中に行ってもらっています。
診断が出て治療が始まったら自分の休暇を使って病院へ行ってもらうことにはなるのですが、再検査や精密検査については、上席などからも複数人で「業務時間中に行って」「自分のためだよ」と本人へ受診を勧奨していますよ。やはり、従業員の健康が第一ですし、従業員の健康が会社の業績にも反映されると思いますので。
細田:就業規則を変更して、インフルエンザ予防接種を会社で接種できるよう、医師に来ていただくという取り組みもしています。社員だけでなく、社員の家族まで、インフルエンザの予防接種ができるよう、費用も会社で負担するようにしています。
ーー他にも施策があれば教えてください。
細田: アクサ生命さんのセミナーを全社員に受けてもらい、社員の意識改革を行ないました。会社内部で健康について社員へ話をしても、なかなか実行してもらえない状況があったからです。
そこで、外部から専門家を招いて、健康について話していただければ社員も理解しやすいのではないかと考えました。セミナーは講師に会社まで来ていただくので、社員全員が出席できています。コロナ禍でも、毎年テーマを変えながら健康についてセミナーを実施し、健康への理解を深めてもらいました。
外国人の従業員にも健康経営を理解してもらうために

ーー健康経営で大変だったことを教えてください。
石渡:外国人社員がいるので、健康経営を理解してもらうのに言語の壁を感じることがありました。例としては、ベトナム人の社員が健康診断で、要精密検査の結果になったときです。結局、体に問題はなかったのですが、大学病院まで一緒についていきました。日本語でのコミュニケーションが難しく、受診には丸一日かかりましたね。
そもそも、近くのクリニックの受診方法がわからないということもありました。熱が出たというときには、内科に一緒に行って、受付で保険証を出して、院外処方の場合は近くの薬局で薬をもらう……、など一連の受診方法を教えたというエピソードもあります。外国人の社員にはそこまでしないと、健康管理をしてもらうということ自体が難しいのだと感じました。
細田:彼らは国を離れて生活しているので、私が日本での親だという気持ちでいます。母国にいる親御さんに安心してもらうためにも、彼らの健康を支えていかなくてはと思っています。
ーー健康経営に関する反響は感じられましたか?
石渡:ずいぶん変わったように思います。40歳以上の社員では、生活習慣病から再検査や要精密検査の判定が出ることもあります。治療するべきものは行けるときに病院へ行って治療し、要観察であれば日頃の生活を注意してもらうようにしています。
トクホ飲料の料金を会社で負担して安く買えるようにしたり、なるべく糖分をひかえた無糖コーヒーをとるようにすすめたりなど、会社でも補助や働きかけをしているので、健康に気を使った飲み物を選ぶ人が多くなったと感じています。
ーー今後の課題や展望について教えてください。
石渡:弊社の喫煙率は25%程度と高めです。セミナーで動画やスライドを見たときは「辞める」というものの、2~3日すると吸っているというのが現状です。業界自体も喫煙者が多い気はしますし、喫煙所をコミュニケーションの場だととらえている人もいますね。
副流煙の影響もありますし、タバコを吸う人を減らしていきたいと思っています。禁煙した人へのインセンティブなども考えています。
従業員の健康は会社の発展にもつながる

ーー読者へのメッセージをお願いします。
細田:個人の方へ向けてのメッセージは、健康については自分自身で考えていかなければいけない問題だということを伝えたいです。健康であることは、自分だけでなく家族の幸せにもつながっていきます。また、経営者や人事担当者には、従業員の健康が会社の発展につながっていくことを知っていただき、健康経営をいろいろな会社で実施してもらえたらと思います。
石渡:健康経営は、会社経営の一つとしてとらえるべきだと思います。会社にとって「コスト」ではなく「投資」だと思ってもらえるといいのかもしれません。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:彌生ヂーゼル工業株式会社
インタビュアー:塩野実莉